「フォード・トリノ」の版間の差分

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| 車名=フォード・トリノ
| 車名補=
| 1枚目画像の説明=1970年式トリノ・コブラ・スポーツルーフ
| 1枚目画像名=1970 ford torino cobra sportsroof chiolero.jpg
| 2枚目画像の説明=1972年式グラン・トリノ
| 2枚目画像名=Gran Torino.jpg
| 3枚目画像の説明=[[NASCAR]]参戦車両。[[:en:Holman Moody]]チーム・[[:en:David Pearson (NASCAR driver)|デビッド・ピーターソン]]車
| 3枚目画像名=DavidPearson17HolmanMoody.jpg
| 販売期間=[[フォード・モーター]]:[[1968年]]-[[1976年]]
| 製造国= [[アメリカ合衆国]]<br />[[ジョージア州]][[アトランタ]]<br />[[オハイオ州]][[:en:Lorain,ロレイン Ohio(オハイオ州)|ロレン]]<br />[[イリノイ州]][[シカゴ]]<br />[[オンタリオ州]][[オークビル (オンタリオ州)|オークビル]]
| 自由項目1(項目名)=クラス
| 自由項目1(内容)=[[インターミディエイト]] ([[:en:Mid-size car]])
| 自由項目2(項目名)=駆動方式
| 自由項目2(内容)=[[フロントエンジン・リアドライブ]] ([[:en:Front-engine, rear-wheel drive layout]])
| 先代=[[フォード・フェアレーン]] ([[:en:Ford Fairlane (Americas)]]
| 後継=[[フォード・LTD II]] ([[:en:Ford LTD II]])
}}
'''フォード・トリノ''' (Ford Torino) [[フォード・モーター]]が[[1968年]]から[[1976年]]にけて北米自動車市場向けに製造していた[[アメリカ車]]で、車格としては[[インターミディエイト]]中型の乗用車 ([[:en:Mid-size car]])カーに相当す である。トリノの''[[イタリア]]の[[デトロイト]]''とも言われる[[トリノ]]市にちなんだものであ由来する。
 
== 概要 ==
1世代のトリノは[[マーキュリー・モンテゴ]] ([[:en:Mercury Montego]]) と共用のシャシを用いて、[[1962年]]から[[1970年]]まで製造された中型車の[[フォード・フェアレーン]] ([[:en:Ford Fairlane (Americas)]]) の上級バージョン車種として、[[1968年]]に登場した。{{要出典範囲|date=2011年8月|トリノ登場後しばらくの間はフェアレーンはトリノの内外装を簡略化したベースモデルとして残り続け、この間トリノは名目上はフェアレーンの付随グレード的な扱いであったが、実態はこの間にトリノはフォード中型車の中心的な存在となっていき、逆にフェアレーンがトリノの付随グレードとして見られるようになっていった。1970年を最後にフェアレーンは廃盤となり、トリノは名実共にフォードを代表する中型車として台頭した。}}なお、トリノという名称自体は元々は[[フォード・マスタング]]の開発時点での名称候補の一つ<ref name="Ford Mustang - 40 Years of History ">{{cite web|url=http://www.mocsem.org/other/mustang_history_intro.php|title=The Accelerator, Ford Mustang - 40 Years of History|accessdate=2007-03-20}}</ref>でり、その車台は[[マーキュリー・モンテゴ]]([[:en:Mercury Montego]])と共用されていた。
 
本来トリノは[[大衆車]]としての位置付けの車であり、最も多く売れたモデルは4ドア[[セダン]]と4ドア[[ハードトップ]]であった。しかし、フォ一部のグレードトリノの一部に大排気量の強力なエンジンを搭載したハイパフォーマンスバージョン高性能版製造しあり、428または429立方インチ (7.0L) の[[V型8気筒]]に[[エアインテーク#自動車|ラムエアインテーク]]を組み合わせた'''コブラジェット'''エンジンが採用された。これらのトリノは[[マッスルカー]]と呼ばれる車種の1つとしても分類認知されていた。フォードは[[NASCAR]]参戦車両にトリノを選択した為{{要出典範囲|date=2011年8月|トリノはレースの世界でも成功を収めた伝統を持つと認識されている}}
 
第3世代グラン・トリノは様々な映像作品で日本でも著名な存在である。古くは[[刑事スタスキー&ハッチ]]における''赤いグラン・トリノ''として日本のお茶の間にも知られた存在であったが、第3世代の中でも極めて特徴的なフロントマスクを有している1972年式は、[[2008年]]公開された[[クリント・イーストウッド]]監督・主演の映画'''[[グラン・トリノ]]'''、日本のみならず世界的に知名度が高まった。
また、トリノは[[1970年代]]に[[日本車]]で勃興した[[スペシャリティカー]]に多大な影響を与えた車種でもある。例えば、[[トヨタ・セリカ]]の初代モデル・通称ダルマセリカは第2世代のコブラ・スポーツルーフからデザイン上の深い影響を受けている事が明らかであり、、[[マツダ・コスモ]]も2代目モデル・通称バリカンコスモは第3世代グラン・トリノからの影響を明快に見て取る事が出来る。但し、逆にトリノが日本車から影響を受けた面もあり、1970年のNASCAR向け特別車両であるトリノ・キングコブラは1969年発売の[[日産・フェアレディZ]]の初代モデル・S30Zのフロントフェイスの影響を強く受けている。
 
同時にトリノは同時期の日本の大衆車の、商品としての在り様にも大きな影響を与えている。非常な成功を収めた1970年式トリノを評する言葉でもある''規定された車の型を持たず、スポーツからラグジュアリーまで同じ名称でボディ形状やドア枚数を変えながら、全てをこなす車種''という商品コンセプトは、1970年代から[[1980年代]]に掛けての日本車でも広く用いられていた。例えば[[日産・サニー]]の6代目モデル・B12型の商品展開が特に顕著な例である。
 
第3世代グラン・トリノは様々な映像作品で日本でも著名な存在である。古くは[[刑事スタスキー&ハッチ]]における''赤いグラン・トリノ''として日本のお茶の間にも知られた存在であったが、第3世代の中でも極めて特徴的なフロントマスクを有している1972年式は、[[2008年]]公開の[[クリント・イーストウッド]]監督・主演の映画'''[[グラン・トリノ]]'''で、日本のみならず世界的に知名度が高まった。
 
== 第1世代(1968–1969年): 高級版フェアレーン ==
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| 車名= 1968年式 フォード・フェアレーン/トリノ
| 車名補=
| 1枚目画像の説明=1968年式トリノGTファトバッワイア
| 1枚目画像名=1968 Ford Torino SquireGT Fastback.jpg
| 2枚目画像の説明=1968年式フェアレーン500トリノコンパーチブルスクワイア
| 2枚目画像名=1968 Ford-Fairlane-500-1970 Torino Squire.jpg
| 3枚目画像の説明=1968年式トリノフェアレーン500コンバドトップチブル
| 3枚目画像名=1968TorinoFord-Fairlane-500-1968.JPGjpg
| 製造国=
| 販売期間=
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア[[ハードトップ]]<br />2ドア[[ファストバック]]<br />2ドア[[コンーチブル]]<br />4ドア[[セダン]]<br />4ドア[[ステーションワゴン]]
| エンジン= {{Convert|200|cuin|L|abbr=on}} [[直列6気筒|L6]]<br />[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー289V8|チャレンジャー289V8]]<br />[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|チャレンジャー302V8]]<br />[[フォード・サンダーバードV8 (ミディアムブロック)#サンダーバード390V8|サンダーバード390V8]]<br />[[フォード・サンダーバードV8 (ミディアムブロック)#サンダーバード427ハイパフォーマンスV8|サンダーバード427ハイパフォーマンスV8]]<br />[[フォード・サンダーバードV8 (ミディアムブロック)#サンダーバード428V8|サンダーバード428V8]]
| エンジン= {{Auto CID|200}} [[直列6気筒|L6]]<br>{{Auto CID|289}} [[:en:Ford Windsor engine|Windsor]] [[V8]]<br>{{Auto CID|302}} [[:en:Ford Windsor engine|Windsor V8]]<br>{{Auto CID|390}} [[:en:Ford FE engine|FE V8]]<br>{{Auto CID|427}} [[:en:Ford FE engine|FE V8]]<br>{{Auto CID|428}} [[:en:Ford FE engine|FE V8]]
| モーター=
| 最高出力=
| 最大トルク=
| トランスミッション= 3速MT<br />4速MT<br />3速AT
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|201.0|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|203.9|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|74.6|0in|mm|abbr=on}}
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|116.0|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|113.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 車両重量={{convert|2932|-|3514|lb|0}}*<br />''*[[車両総重量]]''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=[[:en:Ford Ranchero|フォード・ランチェロ]]<br />[[:en:Mercury Comet|マーキュリー・コメット]]<br />[[:en:Mercury Cyclone|マーキュリー・サイクロン]]<br />マーキュリー・モンテゴ
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|58.8|0in|mm|abbr=on}}<br />後:{{Auto inConvert|58.5|0in|mm|abbr=on}}
| 別名=
| 先代=
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| プラットフォーム=
}}
[[file:1968_Ford_Torino_GT_Hardtop.jpg|thumb|200px|1968年式トリノGT・ハードトップ]]
[[file:FordCar.jpg|thumb|200px|1968年式フェアレーン・ハードトップ]]
[[1968年]]の[[モデルイヤー]]<ref group="注釈">これ以降の'''年式'''表記は全てモデルイヤーの訳語として認識されたい。</ref>に、フォードは従来のフェアレーンのラインナップに上級車種として新しいデザインとスタイリングの中型車を追加した。このモデルは'''トリノ'''と名付けられ、従来のフェアレーンは最下級モデルへと改められた。この時点ではトリノはフェアレーンのサブシリーズとしての位置付けと認識されていた。1968年式のフェアレーンは既に第6世代へと移行していたが、フェアレーンとトリノは、[[1967年]]式の第5世代フェアレーンと同じ[[ホイールベース]]を採用、2/ドアモデルと4ドアモデルは{{convert|116|in|mm|0}}、ステーションワゴンは {{convert|113|in|mm|0}} であった。一方、スタイリングは先代モデルとは大きく変わり、フォードの新しい中型車ラインナップはより大きく重いものとなった。また、新たに[[ファストバック]]モデルが加わった。
 
1968年式のフェアレーン/トリノは1967年式からスタイリングは大幅に改められていた。フォードの新しい中型車ラインナップはより大きなボディサイズと重量を持ち、新たに[[ファストバック]]モデルが加わった。[[フェイシア_(自動車)|フロントマスク]]全面を覆尽くすような格子状のっぱいに埋め込まれた[[フロントグリル]]と、その両端に水平に埋め込まれた4灯[[前照灯|ヘッドライト]]が設けられた。グレードによってはフロントグリルを上下に分割するような水平棒状横棒装飾がグリル内部に配置さあしらわれた。パーキングライトはフロント[[フェンダー (自動車)|フェンダー]]の前端角に配置され、1968年からの法規制に基づいたサイドマーカーライトとしてもするようになっていた。側面のボディパネル側面平滑で、中央付近に水平に1本、折り目ようなプレスラインが車体前方から後方まで一直線に施されていた。[[テールライト]]の形状は長方形で、リア[[バンパー]]上のリアボディパネル上に垂直に配置されていた。後退灯はテールライトの中央に配置されており、リアサイドマーカーライトはリアクォーターパネル(リアフェンダー)の後端に配置されていた。フォードは新設定のファストバックモデルの事を'''スポーツルーフ'''と称し、僅かに凹んだテールライトパネルが独特のボディスタイルを形成していた。そしてルーフラインはなだらかに傾斜し[[トランクリッド]]を持つ長の端まで続ルーていた。{{要出典範囲|date=2011年9月|ァストバックのスタフェアレーンとトリノの空力特性の改善に大いに役立ち、レーストラックでの走行にも大きなアドバンテージを与える事になった。}}
 
フォードは1968年の中型車ラインナップを14種類用意した。ベースモデルは'''フェアレーン'''で2ドア[[ハードトップ]]と4ドア[[セダン]]/[[ステーションワゴン]]の3種類で構成された。やや上級のものが'''フェアレーン500'''と名付けられ、2ドアハードトップ/スポーツルーフ/[[コンーチブル]]、4ドアセダン/ステーションワゴンの5種類で構成された。そして最上級モデルが'''トリノ'''と名付けられ、2ドアハードトップと4ドアセダン、そして''スクワイア''のサブネームを与えられボディ側面に木目パネル装飾 ([[:en:Woodie]]) を施されたステーションワゴンの3種類で構成された。フェアレーン500の2ドアハードトップ/スポーツルーフ/コンーチブルをベースに最もスポーティな味付けがされたモデルは'''トリノGT'''の名称が与えられた。
 
1968年式フェアレーン/トリノは1967年式フェアレーンと同様に[[モノコック]]ボディが採用された。[[サスペンション]]もフロントはコイルスプリングの取り付け部がアッパーアームに設けられ、ロアアームには[[スタビライザー]]が設けられた[[ダブルウィッシュボーン式サスペンション]]とされた。リアは長い半楕円形[[リーフスプリング]]を用いた[[リーフ式サスペンション]]とされた。V8エンジンを搭載する車両には、より強固なスプリングと[[ショックアブソーバー]]に交換するヘビーデューティサスペンションがオプション設定された。[[ステアリング]]は[[ボール・ナット]]式で、[[パワーステアリング]]もオプション設定された。[[ブレーキ]]は基本は4輪[[ドラムブレーキ]]であったが、オプションでフロント[[ディスクブレーキ]]と[[ブレーキブースター]] ([[:en:Vacuum servo]]) 機能も選択できた。
 
1968年式フェアレーン/トリノは[[インテリア]]も一新された。新しい[[ダッシュボード (自動車)|ダッシュボード]]は[[ステアリングホイール]]を中心に4つの同じ大きさのメーターポッドが並ぶデザインとなった。しかし、必ずしも全てのメーターポッドが使用されているものばかりではなく、[[スピードメーター]]と[[燃料計]]、各種警告灯のみしか備えられていない場合も多かった。燃料計と温度警告灯は左から1番目のメーターポッドに収められ、{{convert|120|mi/h|km/h|abbr=on}} スピードメーターは2番目のメーターポッドに配置された。[[オルタネーター|充電警告灯]]と油圧警告灯は3番目のメーターポッドに収められ、4番目のメーターポッドは通常は空白とされていた。オプションの[[タコメーター]]を選択すると3番目のメーターポッドに収められ、4番目にはオプションの[[時計]]が収められた。フォードは内装材にも多彩なオプションを用意した。その一つが'''comfort weave'''と呼ばれる[[ニット]]調の表面加工が施されたビニール内装である。この珍しいオプションは通常のビニール素材よりも通気性に優れ、暑い天候の際にシートが蒸れる事を予防した。
 
フォードは1968年の中型車ラインナップ向けに多彩なエンジンオプションを用意した。トリノGTを除く全てのモデルは標準で{{Auto CIDConvert|200|cuin|L|abbr=on}}・シングルバレル [[直列6気筒]]エンジンが搭載され、トリノGTには標準で{{Auto CID|302}}の2バレル[[フォード・チンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター]]・[[:en:Ford Windsor engine#302|Windsor スモチャレンジャルブロック302V8]][[V基本8気筒]]エンジンが搭載された。他に利用可能であったエンジンは{{Auto CID|289}}[[フォード2バチャル [[:en:Ford Windsor engineンジャーV8#289チャレンジャー289V8|Windsor V8チャレンジャー289V8]]基本型{{Auto CID|302}}・2バチャル V8ンジャー302V8基本型<ref group="注釈">トリノGT標準であるが、他の車種でも選択できた。</ref>、 {{Auto CID|390}}・2バレル [[:en:Ford FE engine#390|FE型ビッグブロックV8]]、{{Auto CID|390}}・または4バレル キャブレターの[[:en:Fordフォード・サンダーバードV8 FE engine(ミディアムブロック)#390サンダーバード390V8|FE型V8サンダーバード390V8]]であった。また、{{Auto CID|427}}[[フォード4サンダーレルードV8 [[:en:Ford 427 engine(ミディアムブロック)#サンダーバード427ハイパフォーマンスV8|FE型サンダーバード427ハイパフォーマンスV8]]もオプション設定されていたが、これはカタログ上のみの存在で後にオプションから削除され、1968年式フェアレーン/トリノでこのエンジンが搭載されて販売されたものは存在しない。1968年4月1日には、{{Auto CID|428}}[[フォード4サンダーレル CJードV8 (ミディアムブロック)#サンダーバード428V8|コブラジェット) [[:en:Ford FE engine#428|FE型V8428V8]]もエンジンオプションに追加されたが、モデルイヤー中期での導入であった為に製造数はとても少ない。428 CJエンジンはこの年式で最も強力なものであり、定格出力で{{convert|335|hp}}を発揮したとされる<ref name="Mueller">{{cite book | author = Mueller, Mike | title = American Horsepower: 100 Years of Great Car Engines| publisher = Motorbooks Publishing| year = 2006 | isbn = 9780760323274}}</ref>。428 CJを搭載した車両にはフォードの[[フルサイズ]]車から転用された赤文字に[[クロームメッキ]]装飾された'''428'''エンブレムがリアフェンダーのパーキングライト付近に装着された。全てのモデルには標準で3速[[マニュアルトランスミッション]]が装備され、オプションで3速[[オートマチックトランスミッション]]か、4速MTが選択できた。3速ATには排気量により2種類が存在し、直6やV8スモールブロックV8などの小排気量エンジンには[[クルーズOマチック]] ([[:en:Cruise-O-Matic]])、FE型ビッグV8ミディアムブロックV8のような大排気量エンジンには[[フォード・C-6型変速機]] ([[:en:Ford C6 transmission]]) が用いられた。
 
トリノの内装には多彩な色分けがされたカーペットや内外装トリムが装備され、Cピラーにはトリノのエンブレムが装着された。トリノGTには[[バケットシート]]と[[センターコンソール]]が標準で付属し、トリノGT専用のエンブレムが外装トリムに設けられた。また[[ホイールキャップ]] ([[:en:hubcap]]) にもGTの文字があしらわれ、ドアパネル内側には[[カーテシーライト]]も装備された。トリノGTには''GTハンドリングサスペンションパッケージ''と呼ばれるサスペンション改造メニューも用意されており、これにはより強固なスプリングとショックアブソーバーと共にフロントサスペンションへの[[スタビライザー]]の追加も含まれていた。4速MT車には後車軸の[[ホッピング]]を防ぐ為に''staggered shock''と呼ばれる特殊なショックアブソーバーの配置<ref group="注釈">左右のショックアブソーバーをアクスルホーシングの前後に互い違いに配置する方式。[http://www.fordmuscleforums.com/mustang-pages-1965-1973/489854-staggered-rear-shocks-any-mustang.html]</ref>が行われた。また、GTには専用のボディストライプオプションが用意されており、C形状のストライプがフロントフェンダーの端に取り付けられていた。これはボディサイドを一直線に横切るようなストライプ状のモールディングが取り付けられるもので、前後のタイヤハウス付近ではC形状に整形されてフェンダーの端に沿ってモールディングが配置された為、一種の'''オーバーフェンダー'''のような役割も果たし、結果として全幅がやや増大した。
 
1968年モデルイヤー車種には単純な速さだけであればより沢山多く存在したが、トリノGTは適度なパワーと優れたハンドリングの組み合わせが絶妙で、これにより各自動車雑誌のロードテストで高い評価を得た。''Car Life''誌では1968年式トリノGT・スポーツルーフに390立方インチ4バレルキャブレター、C-6型3速AT、3.25:1の最終減速比の[[差動装置|デフ]]を装備した車両を選び使用して、0-{{convert|60|mi/h|km/h|abbr=on}} 加速は7.7秒、1/4マイル([[:en:Dragstrip]]、所謂[[ゼロヨン]]トラック)は15.8秒で駆け抜け、最終地点では{{convert|90|mi/h|km/h|abbr=on}}であっ というテスト結果を公表した。''[[モータートレンド]]'' ([[:en:Motor Trend]]) 誌は1968年式トリノGTを評して''「より高い速度でタイトなコーナーを通過するにはドライバーにも高い技術が要求されるが、トリノGTの性能は各人の技術の差を補助するに十分なものである。」''と賞賛した。''[[カー・アンド・ドライバー]]''誌は1968年式トリノGTに428 CJ・[[ラムエアインテーク]]エンジン、C-6型3速AT、最終減速比3.91:1を選択し、1/4マイル14.2秒、最終地点{{convert|98.9|mi/h|km/h|abbr=on}} を計時した。同誌はこのトリノGTを評して''「1速から2速までの間はワイドオーバル<ref group="注釈">[[ファイアストン]]社のハイグリップタイヤの銘柄。</ref>タイヤを以てしてもルーズ<ref group="注釈">後輪の'''ホイールスピン'''等による挙動の乱れが出やすいこと。</ref>が出てしまう程だ。この性能を306[[米ドル]]で入手できるコブラジェットエンジンが、フォードの愛好家に喜ばれるのも頷ける。」''と述べている。
 
前述の通り、この年度のステーションワゴンにはフェアレーン、フェアレーン500、そしてトリノ・スクワイアの3種類が存在した。そしてその全てのワゴンに''フォード・マジックドアゲート''と呼ばれる3段開閉式リアゲートが標準装備され、オプションで[[トランク_(自動車)|トランクルーム]]内に折り畳み式サードシートも装着でき、乗車人数を標準の6人から最大8人に増加させる事が出来た。トリノ・スクワイアには標準でボディ側面に木目調装飾パネル ([[:en:Woodie#Simulated woodgrain]]) が施され、トリノセダンよりも洗練された内装トリムも用いられた。ステーションワゴン向けの珍しいオプションとして、クロームメッキの[[ルーフレール]]と後席用[[パワーウインドウ]]が存在した。
 
[[file:Ford Torino Indy 500 pace car.jpg|thumb|200px|1968年式トリノ・コンーチブル([[インディ500]][[ペースカー]])]]
1968年は非常に成功したモデルイヤーとなり、トリノだけでも172,083台を売り上げた。フェアレーンを含めた場合実に371,781台もの売り上げとなったのである<ref name="SC1">{{cite book|editor-last=Gunnell|editor-first=John|title=The Standard Catalog of American Cars 1946–1975|publisher=Krause Publications|year=1987|isbn =9780873410960}}</ref>。トリノは自動車各誌にも高い評価を受け、トリノGTコンーチブルは1968年の[[インディアナポリス500マイルレース]] の[[:en:List of Indianapolis 500 pace cars|公式ペースカー]]にも選ばれる栄誉を得た。
{{clear}}
 
=== 1969年式 ===
{{Infobox_自動車のスペック表
| 車種= 普通自動車
| 車名= 1969年式 フォード・フェアレーン/トリノ/コブラ
| 車名補=
| 1枚目画像の説明=1969年式トリノGT・コンーチブル
| 1枚目画像名=1969TorinoGTConv.jpg
| 2枚目画像の説明=1969年式フェアレーン500GT・ハードトップ
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア ハードトップ<br />2ドア ファストバック<br />2ドア コンーチブル<br />4ドア セダン<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Convert|250|cuin|L|abbr=on}} L6<br />[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|302V8]]<br />[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351V8]]<br />[[フォード・サンダーバードV8 (ミディアムブロック)#サンダーバード390V8|390V8]]<br />[[フォード・サンダーバードV8 (ミディアムブロック)#サンダーバード428V8|428V8]]
| エンジン= {{Auto CID|250}} L6<br>{{Auto CID|302}} Windsor V8<br>{{Auto CID|351}} Windsor V8<br>{{Auto CID|390}} FE V8<br>{{Auto CID|428}} FE V8
| モーター=
| 最高出力=
| 最大トルク=
| トランスミッション= 3速MT<br />4速MT<br />3速AT
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|201.0|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|203.9|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)<br />{{Auto inConvert|206|0in|mm|abbr=on}} (タラデガ)
| 全幅={{Auto inConvert|74.6|0in|mm|abbr=on}}
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|116.0|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|113.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 車両重量={{convert|3010|-|3556|lb|0}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・コメット<br />マーキュリー・サイクロン<br />マーキュリー・モンテゴ
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|58.8|0in|mm|abbr=on}}<br />後:{{Auto inConvert|58.5|0in|mm|abbr=on}}
| 別名=
| 先代=
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[[1969年]]式フェアレーン/トリノは内外装の改装は僅かであったが、性能面での改良が顕著に行われた。フォードは典型的な[[マイナーチェンジ]]としての小改装を施したが、1969年式の全般的なフォルムは1968年式とそう大きくは変わらなかった。フロントグリルが若干の修正を受け、グリルを上下に分割する横棒がより強調されたデザインとなった。テールライトも1968年式よりも角張った形状に改められた。フェアレーンの全モデルにはリアパネルを上下に分割するアルミニウム製の横棒がデザインに取り入れられた。特にスポーツルーフでは左右のテールライトの後退灯の間を連結するような形でこの横棒が設けられていた。
 
1969年ェアレン/トリノドが製造した車種モデルラインナップが前年の14から16に増加した。1968度のモデルは全てから引き継持ち越しとなりれた車種に加え、新たに'''コブラ'''という名称の2ドアスポーツルーフ(ファストバック)と2ドアハードトップの2車種が追加された。この新しいモデルの正式な名称を巡っについは今日でも幾らかの議論があり、多くの自動車文献ではコブラはトリノのラインナップのサブネームとして'''トリノ・コブラ'''として取り扱われる事が多いが、フォードが当時発行した資料では単にコブラと称するのみで、トリノの名称もフェアレーンの名称も与えてはいなかったが、多くの自動車に関する文献ではトリノのラインナップのサブネームとして'''トリノ・コブラ'''と記載されるしかしあるいは、コブラ車体番号自体はフェアレーン500と共通のものが割り当てられたためこの事実を根拠として'''フェアレーン・コブラ'''として取り扱わ呼ばれる場合もある。同年車体コブラをベもフェアレス車両としンやトリノのネームプレートは付けられはいなかったが、1969年に[[NASCAR]]に参戦出走したチームの場合、エントリーシート車両には'''トリノ・コブラ'''と記入し書かれていた。フォード車の販売の現場ではフェアレーンもトリノも付記することなく、単にコブラとして販売されており、実際の車両も車体の内外装にはフェアレーンの名称もトリノの名称も描かれなかった。
 
1969年式のエンジンラインナップは僅かではあるが改定された。トリノGTとコブラを除く全てのモデルでは新たに[[ボアアップ]]された{{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}}・シングルバレル 直列6気筒エンジンが標準搭載され、排気量が大きく拡大されたことで前年の{{Auto CIDConvert|200|cuin|L|abbr=on}}エンジンよりもより強力な馬高い最高出力と大きな最大トルクを獲得発生ていた。オプションエンジンはトリノGT標準エンジンでもある[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|302V8]]、1969年式の新エンジンである[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351V8]]の2Vと4V、そしてコブラの標準エンジンでもある428コブラジェットV8 (CJ) であった。このにはラムエアインテークをオプションで装備できたが、広告上はどちらも同じ出力で掲載されていた。ラムエアー無しの428コブラジェットV8は、80[[アンペア]]の高容量[[バッテリー]]、3.25:1のオープンデフ、高容量冷却系統、55アンペア[[オルタネータ]]、クロームメッキ仕上げ[[バルブカバー]]と[[マフラー_(原動機)|デュアルマフラー]]などの装備を含んでいた。ラムエアー付きの428CJはこれらの装備に加えて、オープンデフが3.50:1の最終減速比に変更され、機能的な[[ボンネット_(自動車)|ボンネット]][[エアインテーク|エアスクープ]]を装備していた。ラムエアー付きは'''428 Cobra Jet'''のエンブレムがエアスクープの両側面に取り付けられ、ラムエアーなしの場合には'''428'''のエンブレムがフロントフェンダーに取り付けられた。
{{Auto CID|302}}・2バレル V8、1969年式の新エンジンである{{Auto CID|351}}・2バレル [[:en:351 Windsor|Windsor V8]]、 351立方インチ・4バレル Windsor V8、{{Auto CID|390}}・4バレル V8、そしてコブラの標準エンジンでもある{{Auto CID|428}}・4バレル コブラジェットエンジンであった。
 
428 CJは事実上こ428CJ年式の最高峰のエンジンであったが、更さら究極上位のエンジンオプションとして428・4バレル '''スーパーコブラジェット''' (SCJ) エンジンが存在した。このエンジンは[[ドラッグレース]]向けの設定がされており、オプションパッケージ名もは'''ドラッグ・パック'''と銘打た呼ばていた。このエンジンオプションは[[車台番号]]Qの428・4バレルまたは車台番号Rのラムエアー付き428・4バレルエンジンと同時すること前提の物きた。428SCJには、鋳造ピストン、ビッグエンドのバランサー裏のスナエイトに追加ウェイトが付けられた鋳造番号が1UAもしくは1UA Bの刻印が刻まれた[[ダクタイル鋳鉄]]製クランクシャフト、427ル・マンコンロッドと呼ばれる特殊な[[コネクティングロッド]]、エンジン[[オイルクーラー]]、{{convert|9|in}} 外径で3.91:1の最終減速比を持つオープンデフまたは4.30:1の最終減速比を持つ[[デフロック]]([[:en:Locking differential]])機能付き''Detroit Locker''デファレンシャルが装備された。オイルクーラーとデトロイト・ロッカーは当時のフォード車としては珍しい非フォード内製部品独自のものあった。これほどパッケージを装備を持ちながらしてフォードはカタログスペック自体の広告上では通常の428 CJと同じ出力の{{convert|335|hp|abbr=off}} として表記していた。
428 CJエンジンは、[[ラムエアインテーク]]の装着の有無を選択する事が出来た。しかし広告上はどちらも同じ定格出力で掲載されていた。428 CJのラムエアー無し版は80[[アンペア]]の高容量[[バッテリー]]、3.25:1のオープンデフ、高容量冷却系統、55アンペア[[オルタネータ]]、クロームメッキ仕上げ[[バルブカバー]]と[[マフラー_(原動機)|デュアルマフラー]]等の補機類を含んでいた。ラムエアー版428 CJはオープンデフが3.50:1の最終減速比になっているのを除いては上記の全ての補機に付け加え、ラムエアインテークの機能を持つ[[ボンネット_(自動車)|ボンネット]][[エアスクープ]]を装備していた。エンブレムはラムエアー版の場合'''428 Cobra Jet'''がエアスクープの横に取り付けられ、ラムエアーなしの場合には'''428'''エンブレムがフロントフェンダーに取り付けられた。
 
コブラはエキサイティングな新車であり、フォードが満を持して送り出した[[マッスルカー]]でもあった。コブラは標準で428・4バレルコブラジェットCJエンジンを搭載し、競技向けサスペンション、4速MTとF70-14サイズ<ref group="注釈">'''レター表記'''と呼ばれるアメリカ独自の非常に古い表記法のタイヤサイズであり、インチ表記では7.75-14、メトリック表記では195/80-14に相当する、当時としてはかなり幅広の[[バイアスタイヤ]]である。</ref>のタイヤも装着された。コブラにはに塗装された一色のグリルが装備され、ボンネットはボンネットピンで固定された。そして'''Cobra'''エンブレムが車体に装着された。モデルイヤー初期のコブラは大きな"Cobra"デカールがフロントフェンダーに貼付されたが、後期には金属製のエンブレムに変更された。フォードはコブラは当時を、低価格な高性能車として成功を収めつつあった[[プリムス・ロードランナー]]に対する競合車種として、フォードが送り出した対抗馬でもあった。このような理由から、コブラは製造コストを低く抑えるため低価格帯のフェアレーン500と同じよりも低い水準のグベルの内外装トリムード使用ラインナップされたのである'''Road Test'''誌はラムエアー付き428CJと4速M、3.50:1デフを搭載した1969年型コブラを評して、''のテストで「大排気量エンジンと強力なトルクを獲得したコブラジェットエンジンは、発進の度にタイヤから白煙を上げて発進すであろう。」''と述べた。そして同誌はコブラのテスト車両にラムエアー版428 CJ、4速MT及び3.50:1デフを選択し、1/4マイル15.07秒、最終地点速度{{convert|95.74|mi/h|km/h|abbr=on}} を計時した。しかし同誌はこのテストの際にが、[[タコメーター]]が装着されていない、純正シフトレバーの動き操作難しによってより高レベルな記録を出す事が出来なかった事も報告しており、''「ハースト・シフター([[:en:Hurst Performance]]製シフトレバー)さえ装備されていれば、より良いタイムが出せたであろう。」''とも述べている。
428 CJは事実上この年式の最高峰のエンジンであったが、更に究極のエンジンオプションとして428・4バレル '''スーパーコブラジェット'''(SCJ)エンジンが存在した。このエンジンは[[ドラッグレース]]向けの設定がされており、オプションパッケージ名も''ドラッグ・パック''と銘打たれていた。このエンジンオプションは[[車台番号]]Qの428・4バレルまたは車台番号Rのラムエアー付き428・4バレルエンジンと同時発注する事が前提の物で、鋳造ピストン、ビッグエンドのバランサーウエイトに1UAもしくは1UA Bの刻印が刻まれた[[ダクタイル鋳鉄]]製クランクシャフト、427ル・マンコンロッドと呼ばれる特殊な[[コネクティングロッド]]、エンジン[[オイルクーラー]]、{{convert|9|in}}外径で3.91:1の最終減速比を持つオープンデフまたは4.30:1の最終減速比を持つ[[デフロック]]([[:en:Locking differential]])機能付き''Detroit Locker''デファレンシャルが装備された。オイルクーラーとデトロイト・ロッカーは当時のフォード車としては珍しい非フォード内製部品でもあった。これほどの装備を持ちながらも、フォードはカタログスペック自体は通常の428 CJと同じ{{convert|335|hp|abbr=off}}として表記していた。
 
一方、トリノGTは1968年式から多少の変更を受けた。標準搭載はあまりなく、エンジンは302立方インチ2バレルV8となり、302V8基本型が標準搭載のままであった。フロントグリル中段の分割バーの形状変更や、GTエンブレムがグリル左下の隅に移動されるなどの小さな変更を受けた。Cストライプは形状変更となり、1968年式のようにボディラインに合わせて曲がりくねる沿ったものではなく、ボディサイドを一直線に横切るのみの形状となった。1969年式の全てのトリノGTにはボンネットにファイバーグラス製のダミーエアスクープが装着された。これは後端に[[ウインカー]]インジゲータが内蔵されたもので、元々は非ラムエア仕様のコブラのオプション部品でもあった。このダミーエアスクープは428立方インチ・4バラムエアー仕様V8を選択することでラムエアインテークとして正規に機能させる事も出来ことができた。逆にダミーエアスクープを持たないボンネットを選択することも可能であった。トリノGTは簡単に言えばコブラ向けの全て性能上機能をオプションを内包して購入する事装備できた出来た。トリノGT自体は高級グレジョンあるトリノの発展型であった為、装のトリムの品質も高く、''ラグジュアリーなハイパフォーマンス車''を求める市場を開拓する役目を果たしかった。
コブラはエキサイティングな新車であり、フォードが満を持して送り出した[[マッスルカー]]でもあった。コブラは標準で428・4バレルコブラジェットエンジンを搭載し、競技向けサスペンション、4速MTとF70-14サイズ<ref>'''レター表記'''と呼ばれるアメリカ独自の非常に古い表記法のタイヤサイズであり、インチ表記では7.75-14、メトリック表記では195/80-14に相当する、当時としてはかなり幅広の[[バイアスタイヤ]]である。</ref>のタイヤも装着された。コブラには漆黒に塗装されたグリルが装備され、ボンネットはボンネットピンで固定された。そして'''Cobra'''エンブレムが車体に装着された。モデルイヤー初期のコブラは大きなCobraデカールがフロントフェンダーに貼付されたが、後期には金属製のエンブレムに変更された。コブラは当時低価格な高性能車として成功を収めつつあった[[プリムス・ロードランナー]]に対して、フォードが送り出した対抗馬でもあった。このような理由から、コブラは製造コストを低く抑える為に低価格帯のフェアレーン500と同じレベルの内外装トリムが使用されたのである。''Road Test''誌はコブラを評して、''「大排気量エンジンと強力なトルクを獲得したコブラジェットエンジンは、発進の度にタイヤから白煙を上げるであろう。」''と述べた。そして同誌はコブラのテスト車両にラムエアー版428 CJ、4速MT及び3.50:1デフを選択し、1/4マイル15.07秒、最終地点速度{{convert|95.74|mi/h|km/h|abbr=on}}を計時した。しかし同誌はこのテストの際に[[タコメーター]]が装着されていない事と、純正シフトレバーの動きの渋さによってより高レベルな記録を出す事が出来なかった事も報告しており、''「ハースト・シフター([[:en:Hurst Performance]]製シフトレバー)さえ装備されていれば、より良いタイムが出せたであろうに。」''とも述べている。
 
[[File:Talladega trio.jpg|thumb|right|第一世代の[[:en:Aero Warriors|エアロ・ウォーリア]]としてNASCARに投入された1969年式トリノ・タラデガ]]
一方、トリノGTは1968年式から多少の変更を受けた。標準搭載エンジンは302立方インチ2バレルV8となり、フロントグリル中段の分割バーの形状変更や、GTエンブレムがグリル左下の隅に移動されるなどの変更を受けた。Cストライプは形状変更となり、1968年式のようにボディラインに合わせて曲がりくねるのではなく、ボディサイドを一直線に横切るのみの形状となった。1969年式の全てのトリノGTにはボンネットにファイバーグラス製のダミーエアスクープが装着された。これは後端に[[ウインカー]]インジゲータが内蔵されたもので、元々は非ラムエア仕様のコブラのオプション部品でもあった。このダミーエアスクープは428立方インチ・4バレルラムエアー仕様V8を選択する事でラムエアインテークとして正規に機能させる事も出来た。逆にダミーエアスクープを持たないボンネットを選択する事も可能であった。トリノGTは簡単に言えばコブラ向けの全てのオプションを内包して購入する事が出来た。トリノGT自体は高級バージョンであるトリノの発展型であった為、内外装のトリムの品質も高く、''ラグジュアリーなハイパフォーマンス車''を求める市場を開拓する役目を果たした。
フォードは更にこの年度の中型車ラインナップに特別なハイパフォーマンス仕様車を加えた。それが[[フォード・トリノ・タラデガ]]であり、という特別な高性能車を加えた。詳細は該当項目と[[フォード・トリノ#NASCAR参戦車両]]を参照されたい。
 
1969年式の生産台数は1968年と比べて若干減少し、129,054台であった。フェアレーンとしての生産台数を含めると366,911台が製造され、1968年と比べて若干減少した。トリノGTはトリノの中でも最も多くの販売台数である81,822台を記録しだった。しかし、フォードはコブラを別対しては独立計上した車台番号を与えなかった為、コブラの正確な生産台数については、フォード現在でも不明であるとされる。発表していない<ref name="SC1"/>
フォードは更にこの年度の中型車ラインナップに特別なハイパフォーマンス仕様車を加えた。それが[[フォード・トリノ・タラデガ]]であり、詳細は該当項目と[[フォード・トリノ#NASCAR参戦車両]]を参照されたい。
 
1969年式の生産台数は1968年と比べて若干減少し、129,054台であった。フェアレーンとしての生産台数を含めると366,911台が製造された。トリノGTはトリノの中でも最も多くの販売台数である81,822台を記録した。しかし、フォードはコブラに対しては独立した車台番号を与えなかった為、コブラの正確な生産台数は現在でも不明であるとされる。<ref name="SC1"/>
 
なお、意外なところであるが、1969年式トリノは日本の[[テレビドラマ]]である[[西部警察]]の犯人側車両として登場している記録が残る。第1期シリーズ第47話に落書きが多数描かれた[[結婚式|ブライダルカー]]として登場し、大門団長の[[マシンX]]と激しいカーチェイスを演じた末に、最後は犯人諸共爆発炎上するという結末であったが、この際に使用された車両は1969年式トリノGTであった。<ref>[http://members.jcom.home.ne.jp/dandy-arata4/1047.html 西部警察・第47話 笛吹川有情]</ref>
 
== 第2世代(1970–1971年): トリノの独立車種化 ==
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| 1枚目画像の説明=1970年式トリノGT、レーザーストライプオプション及びCragar社製''Sharkfin''ホイール装着車
| 1枚目画像名=Ford Torino.jpg
| 2枚目画像の説明=1970年式トリノ・コブラ・スポーツルーフ
| 2枚目画像名=19691970 Ford Torino Cobra.jpg
| 3枚目画像の説明=1970½年式ファルコン・セダン
| 3枚目画像名=Ford Falcon Coupe (Les chauds vendredis '10).jpg
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア セダン<br />2ドア ハードトップ<br />2ドア ファストバック<br />2ドア コンーチブル<br />4ドア セダン<br />4ドア ハードトップ<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}} L6<br>{{Auto CID/>[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|302}} Windsor V8302V8]]<br />{{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351}} Windsor チャレンジャーV8系351V8]]<br />{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} [[:en:Ford 335 engine|Cleveland V8]]<br />{{Auto CID|429}} [[:en:Fordフォード・サンダージェットV8#サンダージェット429V8/ライマV8 385 engine(7.0L)|385 Series429-4V V8]]
| モーター=
| 最高出力=
| 最大トルク=
| トランスミッション= 3速MT<br />4速MT<br />3速AT
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|206.2|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|209.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|76.4|0in|mm|abbr=on}} (4ドア)<br />{{Auto inConvert|76.7|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|75.4|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|117.0|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|114.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 車両重量={{convert|3116|-|3774|lb|0|abbr=on}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・コメット<br />マーキュリー・サイクロン<br />マーキュリー・モンテゴ
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|60.5|0in|mm|abbr=on}}<br />後:{{Auto inConvert|60.0|0in|mm|abbr=on}}
| 別名=
| 先代=
194 ⟶ 188行目:
| プラットフォーム=
}}
[[1970年]]、トリノはフォード中型車ラインナップの代表モデルとなり、逆にフェアレーンがトリノの派生ラインナップに地位が入れ替えられ、事実上の第2世代へと[[フルモデルチェンジ]]を行った。1970年式からはそれまでのフォードの[[フルサイズ]]車である[[フォード・ギャラクシー]]の箱型スタイリングを[[ダウンサイジング]]したような手法を改め、当時の流行であった[[コークボトル・スタイリング]] ([[:en:Coke bottle styling]]) を基調としたまったく新しいボディラインが与えられた。
 
丁度、[[テールフィン]]が[[1950年代]]の[[ジェット機]]から影響を受けていたのと同様に、フォードの車体デザイナーであるBill Shenkは1970年式トリノ/フェアレーンをデザインするにあたり、当時の[[超音速機]]、特に[[翼平面形#デルタ翼|デルタ翼機]]が超音速に到達するために必要としたデザインである''機首を膨らませて胴体中央は狭く絞り、再び機体後方を広くするデザイン''を参考にした<ref>{{citeCite web|url=http://www.torinocobra.com/articles/birth_of_torino.htm|title=The Birth of the 1970 Ford Fairlane/Torino|first=Bill|last=Shenk|monthdate=May/June|year= 1995|publisher=The Fairlaner News|accessdate=10 October 2010|quote=This was the era of 'Area Rule,' 'Compressibility,' 'Mach I,' and 'Delta Wings.' So some of my personal likes rubbed off into my sketches at the Ford styling center}}</ref>
 
こうして誕生した新しいトリノ/フェアレーンは、ロングノーズ・ショートデッキスタイルが特色となり、1969年式と比較してより長く、より低く、より幅広なスタイリングとなった。全てのモデルが前年までよりも緩やかな曲線のルーフラインを持ちながらも、ルーフの高さそのものはより低く抑えられていた。フロントガラスの傾斜はより角度を増し、スポーツルーフモデルはより平坦なファストバック・ルーフラインとなった。全体的なスタイリングは前年までよりもエアロダイナミクスを重視したものとなり、フロントエンドもより先鋭的な形状となった。フロントグリルは[[フェイシア (自動車)|フロントマスク]]全体を覆う形状となり、両脇には4灯ヘッドライトが配置された。フロントフェンダーの造形はフロントドアと一体化したデザインとなり、フェンダーからドア後方に掛けて徐々に下降しつつ、リアクォーターパネルで消えるフェンダーラインが設けられた。フロントバンパーとリアバンパーはクロームメッキが施されたスリムなもので、ボディラインにタイトな角度に合わせられるように設計された。テールライトはリアバンパー上方のリアパネルに配置され、その形状は長方形を基調としながらも外側はボディラインに合わせて丸みを持たせられていた。
 
1970年式のモデルラインナップは非常に多岐に渡り、最初は次の13モデルで展開された。ベースモデルは'''フェアレーン500'''で、2ドアハードトップと4ドアセダン/ステーションワゴンの3モデル。次に中級グレードの'''トリノ'''となり、2ドア/4ドアハードトップと4ドアセダン/ステーションワゴンの4モデルが用意された。4ドアハードトップは1970年式から新たに追加されたボディ形状でもあった。最上質のトリムが与えられたモデルは'''トリノ・ブロアム''' (Brougham) で、2ドア/4ドアハードトップと4ドアステーションワゴンの3モデルであった。スポーツモデルである'''トリノGT'''は2ドアスポーツルーフ/コンーチブルで構成され、最後にハイパワーモデルである'''トリノ・コブラ'''が2ドアスポーツルーフのみで登場した。
 
モデルイヤー中期にはこのラインナップを拡充するモデルとして、'''ファルコン'''の名称が中型車ラインナップのエントリーモデルとして追加された。元々の[[フォード・ファルコン]] ([[:en:Ford Falcon (North American)]]) は、このモデルイヤーの中期まで[[コンパクトカー]]のラインナップに全く別の車種として存在したものであるが、1970年1月1日に発効した新たな連邦基準を満たす事が出来なくなってモデルイヤー中期で廃止となり、この時点よりトリノを中心とするフォード中型車ラインナップの最下級車種として、新たな形で追加される事になった。この''1970½年式''ファルコンは、2ドア/4ドアセダンと4ドアステーションワゴンで構成された。1970½年式ファルコンはフォード中型車の中でも最も低価格のモデルとなり、ベースモデルであるフェアレーン500よりも更に簡素化された内外装が与えられた。フロアカーペットの代わりにゴム製フロアマットが装備され、ピラード2ドアセダンを有する唯一のモデルでもあった。同時期にトリノにも2ドアスポーツルーフが用意され、トリノGTの廉価版としての位置付けを担当する事になった。こうして1970年モデルイヤー中期からはフォード中型車は車名違いも合わせて17種類にラインナップが拡大されたのである。
[[File:Ford Torino GT Convertible (Cruisin' At The Boardwalk '10).jpg|thumb|left|1970年式トリノGT・コンーチブル]]
新しいボディは1970年式トリノに更なる重量と大きさの増加をもたらした。全てのボディ形状で約{{convert|5|in|mm}} 全長が伸び、ホイールベースは{{convert|117|in|mm}}<ref group="注釈">ステーションワゴンはホイールベース{{convert|114|in}}</ref>となった。トラクション能力を高める為にホイールトレッドも増加されたが、サスペンションの構造自体は1969年式と同じままであった。重量は殆どのモデルでおよそ{{convert|100|lb}}増加した。競技向け(コンペティション)及びヘビーデューティのサスペンションパッケージはオプションとして引き続き残された。コンペティションサスの内訳は、前{{convert|500|lb}}/インチ、後{{convert|210|lb}}/インチのばねレートを持つ超重レートスプリング、前後ショックアブソーバーはGabriel社製となり、4速MT車では更に後軸のアブソーバーがstaggered shock配置(千鳥配置)とされた。標準若しくはその他のオプションサスで{{convert|0.75|in|mm}} 径のフロントスタビライザーが、コンペティションサスのみ{{convert|0.95|in|mm}} 径のものが奢られた。モータートレンド誌は1970年式トリノ・コブラをテスト車両に選び、コンペティションサスを次のように評した。''「(ノーマルとは)全くの別物である:この車ならどんなに急なコーナーでも完璧にテールスライドを制御して駆け抜ける事が出来る。これ程全てが非常に滑らかな足は、滅多にないであろう。」''
 
エンジンラインナップは大きく変更を受けた。1969年式から持ち越されたエンジンは、{{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}} 直6、{{Auto CID|302}}・2302V8(2バレルV8キャブレター){{Auto CID|351}}・2351V8(2バレルWindsorV8キャブレター)のみであった。殆どのモデルで引き続き250・直6が標準エンジンであった。オプションエンジンはGT及びブロアムの標準でもある302・2302V8(2バレルV8キャブレター)351・V8エンジン351V8は途中からWindsor型チャレンジャーV8に加えて[[:en:Ford 335 engine#351 Cleveland|Cleveland型ミッドブロックV8]]が追加され、新しいエンジンは2バレルと4バレルの二種類のキャブレターを選択できた。また、コブラの標準エンジンも{{Auto CID|429}}・4バレル[[:en:Ford 385 engine|385型ビフォード・サンダージェグブロトV8#サンダージェト429V8/ライマV8 (7.0L)|429-4V V8]]に更新された。1970年式以降のエンジンで注意しなければならない事は、同じ351・2バ呼称の351V8-2VでもチャルV8エンジンでもWindsor型ャーV8系かCleveland型かに分かれる事である。両エンジンは[[シリンダーブロック]]の大きさや配管類の取り回しがかなり異なるものであるが、車台番号もカタログ出力値も全く同じで記載された為に、実際にどちらが搭載されているかは実車を見るまでは分からない事に留意しなければならない。429・4バレル-4V V8エンジンは3つの異なるバージョンで提供された。一つめは''429サンダージェット''と称されたもので、これは所謂ノーマルエンジンでありコブラの標準装備でもある出力{{convert|360|hp}}のものであった。二つめは''429コブラジェット'' (429CJ)'' 出力、これ{{convert|370|hp}}、2ボルト式[[シリラムエアイブロッ]]<ref>[[クランクシャフト]]メインベアリングのキャップ片側当装着しり2本、計4本のボルトで固定するもの。通常は片側1本が殆どであり、2ボルト式の方が強固である。</ref>、[[ラッシュアジャスター]]、流量700cfmの[[ロチェスター]]社製([[:en:Rochester Products Division]])[[クアドコブラジェット]]([[:en:Quadrajet]])4バレルキャブレターを標準装備し、更にはラムエアインテークの装着有無 (CJ-R) を選択できた。429エンジンの最高峰が''429スーパーコブラジェット'' (429SCJ)'' 出力は{{convert|375|hp}}、前年からのオプションである''ドラッグパック''の部品の一部でもあった。購入時にドラッグパックオプションを選択すると、エンジンは429SCJに自動的に変更された。ドラッグパックオプションには他にも3.90:1または4.30:1の最終減速比、4ボルト式シリンダーブロック<ref>クランクメインベアリングのキャップを片側当たり4本、計8本のボルトで固定するもの。2ボルト式より更に強固である。</ref>、[[鍛造]]ピストン、流量780cfmの[[ホーリー・パフォーマンス・プロダクツ|ホーリー製]]キャブレター、エンジンオイルクーラー、ソリッド式[[タペット]]が含まれていた。デファレンシャルには4.30:1を選択した場合には''デトロイト・ロッカー''・デフロック、3.90:1を選択した場合には''Traction-Lock''・[[リミテッド・スリップ・デフ]] ([[差動装置#リミテッド・スリップ・デフ|LSD]]) がそれぞれ装着された。429SCJもラムエアインテークの有無を選択でき、他のエンジンと同様にラムエアインテークの有無でカタログ出力値が変化する事はなかった<ref group="注釈">[[ポンティアック・GTO]]の'''ラムエアー'''にも見られた例であるが、実際に出力向上効果がある場合でも、カタログスペック上は敢えて同一として記載される例が多かった。</ref>。ラムエアインテークは351・4バレルClevelandV8でもオプション選択できた。1970年式のラムエアインテークは[[エアクリーナー]]ボックスの上に直接エアスクープが取り付けられ、ボンネットに開けられた穴を通して外部にエアスクープが突き出す''[[シェイカースクープ]]'' ([[:en:Shaker_scoop]]) が採用された。''シェイカー''の徒名の由来はエンジンが回転中にエアスクープが振動する事に由来し、''ショックスクープ''とも呼ばれた。3速MTはコブラを除く全てのモデルの標準装着品であり、クルーズOマチック3速ATと4速MTがオプション品であった。
 
1970年式トリノはインテリアも一新された。ダッシュボードにはリニア式(回転指針)[[スピードメーター]]がドライバーの正面に配置され、V8エンジンモデルにはオプションでリボン式(横移動指針)[[タコメーター]]が用意された。指針式ゲージとして用意されたメーターは[[水温計]]のみとなり、[[油圧計]]と[[電圧計]]は警告灯として残るのみとなった。2ドア全モデルではオプションでハイバック・バケットシートとセンターコンソールが選択でき、GTモデルではこの装備が標準とされた。2ドアハードトップとスポーツルーフ、コンーチブルには''ダイレクトエア''換気システムが標準装備とされた。これは電動式の換気装置で、サイドウインドウを開けなくても室内の排気が自動で行われた。2ドアセダン、4ドア全車、ステーションワゴンではダイレクトエアはオプションとされた。
 
トリノ・ブロアムには標準で豪華な内外装トリムが装備された。細かな内装材 ([[:en:Upholstery]])、ホイールカバー、専用エンブレム、より厳重な遮音材の装備、そして'''ハイダウェイ (Hideaway)・ヘッドライト'''等である。ハイダウェイ・ヘッドライトは一種の[[リトラクタブルヘッドライト]]であり、普段はヘッドライトがグリルに存在しないかのようにグリルと同意匠のカバーで覆われていた。ヘッドライトスイッチをONにすると、真空[[アクチュエータ]]がカバーを開き、4灯ヘッドライトが姿を現す仕組みである。''モータートレンド''誌はトリノ・ブロアムを評して、''「トリノ・ブロアムを前にすると、まるで[[:en:Ford_LTD_(North_America)|LTD]]のような感覚を受ける。敢えて言うのであれば[[:en:Lincoln Continental|コンチネンタル]]と同じだ。しかしそれがより乗りやすいサイズで手に入るのだ。」''と述べた。また、同誌は1970年式トリノ・ブロアム 2ドアモデルの遮音性にも次のような言葉で賞賛を与えた。''「[[フリーウェイ]]の伸縮装置に乗っても車内にはドーンという鈍い音が聞こえるのみである。」''
 
トリノGTには標準でダミーエアスクープが一体成型されたボンネット、グリル中央にはGTエンブレムが配置され、ツートーンカラースポーツ[[ドアミラー]]、''[[ハニカム]]エフェクト''と呼ばれる電球と反射材が交互に配置されたリアパネル全面サイズのハニカムグリル付き大型テールライト、黒い装飾塗装が施された[[デッキリッド]](スポーツルーフのみ)、ホイールトリムリング付きのホイールキャップなどが装備された。標準タイヤはE70-14サイズ<ref group="注釈">レター表記。インチ表記では7.35-14、メトリック表記では185/80-14に相当。</ref>のファイバーグラス製[[ベルテッドバイアスタイヤ]]で、コンーチブルにはF70-14サイズが装備された。トリノGT専用のオプションとして、ハイダウェイ・ヘッドライトからフェンダーを経てドアまでを一気に突き抜ける'''レーザーストライプ'''が用意された。''モータートレンド''誌は1970年式トリノGT・スポーツルーフ、429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比をテスト車両に選択し、0-{{convert|60|mi/h|km/h|abbr=on}} 加速は6.0秒、1/4マイルは14.4秒、最終地点では{{convert|100.2|mi/h|km/h|abbr=on}} を計測した。
 
[[File:1970 ford torino cobra sportsroof chiolero rear.jpg|thumb|1970年式トリノ・コブラ、オプション品のスポーツ・スラットとマグナム500ホイール装着車]]
トリノ・コブラは純粋な高性能モデルとしてのコンセプトを維持し、トリノGTよりも内外装のトリムレベルは抑えられた物となった。トリノ・コブラはスポーツルーフモデルのみが用意され、標準で4速[[クロスレシオトランスミッション|クロスミッション]]、ハースト・シフター、黒塗りのボンネットとフロントグリル、7インチ幅のワイドホイール、F70-14サイズのホワイトレタータイヤ、ツイスト式(回転式)ボンネットピンとコブラエンブレムを装備した。新しいオプションとして{{convert|15|in|mm}}サイズの'''マグナム500'''ホイールとF60-15サイズ<ref group="注釈">レター表記。インチ表記では7.75-15、メトリック表記では195/80-15に相当。</ref>タイヤ、そして黒色の'''スポーツ・スラット'''[[ルーバー]]がリアウインドウに装着できた。これらのオプションはトリノGTでも選択する事が出来た。1970年式は重量増大にもかかわらず、新しい429エンジンの性能もあってパフォーマンスはより優秀となった。''モータートレンド''誌は1970年式トリノ・コブラ、ラムエアー仕様{{convert|370|hp}} の429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比をテスト車両に選択し、0-{{convert|60|mi/h|km/h|abbr=on}} 加速は6.0秒、1/4マイルは14.5秒、最終地点では{{convert|100|mi/h|km/h|abbr=on}} を計測した。同誌は、''「重量の増大は明らかにトラクション向上に貢献している。ホイールスピンは減少し、発進から加速に転ずるのが遙かに楽になった。」''と述べた。また、同誌は1970年式トリノ・コブラに429 SCJエンジン、4速MTと3.91:1の最終減速比の車両もロードテストに供しており、0-{{convert|60|mi/h|km/h|abbr=on}} 加速は5.8秒、1/4マイルは13.99秒、最終地点では{{convert|101|mi/h|km/h|abbr=on}} を計測した。''Super Stock & Drag Illustrated''誌は{{convert|375|hp}} の429 SCJエンジン、補機類は同条件の車両で更に良い記録である1/4マイル13.63秒、最終地点では{{convert|105.95|mi/h|km/h|abbr=on}} を計測した。しかし、その車両はキャブレターのパワージェットの強化や、プライマリー・セカンダリージェットを大きくする等の若干のライト[[チューニング]]を施されていた。同誌は更にこの車両に[[スリックタイヤ]]を履かせる事で、1/4マイル13.39秒、最終地点では{{convert|106.96|mi/h|km/h|abbr=on}} を易々と叩き出してしまったのである。
 
1970年式のステーションワゴンは3つのトリムレベルの車体で展開され、下からフェアレーン500・ワゴン、トリノ・ワゴン、そしてトリノ・スクワイアであった。1970年のモデルイヤー中期からは新たなベースモデルとして、ファルコン・ワゴンが加わった。ステーションワゴンの板金処理そのものは2ドアや4ドアと余り変わらない物を使用していた。しかし、フロントドアから後ろ側の板金処理は1968-69年式とほぼ同じものが持ち越された為、結果的にステーションワゴンのボディラインはセダンやスポーツルーフと比べて正方形に角張った、より直立した印象を受けるものとなった。トリノ・スクワイアはステーションワゴンの最上級車として、木目調サイドパネルやヘッドライトカバーが装備され、内外装トリムもトリノ・ブロアムと同等の物が用いられた。トリノ・スクワイアには302・2バレルV8エンジン302V8と、ブレーキブースター付きフロントディスクブレーキが標準装備された。他のワゴンは4輪ドラムブレーキ、エンジンは250・直6エンジンが標準装備であった。全てのワゴンにはフォード・マジックドアゲート(3(3段開閉式リアゲート)、パワーリアウインドウ、トランク内のサードシート、ルーフラックなどのオプションが継続して設定された。また、フォードは全てのトリノが[[:en:Tow_hitch#North_America|牽引等級]]Class II ({{convert|3500|lb|0|abbr=on}}) の性能を得る為の、トレーラー牽引パッケージをオプションで用意した。このオプションパッケージにはヘビーデューティサスペンション、高容量バッテリーとオルタネータ、強化された冷却装置とフロントディスクブレーキが標準装備され、追加選択オプションでパワートレインも{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}}か{{Auto CIDConvert|429|cuin|L|abbr=on}} のV8エンジンにクルーズOマチック3速AT、パワーステアリング等も組み合わせる事が出来た。
 
フォードはこの年度の中型車ラインナップにも特別なハイパフォーマンス仕様車を加える計画を立てていた。それが'''フォード・トリノ・キングコブラ'''であり、詳細は[[フォード・トリノ#NASCAR参戦車両]]を参照されたい。
 
全体的に見て、1970年はトリノにとって成功の年であった。自動車雑誌にも概ね高評価を得て、同年の[[モータートレンド・カー・オブ・ザ・イヤー]] ([[:en:Motor Trend Car of the Year]]) にも輝いた。モータートレンド誌はこのトリノを評して、''「(トリノには)古い感覚で言うところの「車としての型」が存在しない。しかし、それぞれの用途に特化した性能を持つラインナップを有している…ラグジュアリーからハイパフォーマンスまで。」''と述べた。フォードは1970年に230,411台のトリノ、110,029台のフェアレーンと67,053台のファルコン、各車合計407,493台を製造した<ref name="SC1"/>
 
=== 1971年式 ===
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| 車名= 1971年式 フォード・トリノ
| 車名補=
| 1枚目画像の説明=1971年式トリノ500GTワゴバーチブル
| 1枚目画像名=1971 Ford Torino 500GT Station WagonConvertible.jpg
| 2枚目画像の説明=1971年式トリノ500・ハードトップ
| 2枚目画像名=Ford Torino 500 Coupé.jpg
| 3枚目画像の説明=1971年式トリノ500・ワゴン
| 3枚目画像名=1971 Ford Torino 500 Station Wagon.jpg
| 製造国=
| 販売期間=
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア ハードトップ<br />2ドア ファストバック<br />2ドア コンーチブル<br />4ドア セダン<br />4ドア ハードトップ<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}} L6<br>{{Auto CID/>[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|302}} Windsor V8302V8]]<br />{{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351}} Windsor チャレンジャーV8系351V8]]<br />{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} [[:en:Ford 335 engine|Cleveland V8]]<br />{{Auto CID|429}} [[:en:Ford 385 engineフォード・サンダージェットV8#サンダージェット429V8|385429 Series4V V8]]
| モーター=
| 最高出力=
| 最大トルク=
| トランスミッション= 3速MT<br />4速MT<br />3速AT
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|206.2|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|209.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|76.4|0in|mm|abbr=on}} (4ドア)<br />{{Auto inConvert|76.7|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|75.4|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|117.0|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|114.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 車両重量={{convert|3141|-|3663|lb|0|abbr=on}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・サイクロン<br />マーキュリー・モンテゴ
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|60.5|0in|mm|abbr=on}}<br />後:{{Auto inConvert|60.0|0in|mm|abbr=on}}
| 別名=
| 先代=
262 ⟶ 256行目:
| プラットフォーム=
}}
[[1971年]]式はフォードの中型車に対する機構上の改良はごく小規模に留まっていた。1971年式の最大の変化は、中型車のラインナップから'''フェアレーンの名称が完全に消え去った'''事である。同様にファルコンの名前も1971年式に残る事はなかった。この年はトリノが名実共にフォードの中型車としての完全な独立を果たした事を意味しており、トリノのラインナップは14車種に及んだ。ベースモデルは'''トリノ'''で2ドアハードトップ、4ドアセダン/ステーションワゴンの3車種を設定。中級モデルは'''トリノ500'''で2ドアハードトップ/スポーツルーフ、4ドアセダン/ハードトップ/ステーションワゴンの5車種を設定。最上級モデルは'''トリノ・ブロアム'''で2ドア/4ドアハードトップの2車種となり、'''トリノ・スクワイア'''はブロアムと同等級のステーションワゴンとして設定された。'''トリノGT'''は2ドアスポーツルーフ/コンーチブルのみで展開され、'''トリノ・コブラ'''はスポーツルーフのみの設定であった。
 
スタイリングはトリムやグリルに僅かな仕様変更が見られるのみで、ボディラインの変化は無かった。1971年式のフロントグリルはコブラを除く全モデルが、グリルを分割するラインが中央に縦方向に設けられ、60年代の[[ポンティアック・GTO]]の様な顔つきとなった。一方、コブラは1970年式と同じ形状のグリルを使用し続けた。コブラを除く全モデルは、この縦方向の分割ラインに改訂されたエンブレムが装着されていた。トリノ500、ブロアム、スクワイアワゴン、そしてGTには引き続きハイダウェイ・ヘッドライトがオプション設定された。ハイダウェイ・ヘッドライト装着車の場合、グリルの窪みが少なくなり、縦方向のグリル分割ラインが目立たなくなるフロントフェイスとなった。
 
エンジンのラインナップは1970年式と同一だった。殆どのモデルの標準エンジンは250・直6で、ブロアム、スクワイア、トリノGTの標準エンジンは302・2バレルV8302V8である。コブラの標準エンジンは351・4バレルV8にダウングレードされた。429エンジンと250・直6エンジンを除くエンジンでは、[[圧縮比]]が僅かに低下し、出力性能も若干低下した。フォードにとってはマッスルカーに対する[[自動車保険]]料の増大、強化されつづける[[排出ガス規制]]への対応が懸念材料となっており、こうした変更を行わざるを得なくなっていた。こうした傾向は他の自動車メーカーでも例外ではなく、トリノの主要な競争相手であった[[シボレー・シェベル]]も1971年式では全てのエンジンで圧縮比の低下措置が行われていた。シェベルSSは{{Auto CIDConvert|350|cuin|L|abbr=on}}・2バレルキャブレターが標準エンジンであったが、このエンジンも圧縮比の低下が行われた。マッスルカーの先駆者でもある[[ポンティアック・GTO]]に至っては、圧縮比の低下のみならず、ラムエアーIII/IVやGTO・ジャッジの廃止、更には自動車保険査定の馬力表示規定を回避するためにエンジン出力表記を[[グロス]]から[[ネット]]に移行させるなどの苦肉の策で生き残りを図るという情勢であった。しかしフォードの場合には1971年式にもラムエアー仕様はそのまま残され、351・4バレル、429 CJ、429 SCJで選択することが可能であった。
 
トリノ・ブロアムはトリノのラグジュアリー志向モデルとしての地位が維持された。このモデルにはブロアム・オーナメントや追加のトリム、フルホイールキャップ、遮音処理の追加、布製内装材などが奢られた。ハイダウェイ・ヘッドライトは標準装備ではなくなったが、オプションとしては引き続き残されていた。''モータートレンド''誌は1971年式トリノ・ブロアム 4ドアモデルを評して、''「(シートの)クッション性とホールド性は素晴らしい。内装の品質もだ。」''と述べた。トリノGTもスポーティモデルとして残され、ツートーンカラーレーシングドアミラー、GTエンブレム、ダミーエアスクープ、専用ホイールキャップとトリムリング、クロームメッキペダルパッド、ハニカムエフェクト・フルサイズテールランプ、そしてE70-14サイズタイヤ(コンーチブルはF70-14サイズ)が標準装備された。
 
トリノ・コブラには{{convert|285|hp|abbr=on}} の351・4バレルエンジン、ハースト・シフター付き4速MT、F70-14サイズタイヤ、コブラエンブレム、コンペティションサス、専用ホイールキャップ、そして黒色フロントグリルが標準装備された。コブラへの新しいオプションは、トリノGTに残されていたレーザーストライプであった。高出力の429 コブラジェットエンジンは1970年式と同様の性能で残されていた。しかし''Super Stock and Drag Illustrated''誌を始めとするロードテストでは1971年式トリノ・コブラは不本意な結果を残すことになる。同誌はテスト車両に{{convert|370|hp|abbr=on}} の429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比を選択したが、ベスト記録でも1/4マイル15.0秒、最終地点では{{convert|97|mi/h|km/h|abbr=on}} の成績しか残せなかった。同誌では注記として''「高性能の[[点火装置]]、より良い[[インテークマニホールド]]、より大きな[[キャブレター]]と[[エキゾーストマニホールド]]を組み合わせることに対応するだろう。」''と記した。''Cars''誌は1971年式トリノ・コブラに{{convert|370|hp|abbr=on}} のラムエアー版429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比、そして幾らかの幸運にも恵まれ、{{convert|4100|lb|abbr=on}} のトリノで1/4マイル14.5秒、最終地点速度{{convert|102|mi/h|km/h|abbr=on}} の記録を残した。同誌のスタッフがいくつかの''適切な[[チューニング]]''を施した後に、前述の記録を得られるようになったという。
トリノ・ブロアムはトリノのラグジュアリー志向モデルとしての地位が維持された。このモデルにはブロアム・オーナメントや追加のトリム、フルホイールキャップ、遮音処理の追加、布製内装材などが奢られた。ハイダウェイ・ヘッドライトは標準装備ではなくなったが、オプションとしては引き続き残されていた。''モータートレンド''誌は1971年式トリノ・ブロアム 4ドアモデルを評して、''「(シートの)クッション性とホールド性は素晴らしい。内装の品質もだ。」''と述べた。トリノGTもスポーティモデルとして残され、ツートーンカラーレーシングドアミラー、GTエンブレム、ダミーエアスクープ、専用ホイールキャップとトリムリング、クロームメッキペダルパッド、ハニカムエフェクト・フルサイズテールランプ、そしてE70-14サイズタイヤ(コンパーチブルはF70-14サイズ)が標準装備された。
 
1971年式の生産台数は326,463台で、1970年式のトリノ/フェアレーン/ファルコンで構成されたフォード中型車全体生産数よりも低かった。トリノGTコンーチブルは1,613台、トリノ・コブラは3,054台が1971年に製造された<ref name="SC1"/>
トリノ・コブラには{{convert|285|hp|abbr=on}}の351・4バレルエンジン、ハースト・シフター付き4速MT、F70-14サイズタイヤ、コブラエンブレム、コンペティションサス、専用ホイールキャップ、そして黒色フロントグリルが標準装備された。コブラへの新しいオプションは、トリノGTに残されていたレーザーストライプであった。高出力の429 コブラジェットエンジンは1970年式と同様の性能で残されていた。しかし''Super Stock and Drag Illustrated''誌を始めとするロードテストでは1971年式トリノ・コブラは不本意な結果を残すことになる。同誌はテスト車両に{{convert|370|hp|abbr=on}}の429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比を選択したが、ベスト記録でも1/4マイル15.0秒、最終地点では{{convert|97|mi/h|km/h|abbr=on}}の成績しか残せなかった。同誌では注記として''「高性能の[[点火装置]]、より良い[[インテークマニホールド]]、より大きな[[キャブレター]]と[[エキゾーストマニホールド]]を組み合わせることに対応するだろう。」''と記した。''Cars''誌は1971年式トリノ・コブラに{{convert|370|hp|abbr=on}}のラムエアー版429 CJ、C-6型3速AT、3.50:1の最終減速比、そして幾らかの幸運にも恵まれ、{{convert|4100|lb|abbr=on}}のトリノで1/4マイル14.5秒、最終地点速度{{convert|102|mi/h|km/h|abbr=on}}の記録を残した。同誌のスタッフがいくつかの''適切な[[チューニング]]''を施した後に、前述の記録を得られるようになったという。
 
なおまた意外なところであるが、1969年式トリノは日本の[[テレビドラマ]]である[[西部警察]]』第47話にて、1970 - 71年式トリノGTが犯人側車両として登場している記録が残る。第1期シリーズ第47話に落書きが多数描かれた[[結婚式|ブライダルカー]]として登場した。大門団長の[[マシンX]]と激しいカーチェイスを演じた末に、最後は犯人諸共爆発炎上するという結末であったが、この際に使用された車両は1969年式トリノGTであった。<ref>[http://members.jcom.home.ne.jp/dandy-arata4/1047.html 西部警察・第47話 笛吹川有情]</ref>
1971年式の生産台数は326,463台で、1970年式のトリノ/フェアレーン/ファルコンで構成されたフォード中型車全体生産数よりも低かった。トリノGTコンパーチブルは1,613台、トリノ・コブラは3,054台が1971年に製造された。<ref name="SC1"/>
 
== 第3世代(1972–1976年): グラン・トリノ ==
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア ハードトップ<br />2ドア ファストバック<br />4ドア セダン<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}} L6<br>{{Auto CID/>[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|302}} Windsor V8302V8]]<br>{{Auto CID/>[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351}} Windsor チャレンジャーV8系351V8]]<br />{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} Cleveland V8<br />{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}} [[:en:Ford 335 engine|335 series V8]]<br>{{Auto CID/>[[フォード・サンダージェットV8#サンダージェット429V8|429}} 385 Series4V V8]]
| モーター=
| 最高出力=
| 最大トルク=
| トランスミッション= 3速MT<br />4速MT<br />3速AT
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|203.7|0in|mm|abbr=on}}/{{Auto inConvert|207.3|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|207.7|0in|mm|abbr=on}}/{{Auto inConvert|211.3|0in|mm|abbr=on}} (4ドア) <br />{{Auto inConvert|211.6|0in|mm|abbr=on}}/{{Auto inConvert|215.1|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|79.3|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|79.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|114.0|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|118.0|0in|mm|abbr=on}} (4ドア、ワゴン)
| 車両重量={{convert|3369|-|4042|lb|0|abbr=on}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・サイクロン<br />マーキュリー・モンテゴ
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|62.8|0in|mm|abbr=on}}<br />{{Auto inConvert|63.9|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)<br />後:{{Auto inConvert|62.9|0in|mm|abbr=on}}<br />{{Auto inConvert|64.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 別名=
| 先代=
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| プラットフォーム=
}}
[[1972年]]、トリノは第2世代で確立した多くの特徴を引き継ぐ形で[[フルモデルチェンジ]]、第3世代へと移行した。1972年式トリノは''ロングノーズ・ショートデッキ''を特徴とするコークボトル・スタイリングをより一層強調されたものとなった。最も大きな変更点はグラン・トリノにはフロントノーズに楕円形の開口部を持つ大型の升型フロントグリル (eggcrate grille) が設けられたことである。自動車[[ジャーナリスト]]の[[トム・マカヒル]] ([[:en:Tom McCahill]]) は、1972年式グラン・トリノのスタイリングを評して''「まるで(映画[[:en:Namu, the Killer Whale]]『殺人鯨ナム』に登場する[[シャチ]]の)[[ナムー (シャチ)|ナムー]] ([[:en:Namu (orca)]]) のようなグリル形状だ。''」と述べた。しかし、''「(顧客に所有する)喜びを与える、生真面目なスタイリングである。」''とも述べている。1972年式グラン・トリノはヘッドライトの周囲にクロームメッキ・ベゼルを有しており、フロントバンパーも升型フロントグリルの形状に合わせた衝撃吸収バーが設けられ、これらの組み合わせによって、極めて斬新な印象を与えるフロントフェイスに仕上がっていた。一方、''同じ1972年式でもグラン・トリノではない'''''ベースモデル'''には升型フロントグリルは採用されず、ヘッドライトまで取り囲む形状の大型フロントグリルが装着された<ref group="注釈">[http://www.lovefordsimcdb.org/galleries/stock/vehicle_251629-Ford-Torino-1972.htmhtml][[特攻野郎Aチーム]]<span>のワンシーンに登場する1972年式ベースモデル</span></ref>。また、ベースモデルには衝撃吸収バーを持たない専用バンパーとエアスクープを持たないボンネットが装着され、ベースモデルだけは1971年式以前の雰囲気に近い、やや保守的な印象のフロントフェイスに仕上げられた。このようなベースモデルとグラン・トリノとのフロントフェイスの差別化は、1974年式まで基礎デザインを踏襲しつつ引き継がれる事となったが、今日では様々な映像作品の影響もあり、各年式のグラン・トリノの印象が余りにも強すぎるために、ベースモデルのヘッドライトを内包する大型フロントグリルを基調とするフロントフェイスの存在については、余り広く知られていない傾向がある。
 
1972年式トリノのフロントフェンダーは縁の部分がより積極的に広がる''オーバーフェンダー''形状となった。リアフェンダーには特徴的なフェンダーラインが設けられ、フロントウインドウは60度の角度で取り付けられていた。ボディの構造は1971年式と似通っていたが、Aピラーとルーフはより薄くなっていた。リアビューのデザインも一新され、は両端に薄い長方形のテールライトが埋め込まれたフルサイズのリアバンパーを基調としたものになった。ウインドウガラスは全てフレームレスデザインとなり、4ドアモデルやステーションワゴンからは[[三角窓]]が廃止され、トリノ全モデルに''ダイレクトエア''換気システムが標準装備された。1972年式全モデルには1972年の新しい連邦安全規則に則った装備がされ、ドアハンドルが埋め込み式となり、サイドドアビームも装備された。
 
1972年式のモデルラインナップは9種類で、14種類存在した1971年式よりも減少した。コンーチブルは廃止され、4ドアセダンと4ドアハードトップは統合され、'''4ドア ピラードハードトップ'''という名称に改められた。これはピラーを持つセダンにフレームレスドアガラスを組み合わせたものに対して、フォードが新たに名付けた名称であり、実質的な機能性は4ドアセダンと同じ物である。他の全てのボディデザインは、ファストバックをスポーツルーフと呼び表す慣習と共に1971年式から引き継がれた。'''トリノ'''はベースグレードの名称として引き継がれたが、前述の通りこのグレードのみフロントフェイスが異なっていた。そして中級グレードのトリノ500は'''グラン・トリノ''' (Gran Torino) という名前に改められた。トリノ・ブロアムは単一グレードとしては廃止され、グラン・トリノのオプションパッケージの地位に後退、トリノGTは'''グラン・トリノ・スポーツ'''という名称に改められた。トリノとグラン・トリノは4ドアセダンと2ドアハードトップで展開され、グラン・トリノ・スポーツは2ドアハードトップ/スポーツルーフの2種類が用意された。ステーションワゴンのラインナップは'''トリノ'''、'''グラン・トリノ'''、'''グラン・トリノ・スクワイア'''の3種類であった。この年式からはトリノはラグジュアリー方面に傾倒した商品展開となっていき、高出力の象徴であったトリノ・コブラは廃止された。
 
1972年式の最も大きな変化は、[[フレーム形式_(自動車)|シャーシ構造]]が'''1971年式までの[[モノコック]]から、[[フレーム形式_(自動車)#セパレートフレーム|ボディ・オン・フレーム]]に変更された'''事である。新しいシャーシはトリノにより静かで、より振動の少ない乗り心地を与える為に設計が行われた。前方からの衝撃を吸収する為にフロントエンドは'''S字'''形状となり、路面からの衝撃を緩和する'''トルクボックス'''構造も採用された。フレームとボディの間には14個のゴムマウントが設けられ、各クロスメンバーにも5つのゴムマウントが配置された。フロントサスペンションには左右で長さの異なるコントロールアームが採用され、コンピュータでばね定数が選択されたコイルスプリングがスタビライザーと共にロワーコントロールアームに取り付けられた。この構造はフルサイズ車の[[フォード・LTD]] ([[:en:Ford LTD]]) で採用されていたものであった。リアサスペンションは[[車軸懸架]]式である事自体は変わらなかったが、スプリングがコンピュータでばね定数が選択されたコイルスプリングとされた、''ステイブル''の名を持つ4リンクサスペンションが採用された。この新しいシャーシとサスペンションにより、1971年式と比較してトレッドは少なくとも{{convert|2|in|mm|0}}広くなった。''モータートレンド''誌は1972年式グラン・トリノ・ブロアム 4ドアモデルを評して、''「路面の振動と騒音の低減が素晴らしいレベルである。」''と絶賛した。フォードは1972年式にもヘビーデューティとコンペティションの二つのサスペンションオプションを提供していた。ヘビーデューティサスはより強固なスプリングとショックアブソーバーに交換されるもので、コンペティションサスにはこれに加えてより大径化されたフロントスタビライザーと、リアスタビライザーが含まれていた。このオプションはトリノにおけるリアスタビライザーの初採用でもあった。フロントディスクブレーキは1972年式トリノには全車標準装備となった。1972年の時点ではトリノの兄弟車でもある[[マーキュリー・モンテゴ]] ([[:en:Mercury Montego]]) を除いて、他社の中型車は全てドラムブレーキが標準であり、極めて画期的な措置でもあった。ブレーキブースターは{{Auto CIDConvert|429|cuin|L|abbr=on}}以下のエンジンのセダン・ファストバックではオプション品であったが、{{Auto CIDConvert|429|cuin|L|abbr=on}} エンジンを搭載する全車及びステーションワゴン全車では標準装備とされた。パワーステアリングは前年までのギアボックス・ブースターポンプの別体構造が、一体構造品に改められた。全てのトリノは14インチホイールが標準であったが、警察向け車両や公用向け車両 ([[:en:Fleet vehicle]]) だけは15インチホイールが装備された。
 
1972年式の他の主要な変更点は、2ドアと4ドアで異なる[[ホイールベース]]が採用された事である。1968年の時点で既に[[ゼネラルモーターズ]]は中型車に於いて、4ドア車に2ドア車よりも広いホイールベースを与える事を始めていた。これにより、車体デザイナーが4ドアを2ドア化する為に必要な設計変更をより柔軟に行う事を可能とした。[[クライスラー]]も中型車のクーペやセダンでボディパネルの共有を行う事はしなかったものの、1971年からこうした変更を行った。1972年式トリノは2ドア車に{{convert|114|in}} のホイールベースを採用し、4ドア車やステーションワゴン、そして兄弟車の[[フォード・ランチェロ]]([[:en:Ford Ranchero]])に対して{{convert|118|in}} のホイールベースを採用し、GMの中型車のように2ドアと4ドアには多数の共有ボディパネルを用いていた。こうした変更により1972年式トリノはそれまでよりもより長く、より低く、より幅広なボディを獲得した。グラン・トリノを例に取ると、2ドア車は{{convert|1|in}}、4ドア車は{{convert|5|in}} それぞれ全長が増加した。しかし、興味深い事にベースモデルのトリノに関しては、セダンは{{convert|1|in}} 全長が増加したが、2ドアは逆に{{convert|3|in}}1971年式よりも全長が短くなっている。これによりベースモデルは4ドアとステーションワゴンは重量が増加したが、2ドアに限っては重量増加は最小限に抑えられている。
 
標準エンジンは{{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}} 直6であったが、ステーションワゴンとグラン・トリノ・スポーツは{{Auto CID|302}}・2バレル[[:en:Ford Windsor engine#302|スモールブロック V8]]302V8が標準エンジンに採用された。オプション選択可能なエンジンは302・2バレル302V8{{Auto CID|351}}・2バチャル [[:en:Ford Windsor engine#351|"Windsor" ンジャーV8]]系351V8または[[:en:Ford 335 engine#351 Cleveland|"Cleveland" V8]]、{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}}・4バレル[[:en:Ford 335 engine#Q-code (Cobra-Jet)|"コブラジェット" V8]](CJ)、{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}}・2バレル、{{Auto CIDConvert|429|cuin|L|abbr=on}}・4バレルであった。400・2バレルエンジンは1972年式からの新しいエンジンであり、 351 Clevelandと同じ[[:en:Ford 335 engine#400|335 シリーズエンジン]]の一つでもあった。429・4バレルエンジンは前年までのコブラジェットエンジンのような高出力エンジンではなく、低回転高トルク指向のセッティングが行われていた。[[排出ガス規制]]及びガソリンの[[無鉛化]]、[[燃費]]の改善に対応する為に、各エンジンの性能に悪影響を及ぼし始めていた。少なくとも圧縮比はトリノの全てのエンジンで8.5:1以下にまで低められ、対応ガソリンも[[レギュラーガソリン]]へと変化していた。これらの変化により1971年式のエンジンと比べ、全てのエンジンの出力性能が低下した。更には1971年から採用が始まったカタログスペックの[[ネット]]表記 ([[:en:Horsepower#SAE net power]]) への全面移行により、必要以上に性能低下が誇張されていた面もあった。全ての車体には3速MTが標準装備されていたが、クルーズOマチック3速ATもオプションで残されていた。しかし、351・2バレル、400・2バレル、429・4バレルエンジンを選択した場合には強制的にこの3速ATが組み合わされた。351・4バレルコブラジェットエンジンだけは、4速MTとクルーズOマチック3速ATのどちらかを選択する事が出来た。
 
1972年式の唯一の高出力エンジンは351・4バレルCJエンジンであり、かつての429CJ搭載のトリノのような[[スーパーカー]]級の高出力は最早望めなくなった。しかし、351・4バレルCJエンジン
は1970-71年の351・4バレルエンジンにはない新しい特徴を多数盛り込んでいた。同エンジンには特製のインテークマニホールドとカムシャフト、専用バルブスプリング、流量750cfmの[[モータークラフト]] ([[:en:Motorcraft]]) 製キャブレター、4ボルト式シリンダーブロック、{{convert|2.5|in}} デュアルマフラーなどが組み込まれた。351CJはデュアルマフラーを装備し、4速MTを選択できる唯一のエンジンであった。同時期の多くのマッスルカーでは既に姿を消していたラムエアインテークは351CJと429エンジンで引き続き選択する事が可能であった。ラムエアー仕様の351CJは良好な性能を発揮し、''カー・アンド・ドライバー''誌のテストでは351CJ、4速MT搭載、3.50:1最終減速比のグラン・トリノ・スポーツのスポーツルーフ車が用いられ、0 - {{convert|60|mi/h|km/h|abbr=on}} 加速6.8秒の成績を残した。同誌は1/4マイルの計測値は公表しなかったが、''Cars''誌は351CJ、C-6型3速MT搭載、3.50:1最終減速比のグラン・トリノ・スポーツのスポーツルーフ車を用い、1/4マイルにて15.4秒の成績を記録している。
 
1972年式ではインテリアも一新され、その構造の多くにABS樹脂を多用し、レイアウトも新しくなったメーターパネルを特色としていた。標準のメータークラスターには5つの同じ大きさのメーターポッドが装備され、スピードメーター、燃料計、水温計、各種警告灯が内蔵された。そして左端のメーターボッドは''ダイレクトエア''換気システムの排気口として稼働した。時計は標準のメータークラスターには装備されず、オプション品として提供された。全てのV8エンジン搭載モデルで選択できた''Instrumentation Group''メーターオプションは、ステアリングの正面に位置した2つの大きなメーターポッドが特徴で、[[オドメーター]]付きスピードメーターとタコメーターが配置された。左端に配置された3つ目の小さなメーターポッドは''ダイレクトエア''換気システムの排気口として稼働し、電圧計と燃料計、油圧計は時計とセットになってダッシュボードの中央に独立して配置されていた。座席も1972年式では一新され、標準装備の[[ベンチシート]]では左右にシート一体型ヘッドレストが装着され、オプションのハイバック・バケットシートでも同様の[[ヘッドレスト]]が装備された。フォードは従来のビニールシートよりも良好な通気性を持つ''comfort weave''のビニールシート地を引き続きオプション設定した。また、1971年式までオプション設定された4段調整ベンチシートに代わり、新たに6段調整パワーベンチシートが設定された。
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[[File:1972 Ford Gran Torino Sport SportsRoof rear.jpg|thumb|1972年式グラン・トリノ・スポーツのスポーツルーフ車。レーザーストライプオプション及びマグナム500ホイール装着。]]
 
グラン・トリノ・スポーツは2ドアハードトップとスポーツルーフの2種類が用意された。全てのスポーツモデルにはボンネットにエアスクープが装着されており、オプションでラムエアインテークを取り付ける事が可能であった。また、ツートーンレーシングドアミラーや成形ドアパネル(スポーツモデルのみの装備)、ボディサイド及びホイールリップ[[モールディング]] ([[:en:molding (automotive)]])、F14-14サイズタイヤ(ハードトップはE14-14サイズ)も装備された。反射材のレーザーストライプもオプションで残されたが、ボディサイド全体を貫くように全長が改訂された。このオプションを選択するとボディサイドモールディングがクロームメッキ仕上げの物に変更され、レーザーストライプ自体も4色から選択する事が可能となった。運動性を重視する[[エンスージアスト]]の為に、''Rallye Equipment Group''というオプションも用意された。このオプションにはInstrumentation Groupメーターオプションが含まれており、コンペティションサス、G70-14サイズのホワイトレタータイヤ、ハースト・シフター付き4速MT(4MT(4速MTを既に選択している場合)も装備された。Rallye Equipment Groupオプションは351・4バレルCJまたは429・4バレルエンジンを搭載したグラン・トリノ・スポーツのみ選択する事が出来た。1972年式のコンペティションサスは''Mechanix Illustrated''誌 ([[:en:Mechanix Illustrated]]) のテスターでもあるトム・マカヒルからも賞賛を受ける出来であった。同様に''モータートレンド''誌や''カー・アンド・ドライバー''誌での過酷なテストにも十分応えるものであり、過去のトリノの高性能サスペンションと比較しても優れたハンドリングを実現していた。モータートレンド誌は1972年式のコンペティションサスを評して、''「過去のモデルイヤーの超高レートスプリングと異なり、フォードの技術陣は乗り心地を犠牲にせずに優れたコントロール性能を実現した。全てのトリノオーナーはこのサスペンションに感動する事であろう。」''と述べている。トリノの新しく改良されたシャーシとサスペンション設計がこのような評価を生み出した事が考えられる。
 
1972年式のステーションワゴンは前年よりも遙かに大きな車体となった。全長はトリノワゴンでは{{convert|2|in}} 長くなり、グラン・トリノワゴンでは{{convert|6|in}} も長くなった。ホイールベースは{{convert|4|in}} 長くなり、全幅も{{convert|3|in}} 広くなり、重量も大きく増大した。[[トランク_(自動車)|荷室]]の床面もフラットとなり、テールゲートの開口部もより低く改良され、4x8[[フィート]]の[[合板]]をそのまま積載する事が可能となった。1972年式ステーションワゴンの荷室容量は83.5 cu ft (2,364 L) となり、幾つかのフルサイズステーションワゴンに匹敵するものとなった。サードシートを増設する事で、搭乗人数を6人から8人に増加させる事も出来た。全てのステーションワゴンには3段開閉式の''マジックドアゲート''と高強度フレームが標準装備された。グラン・トリノ・スクワイアには荷室に網棚が標準装備され、木目調サイドパネルも下地のボディカラーが透けて見えるような半透明色の物が採用された。スクワイアにはヘビーデューティサスと高容量ラジエーター、高容量バッテリー、そしてトレーラー牽引を意識した3.25:1の最終減速比も標準装備された。{{convert|6000|lb|abbr=on}} の牽引能力を提供する''ライトトレーラーパッケージ''もオプション設定されたが、このオプションを選択すると高強度フレームと3.25:1最終減速比が自動的に除外された。また、このオプションには351・2バレルエンジン以上の排気量のエンジンが必須とされた。
 
全体的には1972年式トリノは非常に大きな成功を収め、生産台数は総計で496,645台にも達した<ref name="SC1"/>。これは1972年の中型車全体を見ても全メーカーで最大の売り上げであり、[[1964年]]以来フォード車がシボレー・シェベルを販売台数で追い抜いた初の事例でもあった。トリノ・コブラを欠く状況でありながら、1972年式トリノはより安全に、より静かに、より良いハンドリングとブレーキ性能を実現していた。全てが新しくなった1972年式トリノは、全ての自動車雑誌で多くの肯定的な評価を獲得し、更には''Consumer Guide''誌からは'''Best Buy'''の評価を得た。
 
なお、1972年式グラン・トリノ・スポーツの2ドアスポーツルーフは、映画[[グラン・トリノ]]おいて[[クリント・イーストウッド]]の監督とドライビングで一躍有名になったほか、『[[ワイルド・スピード MAX]]』において[[ラズ・アロンソ]]演じるフェニックスの手でドライブされており、メインのライバルカーとして活躍した。
 
=== 1973年式 ===
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア ハードトップ<br />2ドア ファストバック<br />4ドア セダン<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}} L6<br />{{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|302}} Windsor V8302V8]]<br />{{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351}} Windsor チャレンジャーV8系351V8]]<br />{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} Cleveland V8<br />{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}} 335 series V8<br />{{Auto CID[[フォード・サンダージェットV8#サンダージェット429V8|429}} 385 Series4V V8]]<br />{{Auto CID|460}} [[:en:Ford 385 engineフォード・サンダージェットV8#460V8|385460 Series4V V8]]
| モーター=
| 最高出力=
| 最大トルク=
| トランスミッション= 3速MT<br />4速MT<br />3速AT
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|208.0|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|212.0|0in|mm|abbr=on}} (4ドア) <br />{{Auto inConvert|215.6|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|79.3|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|79.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|114.0|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|118.0|0in|mm|abbr=on}} (4ドア、ワゴン)
| 車両重量={{convert|3597|-|4124|lb|0|abbr=on}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・モンテゴ
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|62.8|0in|mm|abbr=on}}<br />{{Auto inConvert|63.9|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)<br />後:{{Auto inConvert|62.9|0in|mm|abbr=on}}<br />{{Auto inConvert|64.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 別名=
| 先代=
380 ⟶ 376行目:
| プラットフォーム=
}}
[[1973年]]式は1972年式からボディ形状自体はそれ程大きくは変化しなかった。1973年式において一目見て明確に分かる変更点は、新しい連邦政府の安全規制を満たす為に必要なフロントフェイスであった。その規制とは1972年9月1日以降販売される全ての自動車に対して、時速{{convert|5|mi/h|km/h|abbr=on}} で車体前方から衝突した場合でもヘッドライトや燃料装置に損傷を及ぼさない構造とする事が求められた。1973年に限っては、リアバンパーは時速{{convert|2.5|mi/h|km/h|abbr=on}} の衝突に耐える物が要求された。1973年式トリノは[[バルクヘッド]] ([[:en:Firewall (construction)]]) から前方のボディメタルは全て一新され、1972年式までの尖った部分の多いフロントフェイスはより平面的な形状のフロントフェイスに取り替えられた。更に1972年式までのフロントフェイスにフィットした構造の薄いフロントバンパーは、新たに巨大な {{convert|5|mi/h|km/h|abbr=on}} 衝撃吸収バンパー(所謂'''5マイルバンパー''')に変更された。この新しい大きなバンパーにより、トリノ全モデルに少なくとも全長で{{Auto inConvert|1|0in|mm|abbr=on}}、重量で{{convert|100|lb|abbr=on}} の増加をもたらした。
 
フロントグリルの基本的なデザインは、トリノもグラン・トリノも1972年式のコンセプトを引き継いだものが採用された。1973年式グラン・トリノは長方形のフロントグリルの両端にパーキングライトが内蔵され、4灯ヘッドライトの周囲にはクロームメッキベゼルが配置された。ベースモデルのトリノにはヘッドライトまで取り囲む形状の大型フロントグリルが装着され、パーキングライトはフロントフェイス両端に配置された<ref>[http://www.cardomain.com/ride/3913804/1973-ford-torino Green73Torino's 1973 Ford Torino]</ref>。両者ともフロントフェイスの上端部は航空機の-[[リーディングエッジ]] ([[:en:Leading edge]]) を模した形状に造形され、代わりに全てのモデルが同じボンネットを共有する事となった。つまり、ボンネットのエアスクープがついに廃止された事を意味していた。1973年式は1972年式と同一デザインのリアバンパーに、衝撃吸収材(インパクトストライプ)が貼り付けられたバンパーガードを追加する事で、時速{{convert|2.5|mi/h|km/h|abbr=on}} の耐衝撃要件をクリアしていた。
 
1973年式のモデルラインナップは11種類で、9種類存在した1972年式よりも増加した。前年のオプションパッケージの地位から単独グレードの地位に復帰し、新たに最上位モデルとして設定された'''グラン・トリノ・ブロアム'''は、2ドアハードトップと4ドアセダンの2種類が用意された。その他のモデルは1972年式と同じままであった。1973年式のベンチシートは後方視認性を高めるためにヘッドレストが別体式となり、シートバックの高さも低くされた。ハイバック・バケットシートは2ドアモデルで引き続き選択可能であった。ボンネットオープナーは[[セキュリティ]]性を高めるために室内へと移動された。1973年式では新たに[[ラジアルタイヤ]]もオプション設定され、[[トレッド_(タイヤ)|トレッド]]寿命の向上と路面騒音の低下を実現していた。
 
標準装備のエンジンは全モデルで{{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}} 直6が継続され、ステーションワゴンとスポーツモデルでは{{Auto CID|302}}・2バレルV8302V8が標準である点も変わらなかった。オプションエンジンも1972年式のものがほぼそのまま残されたが、全てのエンジンで圧縮比が8.0:1まで低下し、出力も若干低下した。{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} コブラジェットエンジンは唯一の高性能エンジンとして残され、出力は1972年式の{{convert|2|hp|abbr=on}}減に抑えられたが、車重の増加により全体的な性能は低下した。警察及び公用向けトリノのオプションとして'''インターセプター'''パッケージが新設定され、専用エンジンとして{{Auto CIDConvert|460|cuin|L|abbr=on}}・4バレルV8エンジンが追加された。車重の増加に対応するため、1973年式ではリアドラムブレーキが1972年式までの{{convert|10|in|mm|0}} から、{{convert|11|in|mm|0}} に増径された。しかし、変速機に関しては3速MTは250・302の両標準エンジンのみの装備であり、大排気量エンジンの場合には強制的に3速ATが組み合わされる点や、351エンジンのみ4速MTが選択できる点は前年と同様であった。
 
グラン・トリノ・スポーツはフロントグリルとデッキリッドに専用エンブレムが装着された。レーザーストライプは若干形状が変更されて残され、貼付位置もボディサイドのより高い位置に変更された。スポーツモデルであってもボンネットのエアスクープは廃止され、ラムエアインテークももう選択できなくなった。しかし、蒸気上記の変更を除いてはグラン・トリノ・スポーツは2ドアハードトップとスポーツルーフの2種類で提供されつづけた。''カー・アンド・ドライバー''誌における1973年式グラン・トリノ・スポーツのロードテストでは、サスペンションの高い減衰性能と上質なハンドリングで高い評価を受けた。同誌は1973年式トリノを評して''「静粛さは[[ジャガー_(自動車)|ジャガー]]、スムーズさはリンカーン・コンチネンタルに匹敵する程、トリノのコンペティションサスは優れている。」''と述べている。同誌はテスト車両に351 CJエンジン、C-6型3速AT、3.25:1の最終減速比のスポーツルーフを選択し、0-{{convert|60|mi/h|km/h|abbr=on}} 加速は7.7秒、1/4マイルは16.0秒、最終地点では{{convert|88.1|mi/h|km/h|abbr=on}} を計測した。1972年式よりも0-60マイル加速では0.9秒遅かったが、この成績は[[ギア比]]の差や変速機の違い、増加した車重などが主要な原因でもある。1973年式スポーツモデルは
{{convert|4308|lb|abbr=on}}、1972年式は{{convert|3966|lb|abbr=on}} であり、実に{{convert|350|lb|abbr=on}} も増加していたのである。性能は既にかつてのスーパーカー級とは言いがたいものであったが、他社のマッスルカーの性能低下と比較すればまだ立派なものであった。単純な比較を行うと、''モータートレンド''誌のテストでは1970年式トリノ2ドアモデルに351・4バレルエンジンとクルーズOマチック3速AT、3.00:1の最終減速比の車両で、0-{{convert|60|mi/h|km/h|abbr=on}} 加速は8.7秒、1/4マイルは16.5秒、最終地点では{{convert|86|mi/h|km/h|abbr=on}} であったが、1970年式は高圧縮比のために[[ハイオクガソリン]]を必要としたのに対して、1973年式は[[レギュラーガソリン]]でありながらもより良い成績を残していた。
 
グラン・トリノ・ブロアムは最高級の内装材を持つトリノの最上級車としてラインナップされ、[[ナイロン]]製の布地や[[合成皮革]]製のシート地を特色とした。ベンチシートには折り畳み式アームレストが装備され、内装には木目調パネルも多用された。ステアリングホイールも専用品が装備され、電気式時計や金属製ペダルパッド、デュアル[[警笛|ホーン]]等も装備された。グラン・トリノ・スクワイアもブロアムと同様の内装材が奢られていた。
 
性能低下などの数々のマイナス要因を抱えながらも、1973年式は引き続き大きな成功を収めつづけ、販売台数は496,581台に達した。公衆はトリノに好意的な反応を見せつづけ、GMが1973年に送り出した''コロネード''スタイルの中型車を大きく引き離した。1973年式トリノは主要な対抗車種である同年式のシボレー・シェベルに対して、販売台数で実に168,000台以上の大差を付けたのである<ref name="SC1"/>
 
=== 1974年式 ===
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| 1枚目画像名=1974 Ford Torino from Starsky & Hutch.JPG
| 2枚目画像の説明=1974年式グラン・トリノ・エリート。フロントフェンダーにGranTorinoのエンブレムが確認できる。
| 2枚目画像名=FordGrandTorino1974 Ford Gran Torino Elite, front left.jpg
| 3枚目画像の説明=1973-74年式のトリノ・ハードトップ。ベースモデルには「グラン」のサブネームが無く、フロントフェイスもかなり異なる形状であった。
| 3枚目画像の説明=
| 3枚目画像名=Ford - Flickr - mick - Lumix.jpg
| 製造国=
| 販売期間=
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア ハードトップ<br />4ドア セダン<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#チャレンジャー302V8/5.0リッター|302}} Windsor V8302V8]]<br />{{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351}} Windsor チャレンジャーV8系351V8]]<br />{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} Cleveland V8<br />{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}} 335 series V8<br />{{Auto CIDConvert|460|cuin|L|abbr=on}} 385 Series V8
| モーター=
| 最高出力=
| 最大トルク=
| トランスミッション= 3速MT<br />4速MT<br />3速AT
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|211.4|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|215.4|0in|mm|abbr=on}} (4ドア) <br />{{Auto inConvert|222.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|79.3|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|79.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|114.0|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|118.0|0in|mm|abbr=on}} (4ドア、ワゴン)
| 車両重量={{convert|3509|-|4250|lb|0|abbr=on}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・モンテゴ<br />[[:en:Ford Elite|フォード・エリート]]
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|63.4|0in|mm|abbr=on}}<br />後:{{Auto inConvert|63.5|0in|mm|abbr=on}}
| 別名=
| 先代=
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| プラットフォーム=
}}
[[1974年]]式トリノは、ラインナップにいくつかの変化があった。この年、連邦政府の衝突安全基準が改正され、リアバンパーにも時速{{convert|5|mi/h|km/h|abbr=on}} での衝突にえることが要求されるようになった。そのため、それまで全てのトリノに装着されていたリアバンパーとテールライトパネルは全面改修が必要となった。新しいリアバンパーは非常に大きな長方形形状となり、取り付け位置もより低い位置に変更された。1972-73年式までのロールパン形状<ref group="注釈">ボディラインに合わせて作られた起伏の少ない形状のバンパー</ref>のバンパーもはや成立できなくなり、った。テールライト幅が短い狭く正方形に近い形状となり、のものが両端のコーナーに配置されるようになった。これにより、リアのサイドマーカーライトが必要なくなった。[[自動車用燃料タンク (自動車)|燃料タンク]]の給油パイプもバンパーの変更に併せて、1972-73年式までの位置からせられた。給油口のアクセスドアはトランクロック直下(リアバンパー直上)のリアパネル中央に配置され、その下に[[ナンバープレート]]が取り付けられるデザインとなった。1974年式グラン・トリノはフロントフェイスも改正された。新しいフロントグリルは1973年式と形状こそ似ていたが、グリルの仕切りは8つの縦長の長方形が並ぶデザインに変更された。エンブレムの形状も改正され、グリルの左側に配置されるようになった。グリルの網目もより細かくなり、パーキングライトはグリル両端に縦長の長方形形状のものが内蔵された。フロントバンパーは1973年式と比べて中央が山形に尖ったような形状となり、バンパーガードもより中央側に移動させられた。また、バンパー上のナンバープレートのブラケットは運転席側に移動した。1974年式トリノのベースモデルのフロントフェイスは1973年式とほぼ同じまま<ref>[http://www.cardomain.com/ride/3119707/1974-ford-torino Rochelle '74 Torino My Starsky Sedan 1974 Ford Torino - Salt Lake City, UT]</ref>であったが、フロントバンパーは1973年式グラン・トリノと同じ形状となり、ナンバープレートはバンパー中央に配置された。1974年式グラン・トリノ・ブロアムは、リアパネルにはテールランプレンズがパネル全面に配置された。しかし給油口が存在するためパネル中央部のみは発光しなかった。ブロアムとスクワイアには新たにフロントグリル上方に[[フードクレストマーク]]も装着された<ref>[http://www.flickr.com/photos/autohistorian/4627907821/ 1974 Ford Gran Torino Brougham Flickr - Photo Sharing!]</ref>
 
1974年式グラン・トリノは前面形状も変更され、新しいフロントグリルは1973年式と形状こそ似ていたが、グリルの仕切りは8つの縦長の長方形が並ぶデザインに変更され、網目がより細かくなった。エンブレムの形状も変更され、グリルの左側に配置されるようになった。パーキングランプはグリル両端に縦長の長方形形状のものが内蔵された。フロントバンパーは1973年式と比べて中央が山形に尖ったような形状となり、バンパーガードも中央寄りに移設された。また、バンパー上のナンバープレートのブラケットは運転席側に移設された。1974年式トリノのベースモデルのフロントフェイスは1973年式とほぼ同じまま<ref>[http://www.cardomain.com/ride/3119707/1974-ford-torino Rochelle '74 Torino My Starsky Sedan 1974 Ford Torino - Salt Lake City, UT]</ref>であったが、フロントバンパーは1973年式グラン・トリノと同じ形状となり、ナンバープレートはバンパー中央に配置された。
1974年式には幾つかの新しい機能とオプションが追加された。グラン・トリノの2ドアモデルには、1970年代にポピュラーなオプションとして広まりつつあった[[オペラウインドウ]]([[:en:opera window]])が設定され、ブロアムでは標準装備された。1972-73年式までと異なり、全ての1974年式2ドアモデルはリアウインドウが固定窓となっていた。また、より高級性を指向した本皮巻きステアリングホイールや分割式ベンチシート、電動式[[サンルーフ]]、[[クルーズコントロール]]といった新たな機能も装備された。グラン・トリノのハードトップとセダンには、車体をより長く、より低く見せるためのリアフェンダースカートもオプション設定された。内外のトリムも1974年式では修正を受け、ドアパネルの下部には成型品のロッカーパネルが追加された。ブロアムとスポーツモデルでは更に前後のタイヤとバンパーの間のフェンダーパネル下部にもクロームメッキパネルが追加され、前後バンパー間がクロームメッキパネルで繋がれた外見となった。一方、スクワイアにはこのようなモールディングは設けられなかった。1974年式の全てのモデルには米国連邦政府の新しい安全基準に則り、装着警告及び始動制限機構を内包した<ref>[http://papers.sae.org/741013 Design of a Seat Belt Interlock Circuit]</ref>インターロック式[[シートベルト]]が装備された。この安全装置は短命で、1974年式のみにしか装備されなかった。コンペティションサスは廃止され、唯一選択可能なサスペンションオプションは改良されたヘビーデューティサスのみとなった。このオプションはエリートを除く全てのトリノで利用可能であり、より大きなフロントスタビライザーと、より高レートの前後スプリングで構成された。2ドアと4ドアセダンには更に高容量ショックアブソーバーとリアスタビライザーが含まれていたが、ステーションワゴンではこの二つは含まれなかった。
 
1974年式にはいくつかの新しい機能とオプションが追加された。グラン・トリノの2ドアモデルには、1970年代にポピュラーなオプションとして広まりつつあった[[:en:opera window|オペラウインドウ]]([[:en:opera window]])が設定され、ブロアムでは標準装備された。1972-73年式までと異なり、全ての1974年式2ドアモデルはリアウインドウが固定窓となっていた。また、より高級性を指向した本皮巻きステアリングホイールや分割式ベンチシート、電動式[[サンルーフ]]、[[クルーズコントロール]]といった新たな機能も装備された。グラン・トリノのハードトップとセダンには、車体をより長く、より低く見せるためのリアフェンダースカートもオプション設定された。内外のトリムも1974年式では修正を受け、ドアパネルの下部には成型品のロッカーパネルが追加された。ブロアムとスポーツモデルでは更に前後のタイヤとバンパーの間のフェンダーパネル下部にもクロームメッキパネルが追加され、前後バンパー間がクロームメッキパネルで繋がれた外見となった。一方、スクワイアにはこのようなモールディングは設けられなかった。1974年式の全てのモデルには米国連邦政府の新しい安全基準に則り、装着警告及び始動制限機構を内包した<ref>[http://papers.sae.org/741013 Design of a Seat Belt Interlock Circuit]</ref>インターロック式[[シートベルト]]が装備された。この安全装置は短命で、1974年式のみにしか装備されなかった。コンペティションサスは廃止され、唯一選択可能なサスペンションオプションは改良されたヘビーデューティサスのみとなった。このオプションはエリートを除く全てのトリノで利用選択可能であり、より大きなフロントスタビライザーと、より高レートの前後スプリングで構成された。2ドアと4ドアセダンには更に高容量ショックアブソーバーとリアスタビライザーが含まれていたが、ステーションワゴンではこの二つは含まれなかった。
1974年式のモデルラインナップの数は、二つの例外を除いて1973年式と同一であった。グラン・トリノ・スポーツのファストバックモデルであるスポーツルーフが廃止され、新たに'''グラン・トリノ・エリート'''が設定された。グラン・トリノ・エリートは、[[シボレー]]の人気車種である[[シボレー・モンテカルロ]]([[:en:Chevrolet Monte Carlo]])に対抗するためにフォードが送り出した車体であり、[[フォード・サンダーバード]]の購入までは達し得ない顧客層に対する、エントリーレベルの''パーソナル・ラグジュアリーモデル''として、モンテカルロと同程度の価格帯で販売された。フォードはトリノ・エリートを''「まったく新しい2ドアハードトップ。サンダーバード風のスタイルと機構を持ちながらも、中型車としての経済性も持つパーソナル・ラグジュアリーモデル」''と宣伝していた。トリノ・エリートは厳密にはフォードが宣伝するような''まったく新しい車種''では無かったが、幾つかの新機構を特色ともしていた。トリノ・エリートはフロントのボディメタルが一新され、フロントセクションはサンダーバードを意識したスタイルとなった。ヘッドライトは2灯式となり、クロームメッキベゼルが装着された。フェンダー前端も尖った形状となり、先端にパーキングライトが装着された。フロントグリルもより大きくなり前方に大きなアーチを描く形状となった。クォーターパネルとドアはマーキュリー・モンテゴや[[マーキュリー・クルーガー]]([[:en:Mercury Cougar]])と共用され、他のトリノとはまったく異なるボディラインが与えられた。テールライトはリアパネル全面を覆う大きなものが装着されたが、中央部は給油口ドアであるため点灯しなかった。トリノ・エリートは{{Auto CID|351}}・2バレルV8エンジン、3速AT、ラジアルタイヤが標準装備された。内装もラグジュアリー指向のものが用いられ、ビニール張り天井、オペラウインドウ、分割式ベンチシート、''ウエストミンスター''[[ニット]]内装、木目調トリムなどが標準装備された。
 
[[1974年]]のモデルトリノはラインナップの数は、二にいく例外を除いて1973年式と同一で変更があった。グラン・トリノ・スポーツのファストバックモデルであるスポーツルーフが廃止され、新たに'''グラン・トリノ・エリート'''が設定された。グラン・トリノ・エリートは、[[シボレー]]の人気車種である[[:en:Chevrolet Monte Carlo|シボレー・モンテカルロ]]([[:en:Chevrolet Monte Carlo]])に対抗するためにフォードが送り出した車であり、[[フォード・サンダーバード]]の購入までは達し得ない顧客層に対する、エントリーレベルの''パーソナル・ラグジュアリーモデル''として、モンテカルロと同程度の価格帯で販売された。フォードはトリノ・エリートを''「まったく新しい2ドアハードトップ。サンダーバード風のスタイルと機構を持ちながらも、中型車としての経済性も持つパーソナル・ラグジュアリーモデル」''と宣伝していた。トリノ・エリートは厳密にはフォードが宣伝するような''まったく新しい車種''ではかったが、いくつかの新機構を特色としていた。トリノ・エリートはフロントのボディメタパネルが一新され、フロントセクションはサンダーバードを意識したスタイルとなった。ヘッドライトは2灯式となり、クロームメッキベゼルが装着された。フェンダー前端も尖った形状となり、先端にパーキングライトが装着された。フロントグリルもより大きくなり前方に大きなアーチを描く形状となった。クォーターパネルとドアはマーキュリー・モンテゴや[[:en:Mercury Cougar|マーキュリー・クーガー]]([[:en:Mercury Cougar]])と共通化され、他のトリノとはまったく異なるボディラインが与えられた。テールライトはリアパネル全面を覆う大きなものが装着されたが、中央部は給油口ドアであるため点灯しなかった。トリノ・エリートは{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}}2バレルV8エンジン、3速AT、ラジアルタイヤが標準装備された。内装もラグジュアリー指向のものが用いられ、ビニール張り天井、オペラウインドウ、分割式ベンチシート、''ウエストミンスター''[[ニット]]内装、木目調トリムなどが標準装備された。
1974年式はそれまでよりも更に大きく重い車体となった。新しいバンパーは1974年式に車重と全長の増加をもたらした。全てのボディスタイルで{{convert|5|in|mm|0}}全長が増加し、重量も大幅に増加した。全てのトリノでの大幅な重量と全長の増加により、{{Auto CID|250}}・直6エンジンはもはやトリノの標準エンジンとしては力不足となり、廃止に追い込まれた。しかし、''チャールトン''([[:en:Chilton Company]])と''Moter's''(Motor Information Systems社)が発行する整備解説書では、既に市販される新車には搭載されていないにもかかわらず、依然としてトリノの直列6気筒の整備情報が掲載され続けていた。それは1974年式の幾つかの車体において250・直6エンジンが搭載されて組み立てられていた事<ref>{{cite web|url=http://starskytorino.com/lance/index.html |title=Starsky and Hutch Torinos |publisher=Starskytorino.com |date= |accessdate=2010-07-17}}</ref>を示唆しており、実際に[[2004年]]の映画版[[スタスキー&ハッチ#映画版|スタスキー&ハッチ]]の''赤いグラン・トリノ''は、1974年式の直6エンジン搭載車を用いて改造が行われた<ref>{{cite web|url=http://starskytorino.com/moviemike/moviemike.html |title=Starsky and Hutch Movie Torino |publisher=Starskytorino.com |date= |accessdate=2010-07-17}}</ref>。一方、市販される全てのトリノとグラン・トリノは{{Auto CID|302}}・2バレルV8エンジンが新たな標準エンジンに採用され、このエンジンのみ3速MTが標準トランスミッションとなった。前年と同様に大排気量V8エンジンを選んだ場合には、クルーズOマチック3速ATを必須オプションとして選択する必要があった。429・4バレルエンジンはより大きな馬力とトルクを持つ{{Auto CID|460}}・4バレルエンジンに置き換えられる形で廃止され、このエンジンにはデュアルマフラーが装着された。前年の429エンジンと同様に、1974年式の460エンジンはC-6型3速ATのみが組み合わせられた。他の全てのエンジンは1973年式よりも若干出力値が増加した。{{Auto CID|351}}コブラジェットエンジンは唯一の高出力エンジン(460・4バレルエンジンよりも高出力であった)として継続され、出力は{{convert|9|hp|abbr=on}}増加し、逆にトルクは{{convert|22|ft.lbf|N.m|abbr=on}}低下した。このエンジンのみ4速MTが選択できたが、このエンジンは2ドアモデルのみのオプションとされていた。折しも1973年秋にはアメリカを始めとする世界各国は[[オイルショック|第一次石油危機]]([[:en:1973 oil crisis]])に見舞われており、世の潮流は高性能車に冷ややかな視線を向け始めていた。これはアメリカでも例外ではなく、過剰なまでの大排気量を持ち、大量の燃料を消費してパワーを絞り出すマッスルカーは完全に消費者から見放され始めていた。結果的に、1974年式は351 CJエンジンと4速MTが選択可能な最後のモデルイヤーとなってしまった。
 
1974年式はそれまでよりも更に大きく重い車体となった。新しいバンパーは1974年式に車重と全長も1つ増加をもたらし要因であった。全てのボディタイで{{convert|5|in|mm|0}} 全長が増加し、重量も大幅に増加した。全てのトリノでの大幅な重量と全長の増加により、{{Auto CIDConvert|250|cuin|L|abbr=on}}直6エンジンはもはやトリノの標準エンジンとしては力不足となり、して廃止に追い込まれた。しかし、''チャールトン'' ([[:en:Chilton Company]]) ''Moter's''(Motors(Motor Information Systems社)が発行する整備解説書では、既に市販される新車にはすでに搭載されていないにもかかわらず、依然としてトリノの直列6気筒の整備情報が掲載され続けていた。それは1974年式の幾つかの車体において{{Convert|250|cuin|L|abbr=on}} の直6エンジンが搭載されて組み立てられていたこと<ref>{{cite web|url=http://starskytorino.com/lance/index.html |title=Starsky and Hutch Torinos |publisher=Starskytorino.com |date= |accessdate=2010-07-17}}</ref>を示唆しており、実際に[[2004年]]の映画版[[スタスキー&ハッチ#映画版|スタスキー&ハッチ]]の''赤いグラン・トリノ''は、1974年式の直6エンジン搭載車を用いて改造が行われた<ref>{{cite web|url=http://starskytorino.com/moviemike/moviemike.html |title=Starsky and Hutch Movie Torino |publisher=Starskytorino.com |date= |accessdate=2010-07-17}}</ref>。一方、市販される全てのトリノとグラン・トリノは{{Auto CID|302}}・2バレルV8エンジン302V8が新たな標準エンジンに採用され、このエンジンのみには3速MTが標準トランスミッションとなった。前年先代と同様に大排気量V8エンジンを選んだ場合には、クルーズOマチック3速ATを必須オプションとして選択され必要があった。429・4バレルエンジン 4V V8より大きな馬力とトルクを持つ{{Auto460 CID|460}}・4バレルエンジン4V V8に置き換えられる形で廃止され、このエンジンにはデュアルマフラーが装着された。前年先代の429エンジンと同様に、1974年式の460エンジンはC-6型3速ATのみが組み合わせられた。他の全てのエンジンは1973年式よりも若干出力若干増加した。{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} コブラジェットエンジンは唯一の高出力エンジン({{Convert|460|cuin|L|abbr=on}} の4バレルエンジンよりも高出力であった)として継続され、出力は{{convert|9|hp|abbr=on}} 増加し、逆にトルクは{{convert|22|ft.lbf|N.m|abbr=on}} 低下した。このエンジンのみ4速MTが選択できたが、このエンジンは2ドアモデルのみのオプションとされていた。折しも1973年秋にはアメリカを始めとする世界各国は[[オイルショック|第一次石油危機]] ([[:en:1973 oil crisis]]) に見舞われており、世の潮流は高性能車に冷ややかな視線を向け始めていた。これはアメリカでも例外ではなく、過剰なまでの大排気量を持ち、大量の燃料を消費してパワーを絞り出すマッスルカーは完全に消費者から見放され始めていた。結果的に、1974年式は351 CJ351CJエンジンと4速MTが選択可能な最後のモデルイヤー年式となってしまった。
1974年式グラン・トリノ・スポーツはスポーツルーフが廃止された為に、グラン・トリノの2ドアモデルとの区別や差別化が非常に難しくなり、その存在意義を問われる状況となっていた。本来はラグジュアリー指向の装備であるオペラウインドウやフェンダースカートがオプションとして選択可能である状況も、グラン・トリノ・スポーツのコンセプトとしての迷走を示していた。但し、グラン・トリノ・スポーツには専用エンブレムが依然残されており、1974年式ではフロントグリル、Cピラー、給油口ドアにそれぞれ装着され、Cピラーには更に''Sport''文字エンブレムも装着された。なお、オペラウインドウをオプション選択した場合には、Cピラーのエンブレムは無くなり、代わりにフェンダーの''Gran Torino''エンブレムの下にSportエンブレムが装着された。レーザーストライプは廃止されたが、非反射式カラーストライプは幾つかの色で用意されていた。グラン・トリノ・スポーツのドア内装パネルは他のグラン・トリノと同様のビニール製が用いられた。前年までの追加メーターオプションは標準装備となり、タイヤは前年までの70シリーズ14インチ・バイアスタイヤから78シリーズ15インチ・ラジアルタイヤに変更された。バケットシートはオプションに引き続き残されていたが、ヘッドレストが別体式とされた為シートバック自体はローバック形状となった。また、追加コストを払う事でドアパネルとシートにカラーストライプを入れる事が可能であった。オプションの''マグナム500''ホイールはそれまでの総クロームメッキ仕上げから、トリムリングとスポーク双方とも塗装仕上げに変更された。1974年式グラン・トリノ・スポーツは、エンジンの性能低下と重量増大も相まって性能面では精彩を欠いたモデルとなった。特に重量面では1974年式は1972年式よりも{{convert|400|lb|abbr=on}}も重くなっていた。
 
1974年式グラン・トリノ・スポーツはスポーツルーフが廃止された為にため、グラン・トリノの2ドアモデルとの区別や差別化見分け非常つき難しなり、その存在意義を問われる状況となっていた。本来はラグジュアリー指向の装備であるオペラウインドウやフェンダースカートがオプションとて選択可能である状況も、グラン・トリノ・スポーツのコンセプトとしての迷走を示していた。但し、グラン・トリノ・スポーツには専用エンブレムが依然として残されており、1974年式ではフロントグリル、Cピラー、給油口ドアにそれぞれ装着され、Cピラーにはさら''Sport''」の文字エンブレムも装着された。なお、オペラウインドウをオプション選択した場合Cピラーのエンブレムは無くなり、代わりにフェンダーの''Gran Torino''エンブレムの下にSportエンブレムが装着された。レーザーストライプは廃止されたが、非反射式カラーストライプは幾つかの色で用意されていた。グラン・トリノ・スポーツのドア内装パネルは他のグラン・トリノと同様のビニール製が用いられた。前年までの追加メーターオプションは標準装備となり、タイヤは前年までの70シリーズ14インチ・バイアスタイヤから78シリーズ15インチ・ラジアルタイヤに変更された。バケットシートは引き続きオプションに引き続きとして残されていたが、ヘッドレストが別体式とされた為シートバック自体はローバック形状となった。また、追加コストを払う事でオプションとしてドアパネルとシートにカラーストライプを入れること可能あった。オプションの''マグナム500''ホイールはそれまでの総クロームメッキ仕上げから、トリムリングとスポークの両方とも塗装仕上げに変更された。1974年式グラン・トリノ・スポーツは、エンジンの性能低下と重量増大も相まって性能面では精彩を欠いたモデルとなった。特に重量面では1974年式は1972年式よりも{{convert|400|lb|abbr=on}} も重くなっていた。
スポーツ性が次第に失われゆく状況の中でも1974年式トリノは依然として高い人気を保持しており、フォードは426,086台を生産した。しかし、''そのうちの96,604台はグラン・トリノ・エリート''であった。<ref name="SC1"/>
 
スポーツ性が次第に失われゆく状況の中でも1974年式トリノは依然として高い人気を保持しており、フォードは426,086台を生産した。しかし、''そのうちの96,604台はグラン・トリノ・エリート''であった<ref name="SC1"/>
 
=== 1975年式 ===
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| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア ハードトップ<br />4ドア セダン<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351}} Windsor チャレンジャーV8系351V8]]<br />{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} [[Ford 335 engine|Modified V8]]<br />{{Auto CID|400}} 335 series [[フォード・サンダージェットV8<br>{{Auto CID#460V8|460}} 385 Series4V V8]]
| モーター=
| 最高出力=
470 ⟶ 468行目:
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|213.6|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|217.6|0in|mm|abbr=on}} (4ドア) <br />{{Auto inConvert|222.6|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|79.3|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|79.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|114.0|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|118.0|0in|mm|abbr=on}} (4ドア、ワゴン)
| 車両重量={{convert|3987|-|4456|lb|0|abbr=on}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・モンテゴ<br />フォード・エリート
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|63.4|0in|mm|abbr=on}}<br />後:{{Auto inConvert|63.2|0in|mm|abbr=on}}
| 別名=
| 先代=
485 ⟶ 483行目:
| プラットフォーム=
}}
[[1975年]]式トリノは幾つかの小改良を除いては、大部分は前年とほぼ同じ形態であった。モデルラインナップの唯一の変更点は、'''グラン・トリノ・エリートがトリノのラインナップから外れた事'''である。エリートはこのモデルイヤーから独立車種となり、名称も単に[[フォード・エリート]] ([[:en:Ford Elite]]) として販売されるようになった。1975年式トリノは全てのモデルで信頼性の高いセミ・トランジスタ式[[点火装置]]が採用され、始動性と燃費が向上し、整備コストも低廉となった。ラジアルタイヤの標準化も省燃費化に貢献し、パワーステアリングとブレーキブースターも全モデルで標準装備となった。1975年式トリノは新しいデザインのステアリングホイールと、オプションで''燃費計''として機能する[[負圧計]]が設定された事も特徴であった。
 
1975年式は外装や寸法は殆ど変化しなかったが、唯一特筆すべき点としては、'''ベースモデルのトリノのグリルとフロントフェイスがグラン・トリノのものと共通化された事'''が挙げられる。しかし外見の変化はなかったものの、1974年式と比べて重量は増加し続けていた。
 
[[排出ガス規制|連邦大気汚染規制法]]の改正により、フォードは1975年式トリノを基準適合させる為に[[三元触媒]]を採用した。しかし、三元触媒は強い排圧を発生させる為にエンジン出力は大きく減少する事になった。こうした事態に対処する為、フォードは1975年式全モデルの標準エンジンを{{Auto CID|351}}・2バチャルV8エンジャーV8系351V8に変更し、変速機もクルーズOマチック3速ATのみとする事になった。MTは全て廃止され、エンジン出力も{{Auto CIDConvert|460|cuin|L|abbr=on}} エンジンを除いて1974年式よりも大幅に減少し、重量増加によって燃費も運動性能も低下し続けていた。オプションエンジンは{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}}・2バレルV8と460・4バレルV8のみとなり、351・4バレルV8は廃止されてしまった。
 
ミッドブロックの[[:en:Ford 335 engine#351 Cleveland|351 Cleveland (351C)]] V8エンジンは1974年式を最後に廃止された。代わって新型のミッドブロックV8である[[:en:Ford 335 engine#351 Modified|351 Modified(351M)]]V8エンジンがラインナップに加えられた。このエンジンはスモチャレンジャルブロックV8系351 Windsor(351W)V8351V8エンジンと共に、351・2バレルエンジンを選択した際に搭載されたものであるが、351Mは{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}} 向けの背の高いシリンダーブロックを採用し、[[コネクティングロッド]]やインテークマニホールド等の多くの部品を351Cエンジンや400エンジンと共有していて、フォード内の生産コストの低減に貢献した。351Wと351Mの間にはかなりの出力性能差があったが、強化された排出ガス規制の為に[[カリフォルニア州]]では351Mエンジン搭載車は購入できなかった。
 
グラン・トリノ・スポーツは実質的には1974年式と殆ど変わらない形態で購入する事が出来た。それは同時に、グラン・トリノ・スポーツは他のグラン・トリノと殆ど差別化が行われないまま継続されていた事も示しており、顧客の関心はもはや殆ど得られない状態であった。結果的に1975年式グラン・トリノ・スポーツは歴代のスポーツモデルで最も不人気な年式となり、5,126台を売り上げるに留まった。
 
1975年式トリノは1974年式に比較して大きく売り上げを落とした。これは前年式の稼ぎ頭でもあったエリートが独立車種となった事も影響しており、トリノは生産台数の大部分を失う事になった。フォードは1975年に195,110台のトリノを生産したに留まり、1975年式エリートの生産台数123,372台を合わせたとしても318,482台に過ぎず、1974年式から大きく落ち込む結果となった。主要な要因としては、顧客の関心がより小型で経済性の高い車種へと移り、需要もそのような[[小型車]]へシフトする傾向があった事が考えられた。フォードはそうした顧客層の新たな指向に合わせて、[[フォード・グラナダ]] ([[:en:Ford Granada (North America)]]) を開発しており、トリノの顧客層を大きく侵食しつつあった。グラナダはフォードの[[コンパクトカー]]に分類される車種で、フロントフェイスは1974年式グラン・トリノ・エリートを強く意識したものであり、その大きさは1960年代のトリノに近いサイズでもあった<ref name="SC1"/>
 
=== 1976年式 ===
513 ⟶ 511行目:
| デザイン=
| 乗車定員=
| ボディタイプ=2ドア ハードトップ<br />4ドア セダン<br />4ドア ステーションワゴン
| エンジン= {{Auto CID[[フォード・チャレンジャーV8#351V8/5.8リッター|351}} Windsor チャレンジャーV8系351V8]]<br />{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}} Modified V8<br />{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}} 335 series V8<br />{{Auto CID[[フォード・サンダージェットV8#460V8|460}} 385 Series4V V8]]
| モーター=
| 最高出力=
521 ⟶ 519行目:
| 駆動方式=
| サスペンション=
| 全長={{Auto inConvert|213.6|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|217.6|0in|mm|abbr=on}} (4ドア) <br />{{Auto inConvert|222.6|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全幅={{Auto inConvert|79.3|0in|mm|abbr=on}} <br />{{Auto inConvert|79.0|0in|mm|abbr=on}} (ワゴン)
| 全高=
| ホイールベース={{Auto inConvert|114.0|0in|mm|abbr=on}} (2ドア)<br />{{Auto inConvert|118.0|0in|mm|abbr=on}} (4ドア、ワゴン)
| 車両重量={{convert|3976|-|4454|lb|0|abbr=on}}*<br />''*車両総重量''
| 最大積載量=
| 自由項目1(項目名)=関連車種
| 自由項目1(内容)=フォード・ランチェロ<br />マーキュリー・モンテゴ<br />フォード・エリート
| 自由項目2(項目名)=[[トレッド]]
| 自由項目2(内容)=前:{{Auto inConvert|63.4|0in|mm|abbr=on}}<br />後:{{Auto inConvert|63.2|0in|mm|abbr=on}}
| 別名=
| 先代=
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| プラットフォーム=
}}
[[1976年]]式トリノはモデルラインナップに大きな変化が生じた。グラン・トリノ・スポーツが廃止され、2ドア及び4ドアとステーションワゴンのトリノ、グラン・トリノ、グラン・トリノ・ブロアム(スクワイアワゴン)の合計9種類のラインナップとなった。1976年式の新しいオプションは電動トランクオープナーと、[[パーキングブレーキ]]の自動解除装置であった。グラン・トリノの2ドアモデルでは、以前はスポーツでのオプション品であったバケットシートとセンターコンソールのセットをオプション選択できるようになった。加えて、オペラウインドウや[[ランドールーフ]] ([[:en:Landau (automobile)]]) 等のオプションも全ての2ドアモデルで選択可能となった。但し、1976年式はスタイリングの変更は行われなかった。
 
1976年式はオプションエンジンは前年と同じ物が継続された。しかし、全てのエンジンで[[点火時期]]の変更と[[排気再循環|EGRバルブ]]の装着が行われた事で燃費が改善された。{{Auto CIDConvert|351|cuin|L|abbr=on}}・2バレルエンジンと{{Auto CIDConvert|400|cuin|L|abbr=on}}・2バレルエンジンは馬力とトルクの双方が増加し、逆に{{Auto CIDConvert|460|cuin|L|abbr=on}}・4バレルエンジンは若干性能が低下した。また、燃費向上の試みとして全モデルの標準の最終減速比が2.75:1とされた。
 
1975-1976年式グラン・トリノは[[:en:Spelling-Goldberg Productions]]製作の[[テレビドラマ]]、[[刑事スタスキー&ハッチ]]に'''赤いグラン・トリノ'''として登場し日本でも比較的高い知名度を持っていた。同作の[[プロデューサー]]は[[主人公]]が運転する為の派手で特殊な車両を必要としており、当時フォードが製作会社への車両の[[リース]]契約を結んでいた為に、最終的に明るい赤色の1975年式グラン・トリノ2ドアモデルが同作のパイロット版エピソードの為に選択された。製作会社は良くも悪くも普遍的な車であるトリノを非日常的な存在とする為に、大きな白色のベクトルストライプをボディサイドに描き、ホイールとタイヤも5連発[[マグナム]]型[[アルミホイール]]と大きなリアタイヤに交換、撮影の際車体に派手な挙動を発生させる為に[[エアサスペンション]]も追加された。同作は非常に大きな人気を博するようになり、ひいてはその影響で影の主役でもあるトリノの人気も向上する事になった。フォードは直接的にテレビ番組としての''刑事スタスキー&ハッチ''を支援する事はなかったものの、国民の視線が大きくトリノに向けられている事実に着目し、テレビドラマ仕様のレプリカバージョンを導入する事になった。
 
フォードは1976年春に、1,000台限定で''刑事スタスキー&ハッチ''仕様のトリノを製造した<ref>{{cite web|url=http://starskytorino.com/articles/maynard.html |title=Starsky & Hutch Gran Torino Update |publisher=Starskytorino.com |date=1999-09-11 |accessdate=2010-07-17}}</ref>。このレプリカ仕様は1976年3月にフォード・シカゴ工場で生産が開始された。この限定生産パッケージは基本的には特殊塗装を施すオプションであったが、これを選択する為にはデラックス・バンパー及びツートーンカラースポーツドアミラーの選択が必須であった。テレビドラマ仕様の5連発マグナム型アルミホイールはフォードからは提供されず、マグナム500ホイールが提供されるに留まった。ホイールオプションは必須では無かった為、レプリカ仕様の中にはノーマルホイールとホイールキャップが装着されて出荷されたものも存在した。フォードはレプリカ仕様を製作するに当たって、車体全体を一度白に塗装した上でベクトルストライプの形にマスキングを行い、1972年から1975年式まで及びテレビドラマ仕様でも使用されていたブライト・レッド(カラーコード2B)2B)を改めて重ね塗りする手法を採った。1976年式の市販車両には色調の異なる赤色が採用された為、ブライト・レッドは1976年式ではレプリカ仕様以外では選択する事が出来なくなった。フォードが生産したレプリカ仕様はテレビドラマ仕様に極めて近い仕上がりであったが、実際にはストライプの形状が若干異なり、テレビドラマのようには派手な挙動は行えなかった。レプリカ仕様のオーナーの多くは、車両購入後に5連発マグナム型アルミホイールとエアサスペンションを装着し、よりテレビドラマ仕様に近づける改造を施した。なお、レプリカ仕様は1976年式トリノの全てのオプションエンジンを選択可能であった。シートの色は黒か白に限定されていたものの、その他の全ての内装関係オプションを選択可能であった。フォードが生産した1976年式レプリカ仕様はSpelling-Goldberg社にオリジナルのテレビドラマ仕様のバックアップカーとして1台がリースされた。
 
1976年式の生産台数は193,096台で、1975年式よりも僅かに低下した<ref name="SC2">{{cite book | last = Flammang | first= James | first2= Ron |last2 = Kowalke | title = The Standard Catalog of American Cars 1976–1999 | publisher = Krause Publications | year = 1999 | isbn = 9780873417556}}</ref> そしてこの年がフォード・トリノの最後の生産年度となった。
 
==後継車種==
[[1977年]]、フォードはトリノの名称を廃止し、新たに[[フォード・LTD II]] ([[:en:Ford LTD II]]) の名称を与えて発売した。LTD IIはトリノのボディメタルをベースに、スタイリングを変更して開発された、実質的な後継車であった。また、トリノのシャーシは1977年から[[1979年]]に掛けてLTD II以外にも、[[マーキュリー・クーガー]] ([[:en:Mercury Cougar#1977–1979]]) やフォード・ランチェロ、[[フォード・サンダーバード]]で使用され続けた。
<gallery>
Image:Ford-LTD-II.jpg|事実上の1977年式トリノでもあったフォード・LTD II。
Image:Mercury Cougar (Les chauds vendredis '10).jpg|1977-1979年までのマーキュリー・クーガーもトリノの後継車の一つである。
Image:77-79 Ford Thunderbird.jpg|俗に'''トリノ・バーズ'''と呼ばれた1977-1979年までのフォード・サンダーバード。
</gallery>
 
== NASCAR参戦車両 ==
{{main|フォード・トリノ・タラデガ| エアロ・ウォーリア|:en:Aero Warriors}}
第1世代トリノのファストバック車のルーフラインは市販車両の状態でも十分空力特性に優れており、1968年から1969年に掛けての[[NASCAR]]における[[スーパースピードウェイ]] ([[:en:Oval_track_racing#Superspeedways]]) において支配的な強さを発揮した。1969年、[[ダッジ]]はトリノに対抗する為に[[ダッジ・チャージャー500]] ([[:en:Dodge Charger (B-body)#Charger 500]]) を投入、この車両はNASCARのオーバルトラックを走行する際の空力特性の改善に特化した特別な設計が行われていた。一方、フォードも同年の中型車ラインナップにトリノをベースにした特別な高性能車両である[[フォード・トリノ・タラデガ]]を追加した。この限定車両はNASCARを走る為だけに特化した設計が行われており、特に空力性能の改善に重点が置かれていた。
 
[[File:DickTrickle1968Torino.jpg|thumb|right|1968年式トリノ・NASCAR参戦車両([[:en:Dick Trickle]]車)。空力に優れたスポーツルーフ車が多用された。]]
 
トリノ・タラデガは全長を{{convert|5|in|mm|0}} 延長し独自のフロントフェイスが装着された。フォードのエンジニアはフロントエンドを延長すると共に、ボディ先端に向かってテーパー形状を描く事で空気抵抗を減少させた。市販車両では大きな凹面を持っていたフロントグリルも、フロントフェイスに合わせた平滑な形状の物に変更された。ボディ側面下部のロッカーパネルもNASCARの規定に合致する範囲でより地面に近くなるように{{convert|5|in|mm|0}} 延長された。
 
トリノ・タラデガはスポーツルーフ車のみがラインナップされ、車体色はウィンブルドン・ホワイト、ロイヤル・マルーン、プレジデンタル・ブルーの3色が用意された。全ての車体色でつや消しブラックのボンネットと、専用のベルトストライプが貼付された。トリノ・タラデガには標準で{{Auto CIDConvert|429|cuin|L|abbr=on}} コブラジェット(ラムエアー無し版)と、C-6型3速AT、staggered配置のリアショック(市販車両では4速MT車のみの装備であった)、3.25:1のオープンデフが装備された。また、内装には布・ビニール張りのベンチシートが用いられ、車体コードは1969年式コブラと同様にフェアレーン500と同じコードが使用された。トリノ・タラデガは車体色以外の一切のオプションが用意されず、販売台数は僅か743台であった<ref name="Talla ">{{cite web|url=http://www.fordfairlane.com/t-story.html|title=Fairlane Registry - 1969 Ford Torino Talladega|accessdate=2007-03-20}}</ref>
 
トリノ・タラデガはNASCARにおいてフォードに多くの栄光をもたらした。これに触発されたダッジとプリムスは、より急進的な空力設計を持つ[[ダッジ・チャージャー・デイトナ]] ([[:en:Dodge_Charger_Daytona]]) を1969年シーズンに投入、更に巨大な''ゴールポスト''リアウイングやノーズコーンを持つ[[プリムス・スーパーバード]] ([[:en:Plymouth Superbird]]) を1970年シーズンにそれぞれ投入した。フォードは1970年シーズン中を目処により空力特性に優れた車両の開発を目指したが、その間は多くのフォード系チームは空力的に後れを取る1969年型トリノ・タラデガで1970年シーズンを戦い続けなければならなかった<ref>{{cite web|author=Auto Editors of ''Consumer Guide'' |url=http://musclecars.howstuffworks.com/classic-muscle-cars/1970-ford-king-cobra.htm |title=1970 Ford King Cobra |publisher=howstuffworks.com |date=2007-01-11 |accessdate=2010-11-28}}</ref>
 
フォードはNASCARでの支配的な地位を取り戻す為、再びトリノをベースに特別な高性能車両を製作する事を計画した。その車両は1970年式をベースに設計、1970年モデルイヤー中での市販が企画され、名称は'''フォード・トリノ・キングコブラ'''とされた。トリノ・キングコブラはトリノ・タラデガと同様に空力特性の最適化を念頭に置いた設計が行われ、1970年式トリノの市販車両とは全く異なる外観が与えられた。フロントフェイスは先端に行く程鋭く尖った形状となり、ヘッドライトは2灯式が採用され、フロントフェンダー先端に[[ディッシャー|シュガースコップ]]様の窪みに埋め込まれるデザインとなった。その外観は1969年発売の[[日産・フェアレディZ|ダットサン・240Z]] ([[:en:Nissan_S30#240Z]]) と非常によく似たもの<ref>[http://musclecars.howstuffworks.com/classic-muscle-cars/1970-ford-king-cobra.htm "1970 Ford King Cobra: A Profile of a Muscle Car"] - HowStuffWorks</ref>となった。トリノ・キングコブラのフロントグリルはフロントバンパー下の巨大な開口部であり、近代的な自動車で用いられる[[ボトムブリーザー]] ([[:en:bottom breather]]) と同じ概念が用いられている。パーキングランプはヘッドランプの内側に埋め込まれるように配置され、ボンネットは中央部付近のみ黒く塗装された。また、フロントフェンダーからリアクォーターパネルに掛けて、1968-69年式トリノGTと同じサイドストライプが貼付された。フォードは更に空力を改善する為に、NASCAR参戦チームに対してはヘッドライトカバーも提供する予定であった。
 
しかし、NASCARは[[ホモロゲーション]]の変更を行い、予選参加に必要な市販台数を最低500台から最低3000台にまで引き上げた。これにより、フォードはトリノ・キングコブラの市販計画を断念した。トリノ・キングコブラはNASCARでのテスト用とショウルーム展示用を含んだ3台のプロトタイプが製造されたのみであった。1台は''Boss 429 [[フォード・マスタング|マスタング]]''と同じ[[:en:Ford 385 engine|フォード・429 ''Boss''エダーェットV8#429ボスV8|429ボスV8]]が搭載され、残りの2台にはそれぞれ429 SCJと429 CJエンジンが搭載された<ref name="MCC">{{citeCite web|url=http://www.myclassiccar.com/MCCTV/2004Season/9007/torino.shtml|title=1970 Ford Torino King Cobra|first=Keith |last=Fudge|accessdate=2007-03-20 |archiveurl = httphttps://web.archive.org/web/20061118170041/http://www.myclassiccar.com/MCCTV/2004Season/9007/torino.shtml <!-- Bot retrieved archive--> |archivedate = 2006-11-18|url-status=dead|url-status-date=2017-09}}</ref>
 
トリノ・キングコブラの計画断念後、NASCARのエアロカー戦争はプリムス・スーパーバードが制する事となった。しかし、スーパーバードの栄光も長くは続かなかった。NASCARは1970年シーズン後の台数規定の変更に続き、1971年シーズン前には'''参戦車両は原則として市販車両と同一形状である事'''を要求する新たなレギュレーションを策定し、トリノ・タラデガから始まったエアロ・ウォーリアの時代は完全に幕を下ろす事となる。
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== エンジンスペック ==
各年式のフォード・トリノの詳細なエンジンスペックについては、現状では下記の英語版を参照されたい。
{{Main|:en:Ford Torino Engine Specifications}}
 
== アメリカでの人気 ==
アメリカの旧車マーケットに於いては今日でも[[マッスルカー]]は人気を博しているが、フォード・トリノに関しては他の多くの車両のように必ずしも販売当時からマッスルカーとしての評価を受けていた訳ではなかった。1960年代から1970年代に掛けてトリノは確かに人気の車種ではあったが、それは大衆車としての人気であり、今日の[[コレクター]]のコレクション対象としての人気は他の車種には到底及ばない物であった。今日、ほぼ同じ維持・整備状態のフォード・トリノに比較して、[[シボレー・シェベル]]や[[プリムス・ロードランナー]]の方が遙かに高い人気と価格を有している。また、フォード愛好家の間ではマスタングやサンダーバード、或いはその他のフルサイズ車がより注視されがちだった事もあり、フォード・トリノは半ば忘れられつつあった車種でもあった。
また、フォード愛好家の間ではマスタングやサンダーバード、或いはその他のフルサイズ車がより注視されがちだった事もあり、フォード・トリノは半ば忘れられつつあった車種でもあった。
 
今日においてコレクタブルな価値を持つトリノは幾つかの種類に限定されている。1970-71年式トリノ・コブラ、1969年式トリノ・タラデガ、1970年式トリノ・キングコブラ、1968-71年式トリノGT・コンーチブル、そして1969年式コブラが蒐集対象として価値があるマッスルカーとして認識されている。その他の1970年代のトリノ、とりわけ第3世代はそれまではそれ程大きな価値を持つとは認識されていなかったが、ここ10年程の間に幾つかの事象により重要な価値を持つと認識されるようになったものも存在する。一つは1972年式グラン・トリノであり、2008年の映画[[グラン・トリノ]]における[[クリント・イーストウッド]]([[1976年]]の映画『[[ダーティハリー3]]』でも女性刑事を乗せる場面がある)が駆る1972年式グラン・トリノ・スポーツや、翌[[2009年]]の[[ワイルド・スピード MAX]]での活躍により注目を集めている。1974-76年式は1970年代のテレビドラマである[[刑事スタスキー&ハッチ]]によって一定の知名度が存在したが、2004年に同作が''映画『[[スタスキー&ハッチ'']]』として[[バルク]]された事で同年式の価格全体を押し上げる結果となった。それでも、同年式の殆どの車体は特別な価値を持つ程には至ってはいないのだが、長年の同作のファンにとっては1976年式のフォード謹製のレプリカ仕様の存在は[[投資]]に値するだけの価値を有すると認識されている<ref>{{cite web|url=http://starskytorino.com |title=Starsky and Hutch Torinos |publisher=Starskytorino.com |date= |accessdate=2010-07-17}}</ref>
 
以上のような要素がありながらも、トリノは[[クラシックカー]]イベントやマッスルカーイベントでは依然として比較的稀な存在であり続けている。単なる人気や知名度の不足と共以上に、今日における現存するトリノの割合が低い理由として、トリノ特有の耐久性の問題がげられる。トリノはシャーシやボディ防錆耐性に深刻な問題を抱えている記録が残っており、厳冬期に道路上に[[融雪剤]]が散布される地域に於いては、トリノは新車購入後最初の5年以内に重度の錆が発生したと報告された。更に腐食問題を深刻化される要素として、1969年から1973年式までのトリノにおける重度のボディ塗装剥離問題も報告されていた。これらの結果により、1970年代における中型車の中古車市場に於いてはトリノは常に最低位のリセールバリューしか与えられなかった<ref>{{cite book | last = Edmonston | first= Louis-Philippe | title = Canadian Used Car Guide| publisher = Musson Book Company |year = 1976 | isbn = 9780773710115}}</ref>。
 
== 脚注・注釈 ==
'''脚注'''
{{reflist}}
<references />
'''注釈'''
<references group="注釈"/>
 
== 関連項目 ==
593行目:
* [[マーキュリー・クーガー]] - [[:en:Mercury Cougar]]
* [[マーキュリー・サイクロン]] - [[:en:Mercury Cyclone]]
* [[マーキュリー・モンゴ]] - [[:en:Mercury Montego]]
* [[スタスキー&ハッチ]]
* [[グラン・トリノ]] - 2008年の[[クリント・イーストウッド]]主演映画
637行目:
*[http://www.turbinecar.com/tires.htm Tire Size Helper]
 
*{{dmozCurlie|Recreation/Autos/Makes_and_Models/Ford/Torino}}
 
{{デフォルトソート:とりの}}
[[Category:フォードの車種]]
 
[[Category:フォードの車種|とりの]]
[[de:Ford Torino]]
[[es:Ford Torino]]
[[en:Ford Torino]]
[[fr:Ford Torino]]
[[it:Ford Torino]]
[[lt:Ford Torino]]
[[pl:Ford Torino]]
[[pt:Ford Torino]]
[[sco:Ford Torino]]
[[fi:Ford Torino]]
[[sv:Ford Torino]]