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{{出典の明記|date=2013年3月4日 (月) 18:53 (UTC)}}
[[File:Jonathan Livingston Seagull.jpg|thumb|right|200px|]]
『'''かもめのジョナサン'''』(''Jonathan Livingston Seagull'')は、[[リチャード・バック]]による[[小説]]。[[寓話]]的作品。[[1970年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で出版され、最初は当時のアメリカの[[ヒッピー]]文化とあいまって[[口コミ]]で徐々に広がり、1972年6月以降に大ヒットした。1970年の初版の英語タイトルは「Jonathan Livingston Seagull — a story.」。{{仮リンク|ラッセル・マンソン|en|Russell Munson}}によるカモメの写真が随所に挿入されている。全3部構成で出版されていた<ref name="asahi_digital" />
 
[[1970年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で出版され、最初は当時のアメリカの[[ヒッピー]]文化とあいまって[[口コミ]]で徐々に広がり、1972年6月以降に大ヒットし、同年後半に[[:en:The New York Times Best Seller list|The New York Times Best Seller listニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト]]の1位となり、38週もの間 1位を保ちつづけた。1972年と1973年の『[[パブリッシャーズ・ウィークリー]]』誌の全米週間ベストセラーリスト・小説部門([[:en:Publishers Weekly list of bestselling novels in the United States in the 1970s|Publishers Weekly list of bestselling novels in the United States英語版]]でも1位。1973年には当作品を原作とする映画が制作された。1974年10月時点(映画が日本で公開された時点)で、米国では『[[風と共に去りぬ]]』を抜いて<ref name="panphlet">映画の日本公開時の劇場用パンフレットの記述より。</ref>1500万部の[[ベストセラー]]になった。2014年時点で世界で4千4000万部売れている[[ベストセラー]]<ref name="asahi_digital">編集委員・吉村千彰 [https://web.archive.org/web/20140820130858/http://www.asahi.com/articles/ASG6R6VDLG6RULZU00W.html?iref=comtop_6_04 「かもめのジョナサン、4040年経て完成版 五木寛之さん訳」] 朝日新聞デジタル2014年6月27日] </ref>。
 
日本では[[1974年]]6月20日に[[新潮社]]より[[五木寛之]]の訳(下訳はのち東大教授となる[[國重純二]])で出版され、(当時)120万部のベストセラーとなり<ref name="panphlet"/>、その後も読まれ続けており2014年時点で270万部を超える[[ロングセラー]]<ref name="asahi_digital" />。が、1974年版のあとがきにも書いている通り、五木はこの作品には当初から違和感を覚えている。{{see also|五木寛之#人物}}
 
1970年の初版の英語タイトルは「Jonathan Livingston Seagull — a story.」。{{仮リンク|ラッセル・マンソン|en|Russel Munson}}によるカモメの写真(比較的シンプルな写真からアーティスティックな加工写真 まで様々)が随所に挿入されている。全3部構成で出版されていた<ref name="asahi_digital" />。だが、(人々には全然知らされていなかったのだが)もともと全4部の作品を書いていたのであり、何らかの理由により第4部を封印して世に出していたのだ、という<ref name="asahi_digital" />。2012年8月、作者が小型飛行機の操縦中に墜落事故をおこし瀕死の重傷を負う<ref> http://www.cnn.co.jp/usa/35021229.html</ref>。その際いろいろ想う所があったらしく、2014年2月、34年前に封印していた幻の第4部を含めた「完全版」を[[電子書籍]]形式で発表することになる。日本ではこれを「かもめのジョナサン完成版」と題し、同年7月に紙の書籍で発売。出版社/第4章の訳者は従来と同じく新潮社/五木寛之。(ただし「完成版」では五木訳は“ 創訳 ”として記載されている)
 
キリスト教の異端的潮流[[ニューソート]]の思想が反映されていると指摘されており<ref name="バロソ"/>、[[禅]]の影響を受けてい感じるとも言われる<ref name="asahi_digital" />と指摘される作品であり、読者たちを[[精神世界]]の探究、宗教的な探究などへといざない、[[自己啓発]]などへとのようにも読まれてざなったる<ref name="asahi_digital" />
 
2012年8月、作者は小型飛行機の操縦中に墜落事故をおこし重傷を負った<ref> https://www.cnn.co.jp/usa/35021229.html</ref>。その際いろいろ想う所があったらしく、元々全4部の作品として書いていたが第4部を封印して世に出していたのだ、と語り<ref name="asahi_digital" />、2014年2月、44年前に封印していたという幻の第4部を含めた「完全版」を[[電子書籍]]形式で発表した。日本ではこれを「かもめのジョナサン完成版」と題し、同年7月に<ref>紙の本の発行年月日は「2014年6月30日」。</ref>紙の書籍で発売された。出版社/第4章の訳者は従来と同じく新潮社/五木寛之。(ただし「完成版」では五木訳は“ 創訳 ”として記載されている。)
 
== あらすじ ==
;第1
主人公の[[カモメ]]ジョナサン・リヴィングストンは、他のカモメたちが餌をるためにしか飛ばないのに対して、[[飛行|飛ぶという行為]]自体に価値を見出す。そしてどこまで低速で飛べるか試してみたり、どれほど低空を飛べるか試した。ジョナサンは食事をするのも忘れて飛行の探究にんだものだからために、「骨と羽根だけ」の状態になっていた。あきれて注意する母に、彼は、自分が空でできることなにか何で、できないことは何かを知りたいのだと説明した。またさらに、時速数百kmという高速で飛ぶことを探究するために、高高度から急降下する危険な練習を重ねた。だが、それらの奇行を見とがめられ[[精神疾患|変わり者]]扱いされ、ある日のこと、群れの「評議集会」に呼び出され、長老から"無責任"などと決めつけられ、カモメはただ餌を食べ可能な限り長生きするために生まれてきたのだ、などと言われる。そこで、ジョナサンは、[[人生の意味|生きることの意味]]やより高い目的を発見するカモメこそ責任感があるのだ、と群れのカモメたちに説明考えを伝えようとするのだが、理解されず群れ社会から追放されてしまう。追放されて一羽になっても速く飛ぶための訓練をやめないジョナサンの前に、2羽の光り輝くカモメが現れ、より高次なる世界へと導いて行く。
 
;第2部以降
「目覚めたカモメたち」の世界のなかでジョナサンはより高度な飛行術を身にたすえ、[[長老]]チャンから「[[瞬間移動]]」を伝授されることになる。そしてある日、弟子を連れて下界に降り、カモメの人生は飛ぶことにあるという「思想」を下界のカモメに広めようと試みるが、下界のカモメからは悪魔と恐れられるようになるなど[[トリックスター]]の側面を醸し出していく
そしてある時ジョナサンは自由を求めて弟子たちからも離れ、それから数年の歳月が流れた。若いカモメたちの間ではジョナサンは「伝説のカモメ」として神格化され、ジョナサンの言葉、仕草、目は何色だったかなど、些細なことを知りたがり崇めるようになるが、一方で直接ジョナサンから学んだ弟子たちは、そのようなことに夢中になってジョナサンの教えの神髄たる「真に飛ぶことを求める」訓練や努力をおろそかにする若いカモメたちに懐疑的になる。そしてジョナサンの弟子たちもいなくなると全ては形骸化した儀式と化し、儀式とその解釈に多くの時間を費やすようになり、飛行技術の追求は完全に忘れ去られていく。若いカモメのアンソニーはそんな風潮に対して「あの偉大なジョナサンはずっと昔にだれかがでっちあげた神話にすぎない」と嘆く。そして深い疎外感や悲しみに囚われたアンソニーが投身自殺を図った時、彼の前に現れたのは…。
{{節スタブ}}
 
== 映画化 ==
{{Main|かもめのジョナサン (映画)}}
[[1973年]]に[[ホール・バートレット]]監督によって映画化された。原作同様に人間は登場せず、バードトレーナー調教するカモメたちが登場キャラクターを演じる。ヘリコプター撮影による雄大な空撮映像に、シンガー・ソングライターの[[ニール・ダイアモンド]]が劇中歌を付け加えており、原作とはまた一味違う詩情を持ったシネポエムとなっている。
 
[[Image:Jonathan Livingston Seagull figure.jpg|thumb|300px|right|餌をとるためにしか飛ばないカモメの群れと、純粋に飛ぶことを追するカモメ。本作品における主題イメージ。]]
 
== 宗教的解釈 ==
[[尚美学園大学]]のイザベル・バロソは、キリスト教の異端的潮流[[ニューソート]]の思想が反映されていると評している<ref name="バロソ">イザベル・バロソ「[https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001338458006016 神話理論の新定義に向けて Towards a New Definition of Myth]」 尚美学園大学総合政策研究紀要 = Bulletin of policy and management, Shobi University 19, 81-95, 2010-09-30, 尚美学園大学総合政策学部</ref>。禅の影響を感じるという声もある<ref name="asahi_digital" />。
物語後半からは、ジョナサンが思いもよらない非凡な訓練によって通常カモメの飛行能力を遥かに超えた能力を身に付けていくが、それらはすでに物理飛行の次元を超えていく。さらには岩盤に激突したカモメを生き返らせる場面も登場するなど日常世界から遠くかけ離れた境地の世界が描かれている。<ref>ジョナサンが下界に戻るところなどは[[禅]]の[[十牛図]]の影響を受けているものと解釈する者もいる{{要出典|date=2013年3月}}。</ref>
 
物語後半から、ジョナサン思いもよらない非凡な訓練によって通常カモメの飛行能力を遥かに超えた能力を身に付けていくが、それらはすでに物理飛行の次元を超えていく。さらには岩盤に激突したカモメを生き返らせる場面も登場するなど日常世界から遠くかけ離れた境地の世界が描かれている。<ref>ジョナサンが下界に戻るところなどは[[禅]]の[[十牛図]]の影響を受けているものと解釈する者もいる{{要出典|date=2013年3月}}。</ref>
==社会的影響==
米国ではThomas Meehanによる"Marvin Stanley Pigeon"というタイトルの[[パロディ]]作品が登場した。
 
訳者の五木寛之は、追加された第4章を読んで[[法然]]を連想したという。
またパロディとして『[[にわとりのジョナサン]]』(ワインスタイン&アルブレヒト)が書かれた。こちらは五木に対抗して[[青島幸男]]が翻訳し、それなりに売れた。
 
== 社会的影響 ==
日本では以下のようななぞなぞが流行した。
*米国ではThomas Meehanによる"Marvin Stanley Pigeon"というタイトルの[[パロディ]]作品が登場した。またパロディとしてソル・ワインスタインとハワード・アルブレヒトによる『[[にわとりのジョナサン]]』(ワインスタイン&アルブレヒト)"Jonathan Segal Chicken") が書かれた。こちらは五木に対抗して[[青島幸男]]が翻訳し、それなりに売れた。
:問・カモメが百羽います。一羽はカモメのジョナサン、では残りは?
*日本では[[1975年]]頃に以下のような[[なぞなぞ]]が流行した(当時の日本では、このようなバカバカしいクイズが大ブームとなり、「[[ナンセンス・クイズ]]」と呼称された)。
:答・カモメのミナサン。
{{Quotation|
<ref>便乗して、1975年5月、放送作家の[[奥山コーシン|奥山侊伸]]がこのなぞなぞの回答「かもめのミナサン」そのままタイトルにしたエッセイ集を[[学研ホールディングス|立風書房]]から出版した。</ref>
:問カモメが100飛んでます1カモメのジョナサンという。では残りの99羽をなんというか?
:答:カモメのみなさん。<ref>「なぞなぞブーム」『[[世界大百科事典|世界大百科年鑑]] 1975』[[平凡社]]、1975年、79頁。</ref>}}
<ref>便乗して、:また1975年5月、放送作家の[[奥山コーシン|奥山侊伸]]がこのなぞなぞの回答「かもめのミナサン」そのままタイトルにした』というエッセイ集を[[学研ホールディングス|立風書房]]から出版した。</ref>
*同時期にヒットした映画「[[トラック野郎]]」シリーズにも、主人公の相棒として本作をもじった「やもめのジョナサン」というキャラクター(演じているのは[[愛川欽也]])が登場した。なお、同タイトルながらまったく関係のない短編漫画「やもめのジョナサン」が、[[赤塚不二夫]]の『ギャグゲリラ』にも収録されている。
*[[村井秀夫]]は「かもめのジョナサン」の心境になったといってオウム真理教に入信した。
*[[手塚治虫]]の漫画「[[鳥人大系]]」には、この小説のパロディと思われる「カモメのジョンガラサン」というエピソードがある。これも他の多くのカモメたちから離れて自分の生き方を貫いた孤高のカモメの物語である。
*[[ABBA]]の曲「[[イーグル]]」(Eagle)は、この小説にインスパイアされて作成された。彼らの曲としては異色の、まるで[[交響曲]]のような壮大さを持つ曲である。
*[[栃木県]][[小山市]]にある[[白鷗大学]]の校名の由来となった<ref>[http://hakuoh.jp/about/about_05.html 白鴎の由来]</ref>。
 
== 日本語訳 ==
同時期にヒットした映画「[[トラック野郎]]」シリーズにも、主人公の相棒として本作をもじった「やもめのジョナサン」というキャラクター(演じているのは[[愛川欽也]])が登場した。なお、同タイトルながらまったく関係のない短編漫画「やもめのジョナサン」が、[[赤塚不二夫]]の『ギャグゲリラ』にも収録されている。
* [[五木寛之]]訳。新潮社、1974年、完成版2014年。新潮文庫、1981年、改版2015年。下訳は[[國重純二]]
*『かもめのジョナサン写真集』写真: ホール・バートレット サン企画 1975年
 
[[村井秀夫]]は「かもめのジョナサン」の心境になったといってオウム真理教に入信した。
 
==日本語訳==
* [[五木寛之]]訳 新潮社、1974年 のち文庫 (「完成版」は2014年)
*『かもめのジョナサン写真集』写真: ホール・バートレット サン企画 1975年
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<div class="references-small"><references /></div>
 
==関連項目==
* [[阿阪三郎]] - 退官講演会にて[[空気力学]]の観点からジョナサンの飛行術を分析した、[[楠川絢一]]が加筆してまとめたものが[[CiNii]]に公開されている<ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/110002074217 かもめのジョナサンの夢]</ref>。
 
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:かもめのしよなさん}}
[[Category:アメリカ合衆国の小説]]
[[Category:19731970年の小説]]
[[Category:動物文学]]
[[Category:鳥を主人公にした物語]]
[[Category:鳥を題材とした小説]]
 
[[Category:カモメを題材とした作品]]
[[Category:自己啓発書]]
[[Category:スピリチュアリティに関する文書]]
[[Category:ニューソート]]
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