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{{出典の明記|date=2013年8月30日 (金) 06:14 (UTC)}}
[[画像:Axial compressor.gif|right|thumb|300px|軸流式圧縮機のアニメーション。静止している部分は静翼]]
'''軸流式圧縮機'''(じくりゅうしきあっしゅくき、[[:{{lang-en:Axial compressor|Axial compressor]]}})とは、[[流体機械]]である[[圧縮機]]の一種で、ターボ圧縮機に分類される。回転翼の前後に生じる圧力差を利用し、気体を連続的に圧縮する装置。'''軸流コンプレッサ'''('''ー''')とも呼ばれる。
 
== 特徴 ==
同目的の[[遠心式圧縮機]]に比べ、小径の割に大きな[[流量]]を扱え、高圧縮率かつ高効率が期待できるが、構造の複雑化に伴って部品点数が増大し、必然的に高価になる。航空用ガスタービン([[ジェットエンジン]])の他に、[[高速船]]や[[発電機]]等の[[ガスタービンエンジン]]を始め、気流分離装置、[[集塵機]]、[[真空ポンプ]]、[[風洞]]、プロパン(天然ガス)酸化脱水素装置、パイプライン圧送装置等の産業用途にも多用されている。
 
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動翼と静翼の1列ずつを、まとめて段(ステージ)と呼ぶ。圧縮機に流入した気体は、各段を通過するに従い[[断熱圧縮]]されていく。流れはローターで若干偏向し旋回するが、ステーターはこれを整流する働きも担う。ひとつの段で得られる圧縮比は遠心式圧縮機に比べると小さく、現実の圧縮機は複数の段を連ねて構成される。軸流式圧縮機の直後に遠心式圧縮機を組み合わせた形式も存在する。圧縮機は形式と段数を組み合わせて、「軸流6段」であるとか「軸流3段・遠心1段」などと表記されることがある。
 
ジェットエンジンの動翼は熱膨張を考慮し、ある程度の機械的な遊びを許容する[[ほぞ]]組みのような填め込み方で、一枚ずつディスクに取り付けられていることが多いが、設計法の進歩でディスクと一体成型された[[ブリスク]] (blisk, blade + disk) という形式のものも存在する。静翼はケーシングに固定されていることもあるが、流れに対する[[迎え角]]をある程度調節できるような可変静翼システム (VSV, variable stator vane) を備えたものもある。
 
材料としては、耐熱性・耐久性と軽量化を同時に求められるジェットエンジンの場合、ブレードには[[チタン#用途|チタニウム合金]]や[[ステンレス鋼]]などが、ディスクにはチタニウム合金などが、軸には[[高張力鋼]]などが用いられる。装置の破壊に繋がりかねない翼の[[フラッター現象|フラッター]]や熱振動(排気脈動)を避け、出力を安定させるため、各翼は通常装置全体が特定の周波数で共鳴しないように、固有共振周波数を選別し忌避すべき帯域内に群として公倍数を持たないよう設計され組み合わされる。
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== 軸流式ターボジェットエンジンの開発 ==
[[Image:Jet engine French.svg|400px|thumb|軸流式ターボジェットエンジンの構造]]
初期の軸流式圧縮機は低効率で、1920年代前半迄の通説はターボジェットエンジンへの適用に懐疑的だったが、1926年に英空軍省技官[[{{仮リンク|アラン・アーノルド・グリフィス]] ([[:|en:Alan Arnold Griffith|Alan Arnold Griffith]]) }}が従来使われていた平板な羽子板状の翼では流れが剥離し、[[失速]]してしまっていることを明らかにし、航空機同様の[[翼型]]を用いた軸流式ターボジェットエンジン理論を構築した。
 
[[第二次世界大戦]]勃発に伴い、航空機を格段に高速化するターボジェットエンジンの開発は各国で焦眉の急になった。基礎研究が進んでいた英では、1937年頃から[[蒸気タービン]]に経験を持つ[[メトロポリタン・ヴィッカース]] ([[:en:Metropolitan-Vickers|Metropolitan-Vickers, Metrovick]]) が積極的に取り組んだが難航し、グリフィスの部下[[フランク・ホイットル]] ([[:en:Frank Whittle|Frank Whittle]]) は大径で前面投影面積が広く、高出力化に伴い重量も肥大化する構造的弱点を承知の上で、簡素な[[遠心式圧縮機|遠心式ターボジェットエンジン]]が早期の戦力化に適すると主張し、理想主義を掲げる上官のグリフィスと鋭く対立して袂を分かった。
 
ホイットルのチームは公言通り遠心式ターボジェットエンジンをいち早く実用化するが、独では同時期に[[ハンス・フォン・オハイン]] ([[:en:Hans Joachim Pabst von Ohain|Hans Joachim Pabst von Ohain]]) が並行して開発を手掛けていたのみならず、更に複雑な軸流式ターボジェットの将来性に確信を抱いていた[[ドイツ航]]技官[[{{仮リンク|ヘルムート・シェルプ]] ([[:|en:Helmut Schelp|Helmut Schelp]]) }}らの後押しで [[BMW]] 、[[ユンカース]]が困難な技術的課題に挑んだ結果、後退翼を持つ革命的なジェット戦闘機 [[メッサーシュミット Me262|Me 262]] 等を世界に先駆けて実戦投入した。圧倒的優速の Me 262 は連合国側に多大な脅威を与えたが劣勢を挽回するには至らず、降と共に独の技術者は[[ペーパークリップ作戦]]等によって米ソが自国に招聘し、青天井の予算を積んで研究開発を続行させた。
 
東西[[冷戦]]は軍用[[ジェット機]]開発競争を激化させたが、1940年代末になると遠心式ターボジェットエンジンは上記の機械的限界が顕在化して性能向上の余地が無くなり、1950年代初頭以降は大半が軸流式ターボジェットエンジンで占められるようになった。遠心圧縮式は軸流圧縮式に比べ、小型化に適しており、運転領域が広いため、[[マイクロガスタービン]]や[[ホンダジェット]]の高圧圧縮機に採用されたり、[[ヘリコプター]]用の[[ターボシャフトエンジン]]には、遠心式や軸流式+遠心式の圧縮機が用いられている。
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[[画像:Compr.Assiale.jpg|thumb|300px|[[ロールス・ロイス オリンパス]] BOl.1の低圧部]]
 
航空機用ジェットエンジンは、高温かつ高大気圧で流速ゼロの条件下で始動し、低温低大気圧で高流速の高空まで、様々な高度と速度に適応する事が求められる。このため単に燃料流量を増減するだけでなく、[[エアインテーク|空気取入]]・排出面積を可変にしたり、途中の段から圧縮空気を一部抽気(ブリード)したり、可変静翼を調整するなどして、[[サージング]]と呼ばれる失速現象([[コンプレッサ・ストール]])を避けつつ、燃焼をコントロールして[[熱効率]]の向上をはかる。
 
高出力を得る為には圧縮機を高回転させるのが早道だが、全体を同じ大きな回転数で動かすと、回転半径(翼幅)の大きな初段付近のローターにおいて、翼端の対気速度が音速に近づくことによる効率の低下をもたらすなどの悪影響が生じる。逆に、回転数が小さいと後段において十分な圧縮が得られないといった問題がある。
 
初期のジェットエンジンは圧縮機と[[タービン]]を単一の軸でつないだだけの1軸 (single spool) 式であったが、[[:en:General Electricゼネラル・エレクトリック J79|GE J79]] を最後に、それぞれの低圧部と高圧部同士を同軸でつなぐがそれぞれ別々に回転する2軸 (twin spool) 式が主流になった(低圧部用の軸は高圧部用の軸の内部を通される)。ここから、低圧部を巨大化して噴流の多くを大気中に放出する[[ターボファンエンジン]]へと発展して、航空機の燃費と騒音は格段に改善された。
 
更に[[ロールス・ロイス]]は[[ロールス・ロイス RB211|RB211]]で3軸 (triple spool) 式の実用化に成功し、可変静翼を撤廃している。より一層の性能向上を意図して、ひとつの軸の回転方向を他の軸と逆向きにしたものも存在する([[ゼネラル・エレクトリック GEnx|GEnx]], [[ロールス・ロイス トレント|トレント 900]], 1000)。
 
{{航空機用ガスタービンエンジンの構成要素}}
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:しくりゆうしきあつしゆくき}}
[[Category:流体機械]]
[[Category:ジェットエンジン]]
[[Category:航空機の構成要素]]
 
[[en:Axial compressor]]
[[fr:Compresseur axial]]
[[it:Compressore assiale]]
[[vi:Máy nén khí dọc trục]]