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==歴史==
スペキュレイティブ・フィクションという単語の意味は、時代により、あるいは使用者により異なる場合がある。その理解にはこの単語の辿った経緯の理解が必要であり、誰が、何時、どのような文脈の中で使用されているのかを考慮しなければならない。
 
この語の起源は、SF作家[[ロバート・A・ハインライン]]に帰されることが多い。
ハインラインは[[1948年]]のエッセイ「On Writing of Speculative Fiction」で最初にこの語を使用した(より具体的にはサイエンス・フィクションの同義語として使用した)。
同文の後半で彼は、この語の示す範囲にファンタジーは含まれないと明確に述べている(ただし、単語の使用そのものとしてはハインラインに先立つ[[1889年]]、月刊誌『リッピンコット(Lippincott's Monthly Magazine)』に掲載された「Edward Bellamy's Looking Backward : 2000-1887」に先例がある)。
 
スペキュレイティブ・フィクションという語を従来のSFに対する不満の表明として使い始めたのは、[[1960年代]]から[[1970年代]]初期の[[ジュディス・メリル]]や他の作家、編集者たちによる「'''[[ニュー・ウェーブ (SF)|ニューウェーブ運動]]'''」であった(しかし1970年代半ばには既に使われなくなっていく)。彼らはそれまで主流であった大衆娯楽科学小説に哲学的、思弁的な要素を持ち込もうとし、この語を掲げた。しかしこちらの用法では1970年代半ばには既に使われなくなっていく。日本ではニュー・ウェーブに関連した作品の翻訳に伴い1980年代まで使用されていたが、その後は歴史的な用語となっていったのは同様である
 
いったんは忘れられたかに思われたスペキュレイティブ・フィクションは、[[2000年代]]になると特定のジャンルを包括的に示す便利な用語として、より広義に用いられるように変化する。スペキュレイティブ・フィクションに関する論説が、「エクストラポレーション(Extrapolation)」誌([[1959年]]創刊の[[アメリカ合衆国]]のSF評論誌。[[ケント州立大学]]より刊行)、「フェムスペック(Femspec)」誌(アメリカ合衆国の[[フェミニズム]]系スペキュレイティブ・フィクション専門誌)、「ファウンデーション(Foundation)」誌(イギリスの代表的なSF評論誌。[[ノースイーストロンドン工科大学]]より刊行)などを含む多くの学術誌で発表された。
 
一部の人々はこの語を、SFが本質的にもつ限界(と彼らが考えるもの)に対する不満を表明するために用いた。例えば、スペキュレイティブ・フィクションに肯定的なSF作家[[ハーラン・エリスン]]は、この語は、「ただのSF(作家)」と呼ばれたくないという願い、SFの大衆性や娯楽性から抜け出したいという望み、また、メインストリームの批評家たちがしばしば言及する「SFに対する偏見」からの逃避、などに対するシグナルである、と書いている。だが一方、この語をSFそのものへの侮辱、少なくとも否定的なニュアンスを含んだ表現であると見なしている読者やSF作家も存在する。