スペキュレイティブ・フィクション

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スペキュレイティブ・フィクション (Speculative fiction) とは、さまざまな点で現実世界と異なった世界を推測、追求して執筆された小説などの作品を指す語。フィクションの複数のジャンルにまたがって使用される。

発生当初は、「サイエンス・フィクションは大衆的で浅薄である」という偏見に対抗する意味も込めて、空想科学小説に哲学的要素を持ち込んだものを指していたため、日本語では思弁小説(しべんしょうせつ)、思弁的小説と訳された。スペキュレイティ・フィクションの表記もある。

一般に、サイエンス・フィクション、ファンタジーホラースーパーヒーローもの、ユートピア/ディストピアもの、破滅もの、仮想歴史もの、マジックリアリズムの小説群などが含まれる。

スペキュレイティブ・フィクションの略語としては「spec-fic」「specfic」「S-F」「SF」「sf」などの表記が用いられる(最後の3つは、サイエンス・フィクションの略語としても用いられるため、混乱を招くこともある)。

歴史

この語の起源は、SF作家ロバート・A・ハインラインに帰されることが多い。 ハインラインは1948年のエッセイ「On Writing of Speculative Fiction」で最初にこの語を使用した(より具体的にはサイエンス・フィクションの同義語として使用した)。 同文の後半で彼は、この語の示す範囲にファンタジーは含まれないと明確に述べている(ただし、単語の使用そのものとしてはハインラインに先立つ1889年、月刊誌『リッピンコット(Lippincott's Monthly Magazine)』に掲載された「Edward Bellamy's Looking Backward : 2000-1887」に先例がある)。

スペキュレイティブ・フィクションという語を従来のSFに対する不満の表明として使い始めたのは、1960年代から1970年代初期のジュディス・メリルや他の作家、編集者たちによる「ニューウェーブ運動」であった(しかし1970年代半ばには既に使われなくなっていく)。彼らはそれまで主流であった大衆娯楽科学小説に哲学的、思弁的な要素を持ち込もうとし、この語を掲げた。

いったんは忘れられたかに思われたスペキュレイティブ・フィクションは、2000年代になると特定のジャンルを包括的に示す便利な用語として、より広義に用いられるようになる。スペキュレイティブ・フィクションに関する論説が、「エクストラポレーション(Extrapolation)」誌(1959年創刊のアメリカ合衆国のSF評論誌。ケント州立大学より刊行)、「フェムスペック(Femspec)」誌(アメリカ合衆国のフェミニズム系スペキュレイティブ・フィクション専門誌)、「ファウンデーション(Foundation)」誌(イギリスの代表的なSF評論誌。ノースイーストロンドン工科大学より刊行)などを含む多くの学術誌で発表された。

一部の人々はこの語を、SFが本質的にもつ限界(と彼らが考えるもの)に対する不満を表明するために用いた。例えば、スペキュレイティブ・フィクションに肯定的なSF作家ハーラン・エリスンは、この語は、「ただのSF(作家)」と呼ばれたくないという願い、SFの大衆性や娯楽性から抜け出したいという望み、また、メインストリームの批評家たちがしばしば言及する「SFに対する偏見」からの逃避、などに対するシグナルである、と書いている。だが一方、この語をSFそのものへの侮辱、少なくとも否定的なニュアンスを含んだ表現であると見なしている読者やSF作家も存在する。

日本におけるスペキュレイティブ・フィクション


日本以外での有名な例

参考図書

外部リンク