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「カエサル (称号)」の版間の差分

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[[ファイル:Julius Caesar Coustou Louvre MR1798.jpg|thumb|right|ガイウス・ユリウス・カエサル]]
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'''カエサル'''(<small>[[古典ラテン語]]</small>:Caesar)は、ローマ帝国およびその継承国家で用いられた君主の称号([[君主号]]である。
'''カエサル'''({{lang-la|Caesar}})は、[[ローマ帝国]]およびその継承国家で用いられた[[君主号]]である。
==概要==
[[共和ローマ]]末期の[[終身独裁官]][[ガイウス・ユリウス・カエサル]]は、[[ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)|内戦]]での勝利を経て事実上の単独支配を確立し、[[ローマ帝国|帝政ローマ]]の礎を築いた。こを継承し実際に帝政([[プリンキパトゥス]])を開始したオクタウィアヌス([[アウグストゥス]])もまた、カエサル家の養子となっておりガイウス・ユリウス・カエサルに後継者として選ばれた後は「カエサル」の名はオクタウィアヌスの名でもあった。


帝政を確立したアウグストゥスは自分の後継者も養子としてカエサルの名を継がせており、[[ユリウス=クラウディウス朝]]の皇帝たちは皆、カエサルの家族名を持っていた。このため「カエサル」は皇帝の家族名であると同時に徐々に皇帝そのものを指す一般名詞としても機能するようになっていった。[[イエス・キリスト]]が語ったとされる言葉「[[カエサルのものはカエサルに]]」はこうした用法の例といえ、ここでの「カエサル」は具体的には当時の[[ティベリウス]]帝を指しているものの、もっと広い意味でローマ皇帝=ローマ帝国一般を指しているとも取ることができる。
共和政末期の[[共和制ローマ|ローマ]]の[[終身独裁官]][[ガイウス・ユリウス・カエサル]]は、[[ローマ内戦 (紀元前49年-紀元前45年)|内戦]]での勝利を経て事実上の単独支配を確立し、以降の[[ローマ帝国|帝政]]の礎を作った。この基礎を継承し実際に帝政(元首政、[[プリンキパトゥス]])を開始したオクタウィアヌス([[アウグストゥス]])もまた、カエサル家の養子となっておりガイウス・ユリウス・カエサルに後継者として指名された後は「カエサル」の名はオクタウィアヌスの名でもあった。


確立したアウグストゥスは自分の後継者も養子としてカエサルの名を継がせており[[ユリウスクラウディウス朝]]の皇帝たちは皆、カエサルの家族を持ていのため「カエサル」は皇帝の家族名である同時に徐々に皇帝そのものを指す一般名詞としても機能するようになっていった。[[イエス・キリスト]]が語っとされる言葉「カエサルものはカエサルに」はこうした用法例とい、ここでの「カエサル」は具体的には当時の[[ティベリウス]]帝指しているものの、もと広い意味でローマ皇帝=ローマ帝国一般を指しているともとることができる
こうした皇帝を指す一般名詞としての「カエサル用法は、ユリウスクラウディウス朝が断絶した後の皇帝たちカエサルったことから確立されていった。皇帝たちは自ら後継者にカエサルの名を与たため「カエサル」は次期元首意味すようにっていった


次期元首としてのカエサルの用法はローマ帝国後期(専制君主制、[[ドミナートゥス]])に入ると'''副帝'''をす称号として使われるようになり、'''正帝'''([[アウグストゥス (称号)|アウグストゥス]])を補佐する者として使われるようになった。[[東ローマ帝国|ビザンツ帝国]]でも当初は副帝を指す言葉([[ギリシア語]]では「カイサル」)だったが、11世紀後半の[[コムネノス王朝]]時代には[[セバストクラトル]][[デスポテース]]などの皇帝バシレウスの下位・カエサル(カイサル)より上位に位置づけられた[[爵位]]が多数新設さて、その中に埋没してしまった。
こうした皇帝を指す一般名詞としての「カエサル」の用法は、ユリウス・クラウディウス朝が断絶したあとの皇帝たちもカエサルを名乗ったことから確立されていった。また皇帝たちは自らの後継者にカエサルの名を与えたため「カエサル」は次期元首を意味するようにもなっていった。


このように「カエサル」の名はローマ皇帝を指す語として使われてきたため、ヨーロッパ各国では[[皇帝]]を意味する語として「カエサル」に由来する単語が使用されることも多い。代表的なものとして、[[ドイツ語]]の'''[[カイザー]]''' ({{lang|de|Kaiser}}) や[[ロシア語]]の'''[[ツァーリ]]''' ({{lang|ru|Царь}}, {{lang|ru-Latn|Tsar}}) がある。
次期元首としてのカエサルの用法はローマ帝国後期(専制君主制、[[ドミナートゥス]])に入ると'''副帝'''をあらわす称号として使われるようになり、'''正帝'''([[アウグストゥス (称号)|アウグストゥス]])を補佐する者として使われるようになった。[[東ローマ帝国]]でも当初は副帝を指す言葉([[ギリシア語]]では「カイサル」)だったが、時代を経るにつれて地位が低下し、11世紀後半の[[コムネノス王朝]]の頃には単なる[[爵位]]の名称になっていた(皇帝の継承候補者には[[専制公|デスポテース(専制公)]]という称号与えられた


イスラームの伝統的な歴史学においては、[[タバリー]]以前から初代ローマ皇帝アウグストゥス以来の歴代ローマ帝国皇帝やその後の[[西ローマ皇帝]]、[[東ローマ皇帝]]などを[[アラビア語]]で'''カイサル''' ({{lang|ar|قيصر}}, {{lang|ar-Latn|Qayṣar}}) と呼んでいた。東ローマ帝国を滅ぼした[[オスマン帝国]]では、[[オスマン語]](および[[トルコ語]])で'''カイセル''' ({{lang|tr|قيصر}}, {{lang|tr-Latn|Qayṣar/Kayser}}) と言い、主にローマ皇帝を表すものとして'''ルーム・カイセリ''' ({{lang|tr-Latn|Kayser-i-Rûm}}) という[[称号]]が用いられ、[[スレイマン1世]]などの一部の[[スルタン]]は東ローマの継承者であることを示すためにこの称号を用いた。
このように「カエサル」の名はローマ皇帝を指す語として使われてきたため、ヨーロッパ各国では[[皇帝]]を意味する語として「カエサル」に由来する単語が使用されることも多い。代表的なものとして、[[ドイツ語]]の[[カイザー (曖昧さ回避)|カイザー]] (Kaiser)や[[ロシア語]]の[[ツァーリ]] ({{lang|ru|Царь}}, Tsar)がある。

イスラームの伝統的な歴史学においては、[[タバリー]]以前から初代ローマ皇帝アウグストゥス以来の歴代ローマ帝国皇帝やその後の[[西ローマ皇帝]]、[[東ローマ皇帝]]などを[[アラビア語]]でカイサル ({{lang|ar|قيصر, Qayṣar}})と呼んでいた。東ローマ帝国を滅ぼした[[オスマン帝国]]では、[[オスマン語]](および[[トルコ語]])でカイセル ({{lang|tr|قيصر, Qayṣar/Kayser}})と言い、主にローマ皇帝を表すものとしてルーム・カイセリ (Kayser-i-Rûm)という[[称号]]が用いられ、[[スレイマン1世]]などの一部の[[スルタン]]は東ローマの継承者であることを示すためにこの称号を用いた。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[カエサル]]
*[[ガイウス・ユリウス・カエサル]]
*[[アウグストゥス]]
*[[アウグストゥス (称号)]]
*[[アウグストゥス (称号)]]



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2022年9月25日 (日) 04:57時点における最新版

ガイウス・ユリウス・カエサル

カエサルラテン語: Caesar)は、ローマ帝国およびその継承国家で用いられた君主号である。

概要

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共和政ローマ末期の終身独裁官ガイウス・ユリウス・カエサルは、内戦での勝利を経て事実上の単独支配を確立し、帝政ローマの礎を築いた。これを継承し、実際に帝政(プリンキパトゥス)を開始したオクタウィアヌス(アウグストゥス)もまた、カエサル家の養子となっておりガイウス・ユリウス・カエサルに後継者として選ばれた後は「カエサル」の名はオクタウィアヌスの名でもあった。

帝政を確立したアウグストゥスは自分の後継者も養子としてカエサルの名を継がせており、ユリウス=クラウディウス朝の皇帝たちは皆、カエサルの家族名を持っていた。このため「カエサル」は皇帝の家族名であると同時に徐々に皇帝そのものを指す一般名詞としても機能するようになっていった。イエス・キリストが語ったとされる言葉「カエサルのものはカエサルに」はこうした用法の例といえ、ここでの「カエサル」は具体的には当時のティベリウス帝を指しているものの、もっと広い意味でローマ皇帝=ローマ帝国一般を指しているとも取ることができる。

こうした皇帝を指す一般名詞としての「カエサル」の用法は、ユリウス=クラウディウス朝が断絶した後の皇帝たちもカエサルを名乗ったことから確立されていった。また皇帝たちは自らの後継者にカエサルの名を与えたため「カエサル」は次期元首を意味するようにもなっていった。

次期元首としてのカエサルの用法は、ローマ帝国後期(専制君主制、ドミナートゥス)に入ると副帝を表す称号として使われるようになり、正帝アウグストゥス)を補佐する者として使われるようになった。ビザンツ帝国でも当初は副帝を指す言葉(ギリシア語では「カイサル」)だったが、11世紀後半のコムネノス王朝時代には、セバストクラトルデスポテースなどの皇帝(バシレウス)の下位・カエサル(カイサル)より上位に位置づけられた爵位が多数新設されて、その中に埋没してしまった。

このように「カエサル」の名はローマ皇帝を指す語として使われてきたため、ヨーロッパ各国では皇帝を意味する語として「カエサル」に由来する単語が使用されることも多い。代表的なものとして、ドイツ語カイザー (Kaiser) やロシア語ツァーリ (Царь, Tsar) がある。

イスラームの伝統的な歴史学においては、タバリー以前から初代ローマ皇帝アウグストゥス以来の歴代ローマ帝国皇帝やその後の西ローマ皇帝東ローマ皇帝などをアラビア語カイサル (قيصر, Qayṣar) と呼んでいた。東ローマ帝国を滅ぼしたオスマン帝国では、オスマン語(およびトルコ語)でカイセル (قيصر, Qayṣar/Kayser) と言い、主にローマ皇帝を表すものとしてルーム・カイセリ (Kayser-i-Rûm) という称号が用いられ、スレイマン1世などの一部のスルタンは東ローマの継承者であることを示すためにこの称号を用いた。

関連項目

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