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'''ウバユリ'''(姥百合{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}、蕎麦葉貝母<ref>{{Cite web|和書|title=うばゆり {{!}} 言葉 {{!}} 漢字ペディア|url=https://www.kanjipedia.jp/kotoba/0001539800|website=www.kanjipedia.jp|accessdate=2021-08-18}}</ref>、[[学名]]: ''Cardiocrinum cordatum'')は[[ユリ科]][[ウバユリ属]]の[[多年草]]。山地の森林に多く自生する。ユリに似た花をつけるが、葉は大きく異なる。花が満開になる頃には葉が枯れてくる事が多いため、歯(葉)のない「姥」にたとえて名づけられた<ref name="ColJPNPlants3" />。地方による別名として、カバユリ、ネズミユリ、ウバヨロ、ヤマカブ、ヤブユリなどともよばれている{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。 |
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==分布と分類== |
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'''ウバユリ'''(姥百合、学名:''Cardiocrinum cordatum'')は[[ユリ科]][[ウバユリ属]]の[[多年草]]。山地の森林に多く自生する。 |
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日本の[[本州]]([[関東]]・[[中部地方]]以西)、[[四国]]、[[九州]]に分布する{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。山麓や谷間の草地や林内などの日陰にまばらな集団をつくる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。中部地方以北・樺太・千島には大型の変種[[オオウバユリ]]( ''C. cordatum'' var. ''glehnii'' )が分布する。 |
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== 形態・生態 == |
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関東地方以西~四国・九州に分布する。高さは60~100cm。茎は直立し、輪生状に多数の葉をつける。[[葉]]はユリ科としては珍しく幅広いハート形になる。地下には[[ユリ]]と同様の鱗茎([[球根]])をもつ。花期は7~8月。[[花]]はユリに似るが緑白色で細長い。 |
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開花年齢前の若い株には、地下に葉柄下部がふくらんだ卵形の[[鱗茎]]([[球根]])をもつ{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。鱗茎は若い株だけに生じる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。根は、茎の下部から多数出る。[[茎]]は直立して高さ1[[メートル]] (m) ぐらいに伸び{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}、茎の下部にかたまって輪生状に5 - 6枚の[[葉]]をつける。葉は、長さ15 - 25[[センチメートル]] (cm) の細長い心形で、網状の脈があり{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}、縦に巻いているものが次第に開く。若苗のころは、葉脈や葉縁が褐紫色になる特徴がある{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。葉には長い柄があり{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}、基部は太くなる。若い苗は根出葉だけだが、鱗茎が大きくなると、直立する茎の高さは50 - 100 cmほどまで伸びる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。茎は中空で無毛。花をつける頃になると元の鱗茎は無くなり、秋にかけて新しい鱗茎ができる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。 |
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花期は夏(7 - 8月ごろ){{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。茎の先端に[[テッポウユリ]]に似た横向きの[[花]]を2 - 4個つける{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。花は緑白色で、長さ12 - 17 cmの細長い花びらがやや不規則に並ぶ。花後は長さ4 - 5 cmで楕円形の果実をつける。扁平な種子には広い膜があり、長さ11 - 13[[ミリメートル]] (mm) の鈍3角形になる<ref name="ColJPNPlants3" /><ref name="WildFlowersMtofJP">{{Harvnb|畔上編著、菱山・西田著|1996|p=458}}</ref>。 |
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花が満開になる頃には葉が枯れてくる事が多いため、歯(葉)のない「姥」にたとえて名づけられた。 |
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File:Cardiocrinum cordatum yatsugatake2.jpg|全体。 |
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ファイル:Cardiocrinum cordatum yatsugatake.jpg|ウバユリの花。つぶれた筒状で開かない。 |
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File:Cardiocrinum cordatum 01.jpg|花序。まばらにつく。 |
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== 利用 == |
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ウバユリは関東地方以西に分布する。中部地方以北・樺太・千島には大型の変種オオウバユリ( ''C. cordatum'' var. ''glehnii'' )が分布する。同属は日本周辺から中国・ヒマラヤにかけて分布する。ヒマラヤ周辺原産の[[ヒマラヤウバユリ]](''C. giganteum'')は大型で花が美しく、栽培される。 |
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3 - 5月ごろの若芽は食用になり、[[おひたし]]や[[和え物]]にする{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。鱗茎は、冬(11 - 翌年1月ごろ)に枯れた茎葉を探して掘り採り、[[百合根]]と同じように鱗片をはがし、さっと茹でて和え物、[[煮物]]、きんとん、マヨネーズ和えなどにする{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。生のまま1片ずつ剥がして[[天ぷら]]や[[フライ (料理)|フライ]]にもできる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。茹でた鱗茎はソフトな舌触りで、クセや苦みはない{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。酒を加えて砂糖煮にすると[[デザート]]になる{{sfn|高野昭人監修 世界文化社編|2006|p=113}}。 |
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近縁種で、日本海側に分布する大形の[[オオウバユリ]]も食用となる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=101}}。 |
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[[画像:Cardiochrinum giganteum 01Hab China Sichuan Danyun Schlucht 16 06 04.jpg|thumb|left|200px|''Cardiocrinum giganteum'']] |
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== 脚注 == |
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<references /> |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書|author1=北村四郎|authorlink=北村四郎|author2=村田源|author3=小山鐵夫 |year=1964|title=原色日本植物図鑑 草本編|edition= 改訂46刷||volume=III|publisher=[[保育社]]|page=126|isbn=9784-586-30017-4|ref={{SfnRef|北村・村田・小山|1964}} }} |
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* {{Cite book|和書|author=高野昭人監修 世界文化社編|title=おいしく食べる 山菜・野草|publisher=[[世界文化社]]|series=別冊家庭画報|date=2006-04-20|ISBN=4-418-06111-8|page=113|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author=高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著|title=日本の山菜|publisher=[[学習研究社]]|series=フィールドベスト図鑑13|date=2003-04-01|isbn=4-05-401881-5|page=101|ref={{SfnRef|高橋秀男監修|2003}} }} |
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* {{Cite book|和書|author=畔上能力 編著、菱山忠三郎・西田尚道 著|date=1996-09|title=山に咲く花|series=山渓ハンディ図鑑|publisher=[[山と渓谷社]]|page=458|isbn=978-4-6350-7002-7|ref={{SfnRef|畔上編著、菱山・西田著|1996}} }} |
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2023年10月8日 (日) 12:55時点における最新版
ウバユリ | |||||||||||||||||||||
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Cardiocrinum cordatum
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Cardiocrinum cordatum (Thunb.) Makino (1913)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ウバユリ | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Heartleaf lily[3] |
ウバユリ(姥百合[4]、蕎麦葉貝母[5]、学名: Cardiocrinum cordatum)はユリ科ウバユリ属の多年草。山地の森林に多く自生する。ユリに似た花をつけるが、葉は大きく異なる。花が満開になる頃には葉が枯れてくる事が多いため、歯(葉)のない「姥」にたとえて名づけられた[3]。地方による別名として、カバユリ、ネズミユリ、ウバヨロ、ヤマカブ、ヤブユリなどともよばれている[6]。
分布と分類
[編集]日本の本州(関東・中部地方以西)、四国、九州に分布する[4]。山麓や谷間の草地や林内などの日陰にまばらな集団をつくる[4][6]。中部地方以北・樺太・千島には大型の変種オオウバユリ( C. cordatum var. glehnii )が分布する。
形態・生態
[編集]開花年齢前の若い株には、地下に葉柄下部がふくらんだ卵形の鱗茎(球根)をもつ[4]。鱗茎は若い株だけに生じる[4]。根は、茎の下部から多数出る。茎は直立して高さ1メートル (m) ぐらいに伸び[6]、茎の下部にかたまって輪生状に5 - 6枚の葉をつける。葉は、長さ15 - 25センチメートル (cm) の細長い心形で、網状の脈があり[4]、縦に巻いているものが次第に開く。若苗のころは、葉脈や葉縁が褐紫色になる特徴がある[6]。葉には長い柄があり[4]、基部は太くなる。若い苗は根出葉だけだが、鱗茎が大きくなると、直立する茎の高さは50 - 100 cmほどまで伸びる[4]。茎は中空で無毛。花をつける頃になると元の鱗茎は無くなり、秋にかけて新しい鱗茎ができる[4][6]。
花期は夏(7 - 8月ごろ)[4]。茎の先端にテッポウユリに似た横向きの花を2 - 4個つける[4]。花は緑白色で、長さ12 - 17 cmの細長い花びらがやや不規則に並ぶ。花後は長さ4 - 5 cmで楕円形の果実をつける。扁平な種子には広い膜があり、長さ11 - 13ミリメートル (mm) の鈍3角形になる[3][7]。
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全体。
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ウバユリの花。つぶれた筒状で開かない。
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花序。まばらにつく。
利用
[編集]3 - 5月ごろの若芽は食用になり、おひたしや和え物にする[4]。鱗茎は、冬(11 - 翌年1月ごろ)に枯れた茎葉を探して掘り採り、百合根と同じように鱗片をはがし、さっと茹でて和え物、煮物、きんとん、マヨネーズ和えなどにする[4][6]。生のまま1片ずつ剥がして天ぷらやフライにもできる[4][6]。茹でた鱗茎はソフトな舌触りで、クセや苦みはない[6]。酒を加えて砂糖煮にするとデザートになる[6]。
近縁種で、日本海側に分布する大形のオオウバユリも食用となる[4]。
脚注
[編集]- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cardiocrinum cordatum (Thunb.) Makino ウバユリ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月16日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Lilium cordatum (Thunb.) Koidz. ウバユリ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月16日閲覧。
- ^ a b c 北村・村田・小山 1964, p. 126
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 高橋秀男監修 2003, p. 101.
- ^ “うばゆり | 言葉 | 漢字ペディア”. www.kanjipedia.jp. 2021年8月18日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 113.
- ^ 畔上編著、菱山・西田著 1996, p. 458
参考文献
[編集]- 北村四郎、村田源、小山鐵夫『原色日本植物図鑑 草本編』 III(改訂46刷)、保育社、1964年、126頁。ISBN 9784-586-30017-4。
- 高野昭人監修 世界文化社編『おいしく食べる 山菜・野草』世界文化社〈別冊家庭画報〉、2006年4月20日、113頁。ISBN 4-418-06111-8。
- 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、101頁。ISBN 4-05-401881-5。
- 畔上能力 編著、菱山忠三郎・西田尚道 著『山に咲く花』山と渓谷社〈山渓ハンディ図鑑〉、1996年9月、458頁。ISBN 978-4-6350-7002-7。