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「猫と庄造と二人のをんな」の版間の差分

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{{Portal 文学}}
{{基礎情報 文学作品
|題名 = 猫と庄造と二人のをんな
『'''猫と庄造と二人のをんな'''』は、[[1936年]]に雑誌『[[改造 (雑誌)|改造]]』に発表された[[谷崎潤一郎]]の長編小説。
|訳題 = A Cat, A Man, and Two Women
|作者 = [[谷崎潤一郎]]
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|言語 = [[日本語]]
|ジャンル = [[長編小説]]
|発表形態 = 雑誌掲載
|初出 = 『[[改造 (雑誌)|改造]]』[[1936年]]1月号・7月号
|刊行の出版元 = [[創元社]]
|刊行の出版年月日 = [[1937年]]7月
|装幀 = [[安井曾太郎]](挿絵と兼務)
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『'''猫と庄造と二人のをんな'''』(ねことしょうぞうとふたりのおんな)は、[[谷崎潤一郎]]の[[長編小説]]。[[猫]]のリリーを中心に、2人の女と1人の男の[[三角関係]]を描いた物語。


[[1936年]](昭和11年)、雑誌『[[改造 (雑誌)|改造]]』1月号と7月号に掲載された<ref name="album4">「古典回帰の時代」({{Harvnb|アルバム谷崎|1985|pp=65-77}})</ref><ref name="nenpu">「谷崎潤一郎年譜」({{Harvnb|夢ムック|2015|pp=262-271}})</ref>。単行本は[[1937年]](昭和12年)7月に[[創元社]]より刊行された<ref name="mokuroku">「主要著作目録」({{Harvnb|アルバム谷崎|1985|p=111}})</ref>
== 概要 ==

庄造の前の妻品子は現在の妻福子に対し、雌猫のリリーを譲って欲しいという手紙を出した。福子は夫の庄造に「譲ってあげなさい」と言うが、彼にはそういう意志は無い。福子は自分以上にリリーが夫に大事にされている状況に耐えられなかったのだ。夫婦喧嘩の末に庄造は猫を品子に譲る事に同意する。リリーは以前にも他人に譲られた事があったが、その時も自らの意志でリリーは庄造のもとに戻って来たので、彼は今回もそうなるだろうと期待したのだ。リリーが品子の所に移って、庄造は雌猫を思い出しては懐かしんだ。リリーは品子になつかず、彼女の思った通りに動いてくれない。猫の面倒を診る事がこんなに大変だとは彼女にしてみれば予想外だった。結局三人とも生活を雌猫によって振り回されていたのだった。
== あらすじ ==
庄造の前妻・品子は現在の妻・福子に対し、雌猫のリリーを譲って欲しいという手紙を出した。福子は夫の庄造に「譲ってあげなさい」と言うが、彼にはそういう意志はない。福子は自分以上にリリーが夫に大事にされている状況に耐えられなかったのだ。夫婦喧嘩の末に、庄造は猫を品子に譲ることに同意する。

リリーは以前にも他人に譲られたことがあったが、その時も自らの意志で庄造のもとに戻って来たので、彼は今回もそうなるだろうと期待していた。リリーが品子の所に移って、庄造は雌猫を思い出しては懐かしんだ。品子のもとに到着したばかりのリリーは品子になつかず、彼女の思った通りに動いてくれない。猫の面倒を診ることがこんなに大変だとは彼女にしてみれば予想外だった。しかし次第に両者ともに打ち解け合い、品子は猫とはこんなにもかわいいものかと思い始める。庄造はリリーが恋しくてたまらず品子の留守中にこっそりと家を訪ねる。虐められていやしないかと心配していたが、意外にもリリーが大切に飼われている痕跡を見つけ、安堵する。リリーと久しぶりに会ったのもつかの間、品子が帰宅し、庄造は見つからないよう慌てて家を後にする。


== 登場人物 ==
== 登場人物 ==
;リリー
;リリー
:庄造が溺愛している雌猫。
:庄造が溺愛している雌猫。庄造に10年飼われていた
;庄造
;庄造
:荒物屋。仕事に対するやる気が無い。
:[[日用品|荒物]]屋。仕事に対するやる気が無い。名字は石井
;福子
;福子
:庄造の妻。人は従兄弟同士に当たる。夫を雌猫のリリーに奪われているという理由でリリーに嫉妬している。
:庄造の妻。2人は、いとこ同士に当たる(福子の父がおりんの兄)。夫を雌猫のリリーに奪われているという理由でリリーに嫉妬している。
;品子
;品子
:庄造の前妻。姑のおりんによって追い出された。
:庄造の前妻。姑のおりんによって追い出された。離婚後は妹の初子夫妻と一緒に住んでいる
;おりん
;おりん
:庄造の母親。彼を自分の意のままに操っている。品子とは仲が悪かった。
:庄造の母親。彼を自分の意のままに操っている。品子とは仲が悪かった。
;塚本
:畳屋。庄造と品子の仲人。


== 映画化 ==
== 映画化 ==
*『[[猫と庄造と二人のをんな (映画)]]』 製作=東京映画 配給=東宝 ([[1956年]])  監督:[[豊田四郎]]、出演:[[森繁久彌]]、[[山田五十鈴]]、[[香川京子]]
[[1956年]][[10月9日]]「{{ill2|猫と庄造と二人のをんな映画)|en|A Cat, Shozo, and Two Women}}」公開。製作東京映画配給東宝[[キネマ旬報]]ベストテン第4位。

かつて会員制ビデオ販売機構[[キネマ倶楽部]]から「日本映画傑作全集」として[[VHS]]が発売されていた。

;スタッフ
* 監督:[[豊田四郎]]
* 原作:谷崎潤一郎
* 脚本:[[八住利雄]]
* 撮影:[[三浦光雄]]
* 音楽:[[芥川也寸志]]
* 美術監督:[[伊藤熹朔]]

;キャスト
* 庄造:[[森繁久彌]]
* 福子:[[香川京子]]
* 晶子:[[山田五十鈴]]
* おりん:[[浪花千栄子]]
* 煙草屋の女将:[[萬代峰子]]
* 城川夫人:[[三好栄子]]
* 初子:[[南悠子]]
* 木下:[[芦乃家雁玉]]
* 萩村:[[田中春男]]
* 添山:[[山茶花究]]
* 国粋堂:[[横山エンタツ]]
* 多美子:[[環三千代]]
* 魚屋鯵のとれとれ:[[谷晃]]

== テレビドラマ化 ==
*一千万人の劇場『猫と庄造と二人の女』([[関西テレビ放送]])
**1964年(昭和39年)7月15日 水曜日 21:45-22:45 [[日本電気]]・新日本電気提供
**脚本:八住利夫([[八住利雄]])。演出:[[鍵田忠俊]]。音楽:[[田中正史]]。制作:KTV
**出演:[[実川延若]](實川延若)、[[浪速千栄子]](浪速千榮子)、[[野川由美子]]、[[夢路いとし]]
*日本名作ドラマ『猫と庄造と二人のおんな』([[テレビ東京]])
**1996年(平成8年)3月20日 水曜日
**脚本:[[市川森一]]。演出:[[森崎東]]。制作協力:[[松竹大船撮影所]]。制作:[[松竹]]、TX
**音楽:[[知名定男]]。題字:[[永井路子]]。プロデューサー:[[橋本かおり]]、[[大野晴雄]]、[[原克子]]。
**出演:[[藤田まこと]]、[[いしだあゆみ]]、[[麻生祐未]]、[[荒木雅子]]、[[明日香まゆ美]](明日香まゆみ)、[[遠藤憲一]]、[[すまけい]]、[[山口美也子]]、[[渡辺いっけい]]、[[芦屋小雁]]、[[絵沢萌子]]、[[早川雄三]]、[[宮坂ひろし]]、[[北村大造]]、[[和泉ちぬ]]

{{前後番組|
放送局=[[フジテレビジョン|フジテレビ]][[フジネットワーク|系列]]|
放送枠=[[一千万人の劇場]]|
番組名=猫と庄造と二人の女<br />(1964年版)<br />(1964年7月15日)|
前番組=[[幸せを三人前]]<br />(1964年7月8日)|
次番組=[[ある母の記録]]<br />(1964年7月22日)|
}}
{{NEC Group}}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
*{{Citation|和書|author=[[谷崎潤一郎]]|date=2012-06|title=猫と庄造と二人のおんな|edition=改|publisher=[[新潮文庫]]|isbn=978-4-10-100505-8|ref={{Harvid|猫・文庫|2012}}}} 初版1951年8月
*{{Citation|和書|editor=[[笠原伸夫]]|date=1985-01|title=新潮日本文学アルバム7 谷崎潤一郎|publisher=[[新潮社]]|isbn=978-4-10-620607-8|ref={{Harvid|アルバム谷崎|1985}}}}
*{{Citation|和書|date=2015-02|title=[[文藝]]別冊 谷崎潤一郎――没後五十年、文学の奇蹟|series=KAWADE夢ムック|publisher=[[河出書房新社]]|isbn=978-4309978550|ref={{Harvid|夢ムック|2015}}}}


== 出版 ==
== 外部リンク==
猫と庄造と二人のんな』(新潮文庫) ISBN 4-10-100505-2
* [http://goshoboh.com/ 御所坊] 「猫と庄造と二人のんな」に登場する有馬温泉の旅館
* [http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/19691/KJ00005097409.pdf 町人文学としての谷崎文学(五) 22.「猫と庄造と二人のをんな」] 橋本芳一郎、国文学年次別論文集 近代2昭和57(1982)年、駒澤大学


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[[Category:兵庫県を舞台とした小説]]
[[Category:芦屋市を舞台とした作品]]
[[Category:日本の動物文学]]
[[Category:ネコを題材とした小説]]
[[Category:改造掲載の小説]]
[[Category:1956年の映画]]
[[Category:ネコを題材とした映画作品]]
[[Category:豊田四郎の監督映画]]
[[Category:八住利雄の脚本映画]]
[[Category:芥川也寸志の作曲映画]]
[[Category:日本の小説を原作とする映画]]
[[Category:谷崎潤一郎原作の映画作品]]
[[Category:森繁久彌]]
[[Category:日本の白黒映画]]
[[Category:1964年のテレビドラマ]]
[[Category:1996年のテレビドラマ]]
[[Category:関西テレビのテレビドラマ]]
[[Category:テレビ東京のテレビドラマ]]
[[Category:NECグループ単独提供番組]]
[[Category:日本の小説を原作とするテレビドラマ]]

2024年2月14日 (水) 10:48時点における最新版

猫と庄造と二人のをんな
訳題 A Cat, A Man, and Two Women
作者 谷崎潤一郎
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出改造1936年1月号・7月号
刊本情報
出版元 創元社
出版年月日 1937年7月
装幀 安井曾太郎(挿絵と兼務)
id NCID BN15897143
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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猫と庄造と二人のをんな』(ねことしょうぞうとふたりのおんな)は、谷崎潤一郎長編小説のリリーを中心に、2人の女と1人の男の三角関係を描いた物語。

1936年(昭和11年)、雑誌『改造』1月号と7月号に掲載された[1][2]。単行本は1937年(昭和12年)7月に創元社より刊行された[3]

あらすじ

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庄造の前妻・品子は現在の妻・福子に対し、雌猫のリリーを譲って欲しいという手紙を出した。福子は夫の庄造に「譲ってあげなさい」と言うが、彼にはそういう意志はない。福子は自分以上にリリーが夫に大事にされている状況に耐えられなかったのだ。夫婦喧嘩の末に、庄造は猫を品子に譲ることに同意する。

リリーは以前にも他人に譲られたことがあったが、その時も自らの意志で庄造のもとに戻って来たので、彼は今回もそうなるだろうと期待していた。リリーが品子の所に移って、庄造は雌猫を思い出しては懐かしんだ。品子のもとに到着したばかりのリリーは品子になつかず、彼女の思った通りに動いてくれない。猫の面倒を診ることがこんなに大変だとは彼女にしてみれば予想外だった。しかし次第に両者ともに打ち解け合い、品子は猫とはこんなにもかわいいものかと思い始める。庄造はリリーが恋しくてたまらず品子の留守中にこっそりと家を訪ねる。虐められていやしないかと心配していたが、意外にもリリーが大切に飼われている痕跡を見つけ、安堵する。リリーと久しぶりに会ったのもつかの間、品子が帰宅し、庄造は見つからないよう慌てて家を後にする。

登場人物

[編集]
リリー
庄造が溺愛している雌猫。庄造に10年飼われていた。
庄造
荒物屋。仕事に対するやる気が無い。名字は石井。
福子
庄造の妻。2人は、いとこ同士に当たる(福子の父がおりんの兄)。夫を雌猫のリリーに奪われているという理由でリリーに嫉妬している。
品子
庄造の前妻。姑のおりんによって追い出された。離婚後は妹の初子夫妻と一緒に住んでいる。
おりん
庄造の母親。彼を自分の意のままに操っている。品子とは仲が悪かった。
塚本
畳屋。庄造と品子の仲人。

映画化

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1956年10月9日猫と庄造と二人のをんな(映画)英語版」公開。製作は東京映画、配給は東宝。キネマ旬報ベストテン第4位。

かつて会員制ビデオ販売機構キネマ倶楽部から「日本映画傑作全集」としてVHSが発売されていた。

スタッフ
キャスト

テレビドラマ化

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フジテレビ系列 一千万人の劇場
前番組 番組名 次番組
幸せを三人前
(1964年7月8日)
猫と庄造と二人の女
(1964年版)
(1964年7月15日)
ある母の記録
(1964年7月22日)

脚注

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  1. ^ 「古典回帰の時代」(アルバム谷崎 1985, pp. 65–77)
  2. ^ 「谷崎潤一郎年譜」(夢ムック 2015, pp. 262–271)
  3. ^ 「主要著作目録」(アルバム谷崎 1985, p. 111)

参考文献

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外部リンク

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