コンテンツにスキップ

「糠」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
→‎利用: 糠と動物
「ブラン」のカタカナ表記を追加
1行目: 1行目:
{{出典の明記|date=2014年11月10日 (月) 11:47 (UTC)}}
{{出典の明記|date=2014年11月10日 (月) 11:47 (UTC)}}
[[ファイル:WheatBran.jpg|thumb|right|200px|[[コムギ|小麦]]の糠。]]
[[ファイル:WheatBran.jpg|thumb|right|200px|[[コムギ|小麦]]の糠。]]
'''糠'''(ぬか、{{lang-en-short|[[w:Bran|Bran]]}})とは、[[穀物]]を[[精米機|精白]]した際に出る[[果皮]]、[[種皮]]、[[胚芽]]などの部分のことである。
'''糠'''(ぬか)とは、[[穀物]]を[[精米機|精白]]した際に出る[[果皮]]、[[種皮]]、[[胚芽]]などの部分のことである。'''ブラン'''({{lang-en-short|[[w:Bran|Bran]]}})とも呼ばれる。


== 概要 ==
== 概要 ==

2020年1月30日 (木) 07:25時点における版

小麦の糠。

(ぬか)とは、穀物精白した際に出る果皮種皮胚芽などの部分のことである。ブラン: Bran)とも呼ばれる。

概要

イネ科植物果実穎果と呼ばれる形態で、表面を一体化した果皮種皮で硬く覆われている。これを除去する過程が精白で、この際得られる穎果の表層部分が糠である。日本では、歴史的にから出るものが身近であったため、単に糠といえば「米糠」を指す場合が多い。他に、大麦の糠は「麦糠」、小麦の糠は「ふすま(麬)」という。燕麦の糠は、オートブランOat branという。多くの穀物では穎果の外層が胚乳よりももろいため、精白に際して杵や棒で搗くなどして表面に衝撃を与える(搗精)ことで糠だけが砕けて胚乳から剥がれる。これをふるいわけて分離する。小麦の場合は胚乳のほうが穎果の外層よりももろいため、穎果全体を丸ごと砕いて製粉するときに細かく砕けず粗大片として残るふすまをふるいわけて分離する。

同じイネ科のトウモロコシは、大きな胚乳の回りの果皮が厚く、収穫から日数が経過したものは乾燥・硬化して除去がさらに困難となるため、そのまま挽いて糠ごと粉にして食用とする(コーンフレークなど)。グルテンを含まず粘性がないので、中南米ではニシュタマリゼーションと呼ばれるアルカリ処理を行ってパン生地のような粘性とナイアシン吸収性をもたせ、これを挽いて糠ごと粉にしたマサを作って食用(トルティーヤなどが知られる)とする。

利用

単品では使用されることが少なく、油分が多いことから油(米ぬか油)を絞る、あるいは栄養価が高いことから漬物の一種であるぬか漬けの「ぬか床(ぬかみそ)」として使用される。精白せずに玄米全粒粉といったかたちで、糠ごと穀物を食べることもある。また、タケノコの調理をする際に行うあく抜きと鮮度保持のための下茹での際に使用する場合がある。ビタミンB群を多く含むため、米糠は明治期に脚気に効果あるとされた。この報告は正しかったが、当時の識者からは嘲笑で迎えられた。

福岡県北九州市小倉門司地区や行橋市など旧小倉藩に属する地域では、などの青魚をぬか床(糠味噌)その他の調味料で煮るぬか炊き(北九州では「じんだ煮」と称する。「じんだ」はぬかみその意の古語方言化したもの)がポピュラーな郷土料理となっている(→鰯のぬか炊き)。現代では「ぬかみそ」と言えばぬか床のことであるが、古来は大豆や、などと合わせて醸造された「ぬかみそ」が現代の味噌のように直接食用とされていた。「ぬか炊き」はその名残である。

日本では合成洗剤が普及するまで、米糠は洗剤としても広く用いられていた。米糠に含まれるγグロブリンというタンパク質界面活性剤の役割を果たしているとされている。布袋に包んで、を磨き上げるなどの掃除にも利用された。

家畜家禽飼料に配合されることがあるほか、キノコ栽培の重要な資材にもなっている。

近年では脱脂した米ぬかを原料するRB(Rice Bran:米ぬか)セラミックなども開発されている。軽量ながら高い強度と硬度を持ち、優れた耐摩耗性、低摩擦特性があるため無潤滑のすべり軸受などに利用され、すばる望遠鏡の赤外線分析装置の可動部にも採用されている。その他にもゴムに混ぜる事でウェット面でも耐滑性が得られる事からRBセラミックをゴム底に配合した靴やトレッドゴムに配合した自転車用タイヤなどが製品化されている。

また食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が含まれている点が見直され、特に小麦ふすまを「ブラン」と呼んで健康食品等に利用する例も増えてきている。

糠と動物

  • 米糠の臭気は、糠を好物とするクマを呼び寄せる可能性を高める。日本では、しばしば米糠を貯蔵する倉庫がクマの襲撃を受ける事例が発生する[1][2]

主な成分

米ぬか[3]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,723 kJ (412 kcal)
48.8 g
食物繊維 20.5 g
19.6 g
飽和脂肪酸 3.45 g
一価不飽和 7.37 g
多価不飽和 5.90 g
13.4 g
ビタミン
チアミン (B1)
(271%)
3.12 mg
リボフラビン (B2)
(18%)
0.21 mg
ナイアシン (B3)
(231%)
34.6 mg
パントテン酸 (B5)
(89%)
4.43 mg
ビタミンB6
(252%)
3.27 mg
葉酸 (B9)
(45%)
180 µg
ビタミンE
(69%)
10.4 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
7 mg
カリウム
(32%)
1500 mg
カルシウム
(4%)
35 mg
マグネシウム
(239%)
850 mg
リン
(286%)
2000 mg
鉄分
(58%)
7.6 mg
亜鉛
(62%)
5.9 mg
(24%)
0.48 mg
セレン
(7%)
5 µg
他の成分
水分 10.3 g
水溶性食物繊維 2.2 g
不溶性食物繊維 18.3 g
ビオチン(B7 38.2 µg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

脚注

  1. ^ 壁に穴、クマ食害か 米ぬか食い荒らされる、秋田市河辺”. 秋田魁新報 (2019年6月20日). 2019年6月18日閲覧。
  2. ^ 花巻のバラ園 クマに米ぬか食べられる/岩手”. ibcニュース (2019年6月6日). 2019年6月18日閲覧。
  3. ^ 文部科学省、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)

関連項目