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ラージプート級駆逐艦

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61-ME 設計大型対潜艦
ラージプート級駆逐艦

ランヴィジャイ
艦級概観
艦種 大型対潜艦
ミサイル駆逐艦
前級
次級 デリー級駆逐艦
運用者 ソビエト連邦海軍
インド海軍
就役期間 1979年 - 就役中
性能要目
排水量 基準: 4,025 トン
満載: 4,905 トン
全長 146.11 m
全幅 15.81 m
喫水 6.83 m
機関 M-3 COGAG機関×2 基(72,000 馬力; 52,900 kW), 2軸推進
M-8E ガスタービン機関 4 基
電源 BTU-63 ディーゼル発電機 2 基
発電量 2,400 kW
速力 30 ノット
航続距離 3,800 海里/18 kn
行動期間 10 日間
乗員 士官 33名+水兵 279 名

ラージプート級駆逐艦英語: Rajput class destroyer)は、インド海軍駆逐艦destroyer)である。

もとはソビエト連邦で開発された大型対潜艦ロシア語: большой противолодочный корабль)で、正式には 61-ME 設計大型対潜艦Больши́е противолодо́чные корабли́ прое́кта 61-МЭ バリシーイェ・プラチヴァラドーチュヌィイェ・カラブリー・プラエークタ・シヂスャート・アジーン・エメー)、通称である艦級名では「ナジョージュヌイ」級大型対潜艦Больши́е противолодо́чные корабли́ ти́па «Надёжный»)と呼ばれた。

北大西洋条約機構(NATO)の用いたNATOコードネームでは、カシンII級(Kashin-II class)と呼ばれた。

概要

建造

61-ME 設計は、61 設計の輸出向けプランとして立案された。その重武装から、61-ME 設計はソ連で建造された最初の重武装艦に数えられる。

1950年代後半以来、ソ連海軍では任務ごとに専門の艦艇を整備してきたが、1970年代末になると艦対艦ミサイルを搭載した61-M 設計大型対潜艦および61-MP 設計大型対潜艦が事実上の多用途艦として認められるようになっていた。61 設計は成功した計画のひとつで、戦術的にも技術的にも重要な計画となった。

この艦に関心を寄せたのがインドであった。1974年、インドはセヴァストーポリへ視察団を送り、黒海艦隊の61-M 設計を見聞した。そして、61-M 設計こそが自国海軍にとって必要欠くべからざる原型艦であるという結論を出した。インド海軍の要求に対し61-M 設計に不足していたのは艦載ヘリコプター用の格納庫と強力な火砲であった。審議の結果、艦尾部分に搭載する76.2 mm自動砲AK-726と戦闘統禦装置「トゥレーリ」各 1 基を廃止し、代わって同所にヘリコプター格納庫と発着甲板を設けることとなった。また、艦首部分に搭載するAK-726は100 mm両用砲のAK-100に換装することが予定された。

この新しい派生形は、「輸出型」(Экспортный)を意味する「E」(Э)を加えて61-ME 設計Проект 61-МЭ)と呼ばれることになった。原型となった61-M 設計との相違点は、搭載する艦対艦ミサイルがソ連国内向けのP-15M「テルミート」から輸出型のP-20「テルミート」に変更された点が挙げられた。一方、予定された100 mm砲の搭載は、AK-100の製造工場が造船所から遠かったことが原因で見送られた。この他、多用途艦として重要な装備である艦対空ミサイルは、改良型のM-1「ヴォルナーP」が搭載された。このシステムは、欺瞞対抗力を向上したV-601を運用できた。この他、対潜装備としてRBU-6000「スメールチ2」、533 mm魚雷発射管近接防空火器としてラージプートからランジートまではMR-104「ルィーシ」射撃管制レーダーによって統禦されるAK-230対空機関砲が、ランヴィールランヴィジャイにはMR-123「ヴィーンペル」射撃管制レーダーによって統禦されるAK-630対空多銃身機関砲が搭載された。

艦の建造は、すべてウクライナ・ソビエト社会主義共和国ニコラーエフ61人のコミューン参加者記念造船工場で実施された。まずはじめに 3 隻が起工され、続いて 2 隻が建造された。全艦が起工に前後して一時的にソ連海軍へ編入され、のちソ連海軍を除籍の上インド海軍へ引き渡された。1番艦が引き渡されたのは、1980年5月4日で、最終艦の引き渡しが完了したのは1988年のことであった。

改修

インドへ引き渡された61-ME 設計は専らラージプート級と呼ばれ、駆逐艦として海軍で運用されている。ラージプート級は、その長年に亙る運用の中でインド海軍の事情に合わせて幾度かの改修を受けた。まず、1993年から1994年にかけてイタリアセレニア社製の新しい戦術情報処理装置IPN-10を装備した。改修作業は、当初はウクライナの支援の下での実施が検討されていたが、最終的にインドはロシアとの協力体制に切り替えられた。

1番艦ラージプートは、インドとロシアが共同で開発を進めている新型巡航ミサイルの発射実験の試験艦に選ばれている。2003年2月12日11月23日2004年11月3日2005年4月15日の4度に亘って実施された発射実験では、ラージプート艦上より標的艦目掛けてPJ-10「ブラモス」対艦ミサイルが発射された。標的艦は破壊され、実験は成功裏に終了したと報告された。この試験のため、ラージプートはP-20用の円筒形の単装発射機4 基の内1基を下ろし、代わりに箱型の連装発射機1 基を搭載した。その後、2007年3月にはさらに改修が施されたラージプート艦上よりプリットヴィーIIIミサイルの発射実験が成功裏に実施されている。また、4番艦ランヴィールは後部M-1「ヴォルナーP」艦対空ミサイル発射機を撤去しPJ-10「ブラモス」用のVLSを搭載した。

対空装備の改修としては、2番艦ラーナと3番艦ランジートは近接防空火器をAK-230対空機関砲からAK-630対空多銃身機関砲へ換装し、4番艦ランヴィールと5番艦ランヴィジャイはAK-630対空多銃身機関砲を2基撤去し、イスラエル製「バラク」艦対空ミサイルのVLSを搭載した。これら改修に併せレーダーも一部国産ないしイスラエル製へ換装されている。

この他、小さな変更としては、搭載機が当初のKa-25PLからKa-27PLの輸出型であるKa-28に変更されている。

活動

2003年6月23日には3番艦ランジートは、スカーニャ級哨戒艦スヴァルナとともにモザンビークを訪れ、外交上の任務に従事した。その後、モザンビーク海軍の訓練に協力した。

この他、ラージプート級は国内外でインド海軍が行う演習やパレード、外国への親善訪問へ積極的に送り出されており、ランヴィジャイ日本にも来航している。

兵装・電装要目表

D51 D52, 53 D54, 55
武装 AK-726 76.2 mm連装両用砲×1 基
(弾薬 1,200発)
AK-230 30 mm連装機関砲×4基 AK-630 30mmガトリング砲×4基 AK-630 30mmガトリング砲×2基
M-1 ヴォルナSAM連装発射機×2基(D54 1基)
V-601ミサイル×32発; D54は16発)
バラク 短SAMVLS(8セル)×4基
PJ-10 SSM用VLS(8セル)×1基(D54のみ)
P-20 SSM単装発射機×4 基
RBU-6000 12連装対潜ロケット発射機×2基
(RGB-60ロケット弾192 発)
PTA-53-61 5連装魚雷発射管×1 基
艦載機 Ka-25PLOまたはKa-28×1 機
C4ISR プランシェート61戦術情報処理装置
4R-90「ヤタガーン」(ZIF-101用FCS)×2 基(D54は1基)
MR-105「トゥレーリ」主砲用FCS)×1 基
MR-104「ルィーシ」またはMR-123「ヴィーンペル」
EL/M-2221 STGR(バラク用FCS)×2 基
MR-310「アンガラーA」低空警戒/対水上レーダー EL/M-2238 STAR レーダー
MR-500またはバラート RAWL (シグナール LW-08) 対空捜索レーダー
ヴォールガ水上捜索照準レーダー
バラートFT13-S/M 戦術航法装置
「プラーチナ」ソナー
電子戦 電子戦対抗装置「ザリーフ」×1 基
電子戦対抗装置「クラープ11」×2 基
電子戦対抗装置「クラープ12」×2 基
デコイ発射機PK-16×2 基

同型艦

艦番号 艦名 工場番号 ロシア名 意味 起工 竣工
D51 ラージプート
Rajput
2201 ナジョージュヌイ
Надежный
頼りになる 1976/09/11 1979/11/30
D52 ラーナ
Rana
2202 グビーテリヌイ
Губительный[1]
破滅を齎す 1976/11/29 1981/09/30
D53 ランジート
Ranjit
2203 ローフキイ
Ловкий [2]
巧みな 1977/06/29 1983/07/20
D54 ランヴィール
Ranvir
2204 トヴョールドィイ
Твердый
不動の 1981/10/24 1985/12/30
D55 ランヴィジャイ
Ranvijay
2205 トルコーヴイ
Толковый
分別のある 1982/10/24 1987/10/15
  1. ^ ソ連海軍時代にもプィトリーヴイ(Пытливый)と改称されている。
  2. ^ ソ連海軍時代にもポラジャーユシチイ(Поражающий)と改称されている。

外部リンク